文学・文化コース ゼミナール(4)
「物語」の引用・転用・変奏

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
大貫 敦子 教授 2 3~4 第2学期 2

授業の目的・内容

芸術作品には、すでに存在する物語を借用している事例が多く見られます。この授業ではこのような既存の物語が別の物語へとヴァリエーションされていく事例を扱います。前半では、ウェールズに発しながら西ヨーロッパに広く伝わった『アーサー王伝説』のドイツ語圏における受容の例として、中世文学とヴァーグナーの作品を考察します。アーサー王伝説のどの部分が継承される物語の「核」であり、また物語が地域と時代によってどのように変化しているのかに着目してみたいと思います。後半では、1999年にノーベル文学賞を受賞した作家ギュンター・グラスの作品『女ねずみ』(1986)を扱います。この作品は、核戦争で人間が滅亡し「ねずみ人間」だけが生き延びるというストーリーですが、そのなかにグリム童話やハーメルンのねずみ捕り伝説、また海に沈められたとされる謎の大陸アトランティスの神話などがはめ込まれています。神話や伝説や童話の引用が、現代のテクノロジー問題をテーマとするこの作品においてどのような役割を果たしているのかを考えてみたいと思います。

授業計画

モティーフの引用・転用・変奏(1)「アーサー王伝説」とドイツ語圏における受容
モティーフの引用・転用・変奏(2)
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ『パルツィヴァル』 
ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクの『トリスタン』
モティーフの引用・転用・変奏(3)
リヒァルト・ヴァーグナー『トリスタンとイゾルデ』(上演映像) 
モティーフの引用・転用・変奏(4)
リヒァルト・ヴァーグナー『トリスタンとイゾルデ』についての討論
モティーフの引用・転用・変奏(5)
リヒァルト・ヴァーグナー『パルツィヴァル』(上演映像) 
モティーフの引用・転用・変奏(6)
リヒァルト・ヴァーグナー『パルツィヴァル』についての討論
ギュンター・グラス『女ねずみ』 (1)G.グラスについて
ギュンター・グラス『女ねずみ』 (2)グリム童話とハーメルンのねずみ捕り伝説
ギュンター・グラス『女ねずみ』 (3)アトランティス神話
10 ギュンター・グラス『女ねずみ』 (4)作品分析
11 ギュンター・グラス『女ねずみ』 (5)映画化された作品
12 ギュンター・グラス『女ねずみ』 (6)文字テクストとしての作品と映画化
13 ギュンター・グラス『女ねずみ』 (7)作品についての討論
14 まとめとレポート作成の指導
15 自主研究

授業方法

ヴァーグナーの作品上映映像とグラスの作品の映画化ヴァージョンについては授業中に一部を見ますが、授業中に扱えなかった部分については学科の学生閲覧室に映像があるので、各自で見ておいてください。

成績評価の方法

学期末レポート
授業への受講姿勢およびレポートを評価の対象とします。

教科書

共通に扱うテクストはプリントで配布します。ただし作品の一部に限られるので、配布されなかった部分については各自で読んでください。

参考文献

授業中に適宜指示します。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。