日本の統治構造
執政中枢論から見た日本の政治

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
野中 尚人 教授 2 D/M 第2学期 5

授業の目的・内容

日本の政治システムについて、執政中枢論を用いながら、他の議院内閣制の国家との比較分析を行う。
1990年代以降、特に小泉政権の5年間を経て、日本の政治システムには様々な変化が生じ、続いて2度の政権交代が起った。それらの変化の意味を、他の先進民主主義国との比較の上で理解するということが目的であるが、その際、執政中枢論という分析のフレームワークに依拠する。
15回は大きく分けると3つの部分から成る。
第1は、執政中枢論について基礎的な理解を身につけることであり、ここでは英語の文献を用いる。
次に、自民党政権の仕組みについて、理解を深め、さらに政権交代と民主党の政治主導への取り組み、さらにその政権運営と統治機構改革の挫折について検討する。
第3の部分は、学生による事例研究報告である。日本の執政中枢にはどのような特徴があるのか、構造や制度面では何か特徴的なものがあるのか、ないしは、そもそも執政中枢における意思決定や総合調整の実態はどのようになっているのか、そして、政権交代とどのように関連し、いかなる変容が生じつつあるか、などについて事例研究の上、報告してもらい討論を行う。
想定される例を挙げれば、内閣の構成や機能の仕方、閣議のアジェンダ、政務三役の役割、政府-与党間の調整、総理大臣のリーダーシップ、内閣官房の組織など、様々なものが考えられる。

授業計画

イントロダクション 執政中枢論の背景と授業の目的
執政中枢論−その1− 基本的な考え方と骨格
執政中枢論−その2− イギリスの事例
執政中枢論−その3− フランスの事例
自民党システム−その形成・構造①−
自民党システム−その形成・構造②−
自民党システムの崩壊と政権交代−90年代の変化と小泉改革−
民主党政権と政治主導
民主党の政権運営と統治機構改革の挫折
10 学生による事例報告・討論
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15 全体としての総括と討論 −日本政治の特徴とは何か−

授業方法

前半はテキストの講読と発表ならびにそれに対する討論と教員によるコメント・解説。
後半は学生による事例の報告(レポート)とそれをめぐる討論。

成績評価の方法

出席、研究報告、最終レポートの総合点

教科書

佐藤誠三郎・松崎哲久自民党政権中央公論社1986
飯尾潤日本の統治構造中央公論社2007
北岡伸一自民党−政権党の38年−読売新聞社1995
日本経済新聞社自民党政調会日本経済新聞社1983
佐々木毅政治の精神岩波書店2009
野中尚人自民党政治の終わり筑摩書房2008
読売新聞政治部自民党を壊した男−小泉政権1500日の真実−新潮社2005
山脇岳志郵政攻防朝日新聞社2005
P. Dunleavy and R.A.W. Rhodes, Prime Minister, Cabinet and Core Executive, St. Martin's Press, 1995
Ludger Helmes, Presidents, Prime Ministers, and Chancellars, Palgrave Macmillan, 2005
佐々木毅ゼミナール現代日本政治日本経済新聞社2011
薬師寺克行証言 民主党政権講談社2012

参考文献

佐々木毅政治改革1800日の真実講談社1999
石原信雄首相官邸の決断中央公論社1997
日本行政学会内閣制度の研究ぎょうせい1987
清水真人官邸主導日本経済新聞社2006
飯島勲小泉官邸秘録日本経済新聞社2006
大田弘子経済財政諮問会議の戦い東洋経済新報社2006
竹中平蔵構造改革の真実日本経済新聞社2006
大嶽秀夫・野中尚人政治過程の比較分析放送大学教育振興会1999
朝日新聞政権取材センター編『民主党政権100日の真相』朝日新聞出版、2010年も用いる。