基礎演習A
日本史の研究

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
家永 遵嗣 教授 2 1 通年 2

授業の目的・内容

日本史の研究では、史料から「過去の世界」のイメージをつかみとることが大切になります。
第1学期には、15世紀に琵琶湖北岸の菅浦という惣村が、隣接する大浦という惣村と耕地の帰属を巡って争った時に作成した、ふたつの「合戦記」を読み比べてみます。中世社会は、絶え間のない戦乱と無秩序・混乱によって特徴づけられる時代であり、自分の権利を守るために実力(武力)を行使することは必要不可欠なことであったということを実感してもらいます。
「近代化」とは、このような自力救済を限定して、正当防衛の範囲にまで縮小してゆく過程でした。「喧嘩両成敗」「刀狩り」といった現象・ルールにあたるものは、西欧中世にも認められるのです。国家間の自力救済(武力行使)を制限するプロセスは現在もなお進行中です。パリ不戦条約を介して日本国憲法に影響を与えた「戦争の非合法化」という国際法の潮流です。
第2学期には、「自力救済の否定」という論理で「近代化」をとらえる理論について、代表的な研究文献を分担して読み解いてみます。これを通じて、研究論文を素材として発表する要領を体得します。

授業計画

第1学期
授業の進め方について説明し、テキストを配布・確認し、発表当番を決めます。
近江国菅浦という惣村について、現状のスライドをまじえつつ、地理的・歴史的な環境・特徴を説明します。
『菅浦文書』628号「菅浦惣庄合戦注記」(文安六(1449)年二月十三日)と『同』323号「菅浦・大浦両庄騒動記」を輪読します。適宜、藤木久志「武装する村」・「刀狩りをみる目」の関連部分を読み、論文の要旨をまとめる課題を課します。
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16 課題論文の分担を決め、論点をレクチュアします。
17 分担に沿って発表討論します。(17~30回)
当番を決めて史料を読み討論する「講読」の要領と、論文を読み解いて論議する「研究発表」の要領を体験します。使用する菅浦の史料は漢文の記述法が混じっていますが、基本的に仮名の和文です。中世のムラの指導者たちがムラの住民たちに読み聞かせたもので、かれらの世界を生き生きと伝えてくれるものです。第2学期の課題論文は、グループで分担して発表討論します。

授業方法

第1学期には、滋賀大学日本経済文化研究所刊『菅浦文書 上巻』628号「菅浦惣庄合戦注記」(文安六(1449)年二月十三日)と323号「菅浦・大浦両庄騒動記」(寛正二(1461)年十一月三日)の二点を、輪読形式で読み、当番の担当者が用意した訳文に基づいて、より良い訳を工夫する論議をしてゆきます。テキストはプリントの形で用意します。
第2学期には、菅浦のムラの形成を論じた勝俣鎭夫「惣村菅浦の成立」、堀米庸三「中世後期における国家権力の形成」などを素材として、発表・討論を行います。なお、夏季休業中にレポートを課します。

成績評価の方法

出席と発表・課題提出、および討論への参加

参考文献

滋賀大学日本経済文化研究所史料館菅浦文書』(滋賀大学日本経済文化研究所叢書第一冊有斐閣1960
堀米庸三ヨーロッパ中世世界の構造岩波書店
勝俣鎭夫戦国法成立史論東京大学出版会1979
講読する史料・論文は配布します。

履修上の注意

履修者数制限あり。
第1回目の授業に必ず出席のこと。