美術史講義
ルネサンス期における「人」の表象

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
高橋 朋子 講師 4 2~4 通年 3

授業の目的・内容

この授業ではルネサンス期のイタリア絵画における様々な作家の作品の中から「女性」を主題にした作品、「男性」を主題にした作品を取り上げて講義し、イメージがそれぞれの時代や社会の中でいかなるメッセージを発し、またいかなる機能を果たしたかを考察する事を目的とします。
「女性」は古代から現代に至るまで美術作品の最も重要なテーマであり続けてきました。美と愛の女神「ウェヌス」、神の母にして最も清らかな女性「聖母」、またその対局にある堕落の女「エヴァ」等、枚挙にいとまがありません。また16世紀になると、「美」の表象としての美しい女性肖像画も数多く制作されました。 一方「男性」の肖像画は権力の表象としてこの時代政治的な機能を担っていました。
芸術家達は注文主の要請に従って、多くの男性像、女性像を作り上げてきたのですが、注文主の要請は彼らが属する社会の要請と不可分のものではありません。従って描かれた「人」を考察する事は、その時代が「人」をどのように見ていたかのあかしでもあるのです。本年度はルネサンス期の人物像を様々な切り口から再考察します。

授業計画

導入 「人」を描くということ
「悪女」のイメージとしてのエヴァ
「聖母」のイメージの変遷
「ユディット」(1)
-ドナテッロのユディットとメディチ家-
「ユディット」(2)
-ヴェネツィアのユディット-
ウェヌス(1)
-古代以来のウェヌス-
ウェヌス(2)
-ボッティチェッリのウェヌス-
ウェヌス(3)
-ジョルジョーネのウェヌス-
ウェヌス(4)
-ティツィアーノのウェヌス-
10 女性の肖像画(1)
-妻の肖像画の展開-
11 女性の肖像画(2)
-恋人の肖像画-
12 女性の肖像画(3)
-レオナルド・ダ・ヴィンチの場合-
13 女性の肖像画(4)
-ティツィアーノ-
14 女性の肖像画(5)
-ティツィアーノ-
15 理解度の確認
16 「美」の表象としての女性(1)
-ティツィアーノ-
17 「美」の表象としての女性(2)
-パルミジャニーノ-
18 男性肖像画(1)
-個人の芽生え寄進者像-
19 男性肖像画(2)
-君主の肖像画-
20 教皇の肖像画(1)
-シクストゥス4世の場合-
21 教皇の肖像画(2)
-ラファエロとユリウス2世-
22 教皇の肖像画(3)
-ラファエロとレオ10世-
23 教皇の肖像画(4)
-ティツィアーノとパウルス3世-
24 君主の肖像画(1)
-ティツィアーノとカール5世-
25 君主の肖像画(2)
-ティツィアーノとウルビーノ侯爵-
26 学者像
-ラファエロとカスティリオーネ-
27 学者像
-ティツィアーノとアレティーノ-
28 画家の自画像(1)
-自意識の芽生え-
29 画家の自画像(2)
-デューラーの場合-
30 理解度の確認
前半は女性イメージの問題、後半は男性イメージの問題を扱う。
授業計画は先に記した内容を予定しているが、実際講義を始めた時点で順番が入れ替わることもある。また内容によっては一回で終わらない場合も予想される。その結果計画がすべて消化できないことも重々考えられることを断わっておく。

授業方法

授業はパワーポイントを使用して進める。また板書はしない。その代り各テーマごとに簡単に内容をまとめたプリントを毎回配布する。なおプリントには講義で取り上げた作品は必ずリストアップしておく。

成績評価の方法

第1学期 (学期末試験) :試験を実施する
第2学期 (学年末試験) :試験を実施する
2度の試験の結果のみで評価する。試験には授業中に配付したプリントと自筆のノートのみ持ち込み可とする。
なおノートに図版を貼ることは厳禁。

参考文献

本年度全体の参考文献に関しては、第1回目の講義のときに参考文献一覧を配布する。また特化した内容に関しては各回で配布するプリントにて指示する。