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日本文学概論
―物語られる歴史、物語られる近代―
| 担 当 者 |
単 位 数 |
配当年次 |
学 期 |
曜 日 |
時 限 |
| 兵藤 裕己 教授 |
4 |
2~4 |
通年 |
火 |
3 |

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第1学期は、物語(文学)と歴史との関係について考察します。具体的には、太平記や平家物語などを扱います。歴史とは、客観的事実としてあるのではなく、出来事は物語られ、記述されることによってはじめて歴史になります。授業では、物語としての歴史が、文学・芸能として受容されることで、日本人の歴史認識の枠組みをつくりだし、現実の政治制度のあり方をも規定してきた仕組みについて考察します。
第2学期は、近世・近代の声の文学(オーラル・リテラチュア)について考察します。具体的には、浪花節や講談、芝居噺などの大衆芸能が、近代の大衆社会に浸透することで、近代日本の国民国家の成立、すなわち大衆の国民化(ナショナライゼーション)や、「日本人」のメンタリティ形成に果たした役割について考えます。声の文学史という観点から捉えなおした、もう一つの近代文学史の可能性について考えます。
第1・第2学期とも、私の文学観・文学論を展開します。総花式のいわゆる概論にはならないことを、あらかじめお断りしておきます。

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| 1 |
歴史とは何か |
| 2 |
源氏の氏長者 |
| 3 |
歴史としての源氏物語 |
| 4 |
征夷大将軍の物語 |
| 5 |
南北朝期の平家物語 |
| 6 |
近世の平家物語 |
| 7 |
太平記の世界 |
| 8 |
太平記の成立 |
| 9 |
楠正成について |
| 10 |
天皇をめぐる二つの物語 |
| 11 |
近世の太平記 |
| 12 |
大日本史と文献史学 |
| 13 |
明治政府と建武の中興 |
| 14 |
近代史学の成立とリアリズム |
| 15 |
第1学期授業のまとめ |
| 16 |
柳田国男の口承文芸論 |
| 17 |
大衆芸能と浪花節 |
| 18 |
貧民街の芸人 |
| 19 |
演説・大道芸・浪花節 |
| 20 |
民権と国権 |
| 21 |
声の伝播、物語の流通 |
| 22 |
講談速記本から浪花節へ |
| 23 |
「家族」のモラルと法制度 |
| 24 |
家族制度と明治国家 |
| 25 |
自然主義文学と「家」 |
| 26 |
物語としての国民 |
| 27 |
桃中軒雲右衛門の声 |
| 28 |
日本近代の解体 |
| 29 |
声と日本近代 |
| 30 |
授業のまとめ |

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毎回資料を配付し、講義形式で進めます。

- 第一学期末、第二学期末に、それぞれレポートを提出する。

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兵藤裕己『太平記 <よみ>の可能性』(講談社学術文庫)講談社、2005年、ISBN:4-06-159726-4
兵藤裕己『<声>の国民国家』(講談社学術文庫)講談社、2009年、ISBN:978-4-06-291966-1
第1学期の教科書として、『太平記 <よみ>の可能性』、第2学期の教科書として、『<声>の国民国家』を使用します。