日本文学演習
近代文学とジェンダー

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
久米 依子 講師 4 2~4 通年 3

授業の目的・内容

日本の近代文学を、社会的文化的性差としてのジェンダーの観点から読み解く。明治時代以降の日本社会は西欧社会をモデルに諸制度を整えたが、性差の問題に関しては前近代的感覚が残り、制度上でも意識の上でもさまざまな不平等がみられた。近代文学はそうした男女別の規範を反映し、時に制度を補強し、あるいはそこからの逸脱の可能性を示す。テクストに描かれた多様なヒロイン像や恋愛の表現、また女性作家の活動などに注目し、近代の女性・男性の描かれ方を改めて考えると共に、現代のジェンダーの様相にまで考察を届かせたい。

授業計画

全体の方針の解説、テクストの例示、分担の検討。第1学期は現代から昭和期、第2学期は明治・大正期の文学を扱う予定。ライトノベルは余裕があれば扱う。
分担の検討と、読解に関連する事項の講義(1) 近代的ジェンダーとは何か
読解に関連する事項の講義(2) 日本の諸制度とジェンダー構成
読解に関連する事項の講義(3) テクストを読むための知識の確認
現代文学の中のセクシュアリティ(1) 桐野夏生、藤野千夜などを予定
現代文学の中のセクシュアリティ(2) 現代社会のセクシュアリティを考察
現代文学の中の女性像(1) 笙野頼子、よしもとばなななどを予定
現代文学の中の女性像(2) 現代女性作家の試みを考える
現代文学の中の女性像(3) 女性作家の表現とメッセージ
10 太宰治の描く女性像(1) 『きりぎりす』掲載作を予定
11 太宰治の描く女性像(2) 女性一人称文体の問題
12 昭和期女性作家の試み(1) 吉屋信子、尾崎翠を予定
13 昭和期女性作家の試み(2) ジェンダーから逸脱する表現
14 第1学期の総括・理解度の確認とまとめ
15 自主研究
16 夏目漱石作品にみるジェンダー(1) 『三四郎』あるいは『それから』を予定
17 夏目漱石作品にみるジェンダー(2) 明治知識人と社会状況
18 夏目漱石作品にみるジェンダー(3) 「新しい女」の登場する時代
19 夏目漱石作品にみるジェンダー(4) 女性ジェンダー化する男性像
20 夏目漱石作品にみるジェンダー(5) 三四郎、あるいは代助の挫折
21 芥川龍之介作品の男女像(1) 夏目漱石の弟子として
22 芥川龍之介作品の男女像(2) ジェンダー秩序とテクスト
23 田村俊子と男女の葛藤(1) 「新しい女」の家庭
24 田村俊子と男女の葛藤(2) 女性表現者の苦しみ
25 樋口一葉作品中の明治の女性(1) 規範の中の女性
26 樋口一葉作品中の明治の女性(2) 社会へのメッセージ
27 ライトノベルの中のジェンダー(1) 現代青少年文化との関係
28 ライトノベルの中のジェンダー(2) ジェンダーの再編と強化
29 全体の総括・理解度の確認とまとめ
30 自主研究
上記以外に受講者が発表したい作品があれば、場合によっては取り上げることができる。

授業方法

受講者の発表とそれについての受講者間の意見交換で進める。意見を言うために受講者は発表のテクストを読んでくること。自分の発表内容と他の受講者の発表に関して、各学期末にレポートをまとめる。

成績評価の方法

発表とレポートと受講時のコメント。
出席状況と発表内容とレポート、授業中の発言、コメントペーパーによって総合的に判断します。
発表日の欠席は単位不認定とします。レポートも提出期限を守ること。

教科書

テクストは授業中に指示する。

参考文献

授業時に指示、あるいはプリントを配布する。

履修上の注意

履修者数制限あり。(35名)
第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

受講者は、発表予定のテクストを読んできていることを前提とします。
発表者は、担当の当日に欠席すると単位放棄とみなします。やむを得ない場合は必ず連絡を入れること。