※哲学演習
「現出すること」の現象学‐現象学入門として‐

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
中山 純一 講師 4 2~4 通年 1

授業の目的・内容

本演習では、チェコ共和国の現象学者、ヤン・パトチカ(Jan Patočka1907-1977)の『現出することそれじたい』(„Vom Erscheinen als solchem Texte aus dem Nachlass“ Hrg.v. Helga Blaschek-Hahn u. Karel Novotný)を読解する。
現在、現象学において改めて「実践」への問いが立てられている。それは、理論理性に対する実践理性としての「倫理」の問題を含みつつも、そうした人間の諸能力の認識論的な枠組みへの批判を同時に行ないつつ、常にすでに、手前で生きられているものである「行為」の場面を切り拓いていくものである。「生命の現象学」という標題のもとで議論されているのも、こうした「生ける現在」として、現象化という出来事から退去していく実践的な行為としての「生命」である。
しかしながら現象学的には、こうした現象化という出来事じたいを捉えることも、不可能なはずである。現象学のテーマとなるのは、現象化した後の「現象」であるはずだからである。それでは現象学において、この現象化という出来事、つまり「現出することそれじたい」をいかにして方法的に主題化できるのであろうか。ここに、フッサールに直結するフライブルク系の現象学者たち(M.ハイデッガー、E.フィンク等)の関心があった。パトチカの現象学的哲学も、彼等の影響を色濃く受けている。
本講義では、かかるフライブルク系の現象学者たちの関心を共有し、「現出することそれじたい」を現象学として問う可能性を、パトチカの思索の内から読みとろうと思う。思索は極度に抽象的になるが、こうした抽象的な思索を通じて、具体的な実践の領域が導かれてくること、このことの共通理解を本講義の目的に設定する。

授業計画

【第1学期】:ガイダンス(指導方式・演習形態・成績評価の仕方・本演習の内容の伝達)
導入講義:フッサール現象学について(展開と諸問題)
導入講義:フッサール『現象学の理念』を読む(1)
導入講義:フッサール『現象学の理念』を読む(2)
導入講義:フッサール『現象学の理念』を読む(3)
導入講義:フッサール『現象学の理念』を読む(4)
導入講義:フッサール『現象学の理念』を読む(5)
導入講義:フッサール『現象学の理念』を読む(6)
演習:パトチカ『現出することそれじたい』を読む(導入)
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14 第1学期の理解度の確認
15 自主研究
16 【第2学期】:第1学期のfeedback
17 演習:パトチカ『現出することそれじたい』を読む(Text1)
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29 第2学期の理解度の確認
30 自主研究
本演習は、現象学入門の内容にもなる。したがって、ハイデッガー、メルロ=ポンティ、サルトルなど、広く現象学に関心のある学生の参加は歓迎する。また、現象学以外にも、精神分析や認知科学に関心のある学生、芸術やスポーツ経験に関心のある学生の参加も歓迎する。

授業方法

1.第1学期前半では、現象学入門の内容を講義するが、演習授業なので、相互の対話を重要視する。
2.ドイツ語のテキストを使用し、各自、訳出の分担を行う。担当者は、自分が作成した訳を参加者分プリントアウトして配布すること。
3.参加者の状況によって、読むスピードは調整する。また、ドイツ語未習で、学びながら読む者の参加も可とする。

成績評価の方法

レポート課題
成績評価の方法は、
1.出席率
2.議論への貢献度(発言の頻度、課題発見力、課題解決力)
3.夏休み中のレポート
以上によって、評価する。
成績評価基準は、学習院大学の成績評価基準に則す。

教科書

J.Patočka, H.Blaschek-Hahn, K.Novotný, Vom Erscheinen als solchem, (Orbis Paenomenologicus) 1st Edition, Karl Alber, 2000, ISBN:349547904x
E.フッサール現象学の理念第1版、みすず書房1965年、ISBN:4622019213
テキストは印刷して参加者に配布するので、購入する必要はない。

参考文献

新田義弘『現象学と解釈学』、ちくま学芸文庫、2006年、1575円。
E.フッサール『間主観性の現象学』、ちくま学芸文庫、2012年、1680円。