※哲学演習
存在への問いとハイデッガーの思索―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
小柳 美代子 講師 4 2~4 通年 4

授業の目的・内容

ハイデッガーの思索の道は、ある意味で迷いの連続だったといいうる。『存在と時間』の最後に書かれているように、「その道が唯一の道なのか、そもそも正しい道なのか、それはその道を歩んだ後に、初めて決められる」。彼の思索はそのような道を求める「戦い」だったといいうるが、しかしそれは単に彼個人に止まらず、いわば西洋哲学自身の迷いを彼自らが体現したものだった。それは一体いかなる事態だったのか? この授業ではこの問いを明らかにし、共に問いの道に赴くことを目指す。そのためにこの授業では、主著とされる『存在と時間』のうちでもその「真髄」といってよい「本来的存在可能と先駆的覚悟性」の箇所を読む。彼の「存在の問い」の真髄でもあるこの箇所のうちには、だが彼の「迷い」の芽もまた潜んでいた。それらを問うために、この授業では、ハイデッガー後期思想や西欧哲学全体との連関をつねに視野に入れた講義も行う。最終的には、受講者自身が「自ら哲学する」ことを、目指す。

授業計画

1 全体の見取り図。存在への問いとハイデッガーの思索。ハイデッガーにおいて「存在」とは何だったのか?
2 ハイデッガーの思索全体における『存在と時間』の位置づけ。ハイデッガー前期・後期思想について。
3 ハイデッガー前期・後期思想において、何が根本的に同じであり、何が根本的に異なっていたのか?
4 ハイデッガーにおける「現象学」の意味。「存在への問い」と「現象学」。
5 『存在と時間』を理解するための重要事項の説明。『存在と時間』の構造。第一編「現存在の準備的基礎分析」。
6 『存在と時間』の構造。第二編「現存在と時間性」。
7 第二編「現存在と時間性」の構造。「本来的存在可能」「死への存在」「良心の呼び声」。
8 「死への本来的存在の実存論的投企」講読。関連事項についての講義。
9 同上。
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13 「本来的・実存的可能性の証示の問題」講読。関連事項についての講義。
14 同上。
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16 「良心の実存論的・存在論的基礎」講読。関連事項についての講義。
17 同上。
18 「良心の呼び声という性格」講読。関連事項についての講義。
19 同上。
20 「ゾルゲの呼び声としての良心」講読。関連事項についての講義。
21 同上。
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25 「呼びかけの了解と負い目」講読。関連事項についての講義。
26 同上。
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30 全体の総括。
『存在と時間』の「本来的存在可能と先駆的覚悟性」の箇所のうち、今年度は前半を講読する。

授業方法

授業はこちらの講義と担当者によるテキストの訳読とを主体に進めてゆく。担当者は事前に決めておくが、受講者も討論等に積極的に参加することを期待する。なお、ドイツ語に習熟していない学生にも配慮する。

成績評価の方法

レポート:60%(学年末レポートを課す)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):40%

教科書

Martin Heidegger,, Sein und Zeit, Tübingen: M.Niemeyer, 1927~
教科書に関しては、第一回目の授業中に指示する。また随時レジュメを配布する。

参考文献

小柳美代子『〈自己〉という謎――自己への問いとハイデッガーの「性起」』、法政大学出版局2012年、ISBN=9784588150654
山本英輔、小柳美代子 他 編著『科学と技術への問い――ハイデッガー研究会第三論集』、理想社2012年、ISBN=9784650105469
その他、参考文献に関しては、必要に応じて授業中に指示する。

その他

受講者はこの演習を通じて、単にハイデッガーが書いたものを訳読するだけでなく、「自ら思索し、哲学する」という姿勢を養ってほしい。