知的財産法

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
横山 久芳 教授 4 3~4 通年 4

授業の目的・内容

近年、知的財産法の重要性が日増しに高まってきている。戦後、日本はモノ作りによって未曾有の大発展を成し遂げたが、最近では途上国が豊富な資源や労働力を背景にして安価な製品を大量に世界市場に輸出し始めたため、モノの価格競争で日本は勝てなくなってしまった。今後の日本企業に残された途は、安価な規格品の大量生産ではなく、付加価値の高い新製品を開発し、製品の差別化を図っていくことにある。モノの付加価値を生み出すのは情報である。そしてその情報に権利を与え、保護を認める法制度が知的財産法である。社会の情報化が進むにつれて、情報保護制度としての知的財産法の重要性が高まってくるのは必然の成り行きである。その意味で、学生の皆さんが将来、どのような職業に就くにせよ、知的財産法の基礎的な知識を習得しておくことはとても大切なことといえる。
本講義では、情報保護制度としての知的財産法について概説する。知的財産法がどのような情報をどのような形で保護しているのかということについて、大まかな見取り図を習得してもらうことがこの講義の最終的な目標である。そのため、この講義では、知的財産法の全ての諸領域を詳説するのではなく、特許法、著作権法を中心に解説を行い、時間に余裕がある場合に、その他の知的財産法(商標法、不正競争防止法等)を取り上げることとする。講義では、学生の皆さんに親近感を持ってもらえるように、新聞やテレビ等で話題となっている具体的な事例や、インターネット等、最近のIT技術と知的財産法との関わりなどを積極的に取り上げていきたいと思っている。

授業計画

知的財産法総論①
知的財産法総論②
特許法①(特許権の保護対象Ⅰ−発明)
特許法②(特許権の保護対象Ⅱ−特許要件)
特許法③(特許権の保護対象Ⅲ−特許要件)
特許法④(特許権の主体Ⅰ−発明者、特許を受ける権利、冒認)
特許法⑤(特許権の主体Ⅱ−職務発明)
特許法⑥(特許手続法Ⅰ−出願・審査)
特許法⑦(特許手続法Ⅱ−審判)
10 特許法⑧(特許手続法Ⅲ−審決取消訴訟)
11 特許法⑨(特許権の効力Ⅰ−クレーム解釈・均等論)
12 特許法⑩(特許権の効力Ⅱ−実施概念、権利の制限、消尽)
13 特許法⑪(特許権の効力Ⅲ−無効主張、先使用、間接侵害)
14 特許法⑫(権利の活用;−実施許諾、譲渡、利用発明)
15 総括
16 特許法⑬(救済−差止、損害賠償)
17 著作権法①(著作権の保護対象Ⅰ−著作物性総論)
18 著作権法②(著作権の保護対象Ⅱ−特殊な著作物)
19 著作権法③(著作権の主体-著作者、共同著作、法人著作、映画製作者の権利)
20 著作権法④(著作者人格権)
21 著作権法⑤(著作権の権利内容Ⅰ−概論、複製、上演・演奏等)
22 著作権法⑥(著作権の権利内容Ⅱ−公衆送信、譲渡・頒布等)
23 著作権法⑦(著作権の権利内容Ⅲ-翻案、二次的著作物の利用等)
24 著作権法⑧(著作権の制限-私的複製、引用等)
25 著作権法⑨(著作権の制限-その他の制限規定、保護期間)
26 著作権法⑩(著作隣接権、権利の活用)
27 著作権法⑪(救済-差止め、損害賠償)
28 その他の知的財産法①(商標法、不正競争防止法等)
29 その他の知的財産法②(商標法、不正競争防止法等)
30 総括
まず最初に情報保護制度としての知的財産法の総論的な解説を行う。次に、特許法、著作権法、その他の知的財産法(商標法、不正競争防止法等)の順に解説を加えていく。但し、時間の関係で、その他の知的財産法を取り上げないこともある。

授業方法

毎回レジュメを配布し、そのレジュメに沿って授業を行う。知的財産法の分野では近年重要判例が多数登場していることから、講義では大渕哲也他『知的財産法判例集(補訂版)』(有斐閣・2010年)を使用し、判例の解説を詳しく行うこととする。受講者は判例集を毎回授業に持参されたい。

成績評価の方法

第2学期 (学年末試験) :試験を実施する

教科書

大渕哲也他知的財産法判例集補訂版、有斐閣2010
田村善之知的財産法第5版、有斐閣2010
土肥一史知的財産法入門第13版、中央経済社2012
高林龍標準特許法第4版、有斐閣2011
島並良他著作権法入門有斐閣2009

参考文献

中山信弘特許法』(法律学叢書第2版、弘文堂2012
中山信弘著作権法有斐閣2007
中山信弘他編特許判例百選』(別冊ジュリスト209号第4版、有斐閣2012
中山信弘他編著作権判例百選』(別冊ジュリスト198号第4版、有斐閣2009
中山信弘他編商標・意匠・不正競争判例百選』(別冊ジュリスト188号有斐閣2007
中山信弘マルチメディアと著作権』(岩波新書岩波書店1996
福井健策著作権とは何か―文化と創造のゆくえ』(集英社新書集英社2005
福井健策著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」』(集英社新書集英社2010
知的財産法の概説書は分量が多くて初学者にはとっつきにくいが、講義前に知的財産法の概略を掴みたいと考えている人は、ひとまず岩波新書の『マルチメディアと著作権』を読むことを強く勧める。