文学・文化 講義(2)
演劇性研究

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
平田 栄一朗 講師 2 1~4 第2学期 4

授業の目的・内容

第一学期はメランコリーをテーマといたします。社会学者ヴォルフ・レペニース(Wolf Lepenies)は1969年に上梓した『メランコリーと社会(Melancholie und Gesellschaft)』において、メランコリーは単なる社会逃避ではなく、社会の進歩やユートピアを目指す活動の挫折や失望を反映したものであると論じることで、メランコリーの社会的・文化的側面を解明しました。以後メランコリー研究は、この心的状態を単なる病(的)とみなさず、社会と人間との関係を歴史的・文化的事象や芸術作品などにおいて考察してきています。本講義では、メランコリー研究の変遷をたどりつつ、この関係の多様な側面を紹介します。
第二学期は演劇性をテーマといたします。ドイツの演劇学では、社会や日常の事象を「演劇性(Theatralität)」や「パフォーマンス性(Performativität)」という概念で新たに捉え直す試みが行われています。この試みから、たとえば人間の主体そのものに演劇的な要素が必然的に内在していることや、あらゆる政治権力はパフォーマンス性を内包しているのであるから、政治が劇場型であることを単純に批判することはできない、などという考え方が明らかになってきました。このような考え方などを含め、演劇性研究から解き明かにされる世界の事象の特徴を紹介します。

授業計画

イントロダクション:メランコリーの特徴・歴史的変遷について
レペニース著『メランコリーと社会』を参照にしつつ、社会とメランコリーの関連性を歴史的にたどる(1)
レペニース著『メランコリーと社会』を参照にしつつ、社会とメランコリーの関連性を歴史的にたどる(2)
社会とメランコリーの歴史的変遷(20世紀を中心)
ルネサンスのメランコリー:デューラーの「メランコリアⅠ」を手掛かりにして
宗教改革とバロック時代のメランコリー:ベンヤミンの『ドイツ悲劇の根源』を手掛かりにして
廃墟とメランコリー
現代のメランコリー:アラン・エランベールの論を中心に
女性のメランコリー:ジュリア・クリステヴァの『黒い太陽』
10 メランコリーと現代演劇(1)
11 メランコリーと現代演劇(2)
12 日本文学とメランコリー(1)
13 日本文学とメランコリー(2)
14 授業のまとめ
15 自主研究
16 オリエンテーション(1):演劇性の基本的な考え方:ゴフマン
の理論、模倣論、遊戯論、儀式論、主体の演劇性、メディア・リプ
レゼンテーションとの関係などについて紹介します。
17 オリエンテーション(2):演劇性の基本的な考え方:ゴフマン
の理論、模倣論、遊戯論、儀式論、主体の演劇性、メディア・リプ
レゼンテーションとの関係などについて紹介します。
18 オリエンテーション(3):演劇性の基本的な考え方:ゴフマン
の理論、模倣論、遊戯論、儀式論、主体の演劇性、メディア・リプ
レゼンテーションとの関係などについて紹介します。
19 自己演出:精神分析のモデルとして
20 権力の演出
21 スタイルと文化の演出(1)
22 スタイルと文化の演出(2)
23 都市の演劇性・演出(1)
24 都市の演劇性・演出(2)
25 スペクタクル社会の演劇性(1)
26 スペクタクル社会の演劇性(2)
27 儀式性と演劇性
28 ジェンダーの演劇性
29 授業のまとめ
30 自主研究

授業方法

講義形式で授業を進めます。

成績評価の方法

筆記試験(各学期の最後)結果・出席状況・授業に対する姿勢を総合的に判断し評価します。

教科書

ありません。

参考文献

授業で適宜紹介します。