※日本文学演習
語りの主体と人称――物語の文体、小説の文体――

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
兵藤 裕己 教授 4 D/M 通年 5

授業の目的・内容

「日本語の二人称代名詞あなたとかきみは、対等かそれ以下の相手でなければ使えません。対等以上の人は何々さん(さま)と名前で呼ぶしかない。ときには名前を呼ぶのすら憚られて、社長とか先生とかの役職で呼んだりします。英語のyouのような便利な言葉が存在しないわけです。人称の問題は、日本語学の分野ではあまり議論の対象にならないようですが、英語のyouのような二人称代名詞を持たない日本語では、一人称や三人称も、英語世界のそれとは異なるかたちで存在するのでしょう。そして人称のあり方は、そのまま人間関係や社会編制のあり方の問題でもあります。日本語の人称世界については、西田幾多郎や和辻哲郎など、日本語で哲学した先人たちが考え抜いた問題でもありますが、近年では、哲学者の坂部恵さんが考えた問題です。日本文学研究では、藤井貞和さんが日本語で書かれた物語や小説の人称について「四人称」という言い方をしています。たしかに三人称客観の自立した言語世界が作りにくく、三人称の言表に語り手の一人称的な声が混入せざるをえない日本語では、三人称プラス一人称で、四人称とでもいえるような人称ができてしまいます。そんな日本語の人称世界、ペルソナの問題に、すでに明治21年という時点で二葉亭四迷は気づいていたのでしょうね。」(「アナホリッシュ国文学」第2号、2013年3月、対談「言語とネーション」より)
※昨年と同じく、物語と小説の文体について、さまざまな角度から考えます。

授業計画

この授業の説明。
古典物語の文体分析に関する基礎的な論文を読む。
近代小説の文体分析に関する基礎的な論文を読む。
古典物語の文体分析に関する基礎的な論文を読む。
近代小説の文体分析に関する基礎的な論文を読む。
古典物語の文体分析に関する基礎的な論文を読む。
近代小説の文体分析に関する基礎的な論文を読む。
古典物語の文体分析に関する基礎的な論文を読む。
近代小説と文体分析に関する基礎的な論文を読む。
10 古典物語と文体分析に関する基礎的な論文を読む。
11 近代小説と文体分析に関する基礎的な論文を読む。
12 古典物語と文体分析に関する基礎的な論文を読む。
13 近代小説と文体分析に関する基礎的な論文を読む。
14 第1学期の授業のまとめ
15 総括
16 受講者が各自専攻する分野で、最も話題性のある文体分析関連の論文を読む。
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29 第2学期の授業のまとめ
30 総括

授業方法

研究書や研究論文の輪読形式で授業を進めます。

成績評価の方法

授業での発表と、年度末のレポートで評価します。

参考文献

兵藤裕己泉鏡花の近代』(雑誌『文学』2012年11・12月岩波書店
坂部恵鏡の中の日本語岩波書店
野口武彦三人称の発見まで筑摩書房
高橋亨源氏物語の対位法東京大学出版会
小森陽一文体としての物語筑摩書房
坂部恵仮面の解釈学東京大学出版会
三谷邦明源氏物語の言説翰林書房
山本史華無私と人称東北大学出版会