東洋史特殊講義
台湾近代社会史研究

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
張 士陽 講師 4 2~4 通年 2

授業の目的・内容

現代の台湾は日本との経済・文化面での交流が深まり、台湾人がいわゆる「親日的」であると日本では知られている。しかし台湾の歴史については日本であまり知られていない。東アジアの他地域とは異なり、台湾でなぜ「親日的」意識が形成されたのかを理解するために、台湾に漢族を主流とした基層社会が成立した清朝統治期の19世紀半ばから日本統治期に植民地型近代化が進行した20世紀前半の歴史の諸問題について考察し、これにより日台関係の理解を深めることを目指す。

授業計画

講義の概要の説明
台湾の原住民族とは
清朝領台以前の台湾史概観
清領台期、台湾渡航制限政策と密航
台湾原住民と漢人移民との関係
漢人移民の開墾競争と分類械闘
宗族組織の形成―唐山祖と開台祖
漢人移民と宗教1
漢人移民と宗教2
10 『問俗録』に見る19世紀前半の台湾社会1
11 『問俗録』に見る19世紀前半の台湾社会2
12 劉銘伝の洋務政策1-土地丈量をめぐって
13 劉銘伝の洋務政策2-山地開発政策と板橋林家・霧峰林家の台頭
14 日清戦争の衝撃―台湾民主国と日本による台湾征服戦争
15 台湾統治政策の形成―「六三法」体制の確立・まとめ
16 映像資料の視聴
17 台湾旧慣調査と土地調査事業1
18 台湾旧慣調査と土地調査事業2
19 山地原住民征服戦争と「理蕃」政策の確立
20 植民地下の教育と抗日民族運動の契機
21 民族運動の展開と「台湾人」の誕生
22 霧社事件と台湾先住民統治政策の転換
23 1930年代のミッションスクール排撃運動
24 皇民化政策下の台湾1
25 皇民化政策下の台湾2
26 皇民化時期の郷土研究‐『民俗台湾』と同人たち
27 脱植民地化の「夢」と台湾社会の混乱
28 2・28事件の発生と台湾ナショナリズム形成の萌芽
29 授業のまとめ
30 予備日

授業方法

講義形式。教科書は指定せず、関連資料を配布し解説をする。映像資料を利用することもある。

成績評価の方法

レポート・出席
学年末レポート、授業時のコメントペーパーへの記入などにより評価します。

参考文献

周婉窈著 濱島敦俊監訳・石田豪・中西美貴訳図説 台湾の歴史平凡社2007年、ISBN:9784582411065
春山明哲近代日本と台湾-霧社事件・植民地統治政策の研究藤原書店2008年、ISBN:9784894346352
若林正丈台湾抗日運動史研究 増補版研文出版2001年、ISBN:4876361975
陳培豊「同化」の同床異夢-日本統治下の国語教育史再考三元社2001年、ISBN:4883030733
近藤正己総力戦と台湾-日本植民地崩壊の研究刀水書房1996年、ISBN:4887081928
何義麟二・二八事件-「台湾人」形成のエスノポリティクス東京大学出版会2003年、ISBN:4130362143
洪郁如近代台湾女性史-日本の植民統治と「新女性」の誕生勁草書房2001年、ISBN:4326601477
西英昭『臺灣私法』の成立過程-テキスト層位学的分析を中心に九州大学出版会2009年、ISBN:9784873789996