言語は人間の認知能力の一部であるのと同時に、認知活動全体に大きく関わっている。今学期のゼミでは、ドイツ語の比喩表現(直喩、換喩など)を含む文を扱う。一般に、比喩とは、Aを表現するのにAとは異なるBを使うことによって成立する。ただし、その際に、AとBの関係は、歴史的に作られたもので固定したものであることもあれば、一時的に作られた「たとえ」であることもある。 (1) a. Der Mann war ein hohes Tier. b. Auch mit dreiundsechzig Jahren war er noch ziemlich gut in Form. Kein Bauchansatz, keine Speckrollen, kein schlabberiger Truthahnhals. (1a) のTierは、そもそも「動物」であり、(1b)のTruthahnhalsは、「七面鳥の首」であるが、もちろん、それぞれ「動物」や「七面鳥の首」について語っているのではない。これらの「たとえ」の成立過程を考えていくのが今学期の課題である。