思想史講義
隋唐仏教思想史

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
馬淵 昌也 教授 4 2~4 通年 4

授業の目的・内容

中国、隋唐代の仏教思想史の発展について、地論学派・天台智顗・吉蔵と三論学派を学んだ昨年度に引き続いて、今年度は、特に玄奘唯識派・華厳学派をとりあげ、その理論的展開についての正確な理解を得ることをめざす。隋唐代は、南北朝時代の発展を前提に、中国思想史上でも仏教が最も飛躍的に展開した時代といわれ、そこで確立された思想は、その後長く中国社会に影響を与えることとなった。その隋唐代の仏教思想について、特に波紋の大きかった玄奘唯識学派から、その克服を目指した華厳学派について学ぶ。

授業計画

授業の目的および概要の説明。
深浦正文『唯識学研究』教史論印度編にもとづき、インドにおける唯識学派の展開の概略を学ぶ。
同書にもとづき、特にインド部派仏教から大乗仏教、唯識思想への展開を学ぶ。
同書にもとづき、無著・世親の生涯と、護法・清弁、戒賢・智光の論争などについて概要を把握する。
同書にもとづき、中国における唯識思想の伝来と展開について概要を学ぶ。
桑山正進・袴谷憲昭『玄奘』にもとづき玄奘の生涯を確認する。
深浦正文『唯識学研究』教義論により五位百法の分類を学ぶ。
同書にもとづき、第八識論について学ぶ。
同書にもとづき、第七識論について学ぶ。
10 同書にもとづき、前六識について学ぶ。
11 同書にもとづき、識の四分義について学ぶ。
12 同書にもとづき、種子説について学ぶ。
13 同書にもとづき、五姓各別説について学ぶ。
14 常盤大定『仏性の研究』を用いて、五姓各別説の起こした波紋について学ぶ。
15 1学期の総括。玄奘唯識学派出現の中国仏教思想史上の意味について確認する。
16 木村清孝『中国華厳思想史』にもとづき、中国華厳学派の発展の概要を把握する。
17 吉津宜英『華厳禅の思想史的研究』にもとづき、智儼の位置を確認する。
18 鍵主良敬・木村清孝『法蔵』により、法蔵の生涯を把握する。
19 吉津宜英『構築された仏教思想ー法蔵』により、法蔵の華厳思想の要点を、相即相入の六相・十玄、及び縁起相由・法性融通を中心に把握する。
20 吉津宜英『華厳禅の思想史的研究』・『華厳一乗思想の研究』によって、法蔵の、五教十宗をはじめとした教判論の展開とその意図を学ぶ。
21 大竹晋『唯識説を中心とした初期華厳教学の研究』により、智儼から法蔵への移行についてのもうひとつの見方を学ぶ。
22 坂本幸男『華厳教学の研究』によって、静法寺慧苑の思想とその位置を学ぶ。
23 吉津宜英『華厳禅の思想史的研究』、荒木見悟「李通玄の思想」を用いて、李通玄の思想の位置と意義を学ぶ。
24 鎌田茂雄『中国華厳思想史の研究』を用いて、澄観の生涯について学ぶ。
25 吉津宜英『華厳禅の思想史的研究』を用いて、澄観の思想の位置を確認する。
26 鎌田茂雄『宗密教学の思想史的研究』を用いて、宗密の生涯を確認する。
27 吉津宜英『華厳禅の思想史的研究』及び、荒木見悟『仏教と儒教』を用いて、宗密の思想の基本的方向性を学ぶ。
28 鎌田茂雄『禅源諸詮集都序』訳注を用いて、宗密の禅宗観を確認する。
29 鎌田茂雄『原人論』訳注を用いて、宗密の仏教を中心とした三教統合論を学ぶ。
30 1年の授業の総括。玄奘唯識と華厳学派の展開の思想史的意義を確認する。

授業方法

隋唐仏教思想史についての、各種論説(日本語を主とする)を選んで配布し、それを踏まえてポイントを議論・解説する。受講者は、あらかじめ配布資料に目を通し、自らの理解を整理し、授業中に意見を発表することが求められる。事前の準備無しに授業に参加することは、控えてもらいたい。

成績評価の方法

年2回の研究書を読んでの報告書の執筆。
授業の参加様態も重要である。

教科書

資料は、教員が配布する。

参考文献

岡部和雄・田中良昭中国仏教研究入門第2刷版、大蔵出版2006
そのほかの資料は、教員が随時指示する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

授業の場では、議論を行いたい。従来の講義に多く見られた、教員から学生への一方通行的なものではなくて、相互に共通の素材をもとに、意見を交換し、共通の認識を作ってゆく、という形の授業とする。そのために、あらかじめ資料を配布し、参加者は目を通してくることを要求する。兼ねて、参加者には、順番に配布資料を要約し、発表する作業を課す。閲読する資料は、いずれも当該分野で最高レベルの研究成果を用いるので、場合によっては難解に感じられるかもしれないが、取り組んだだけの高いクオリティーの収穫を保証する。中国文化に関心の深い受講生の参加を期待したい。