特殊講義(関税・税関行政と法)
今、“関税”・“税関”に起きていること―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
柴﨑 澄哉 講師・他 2 2~4 第1学期 3

授業の目的・内容

 近年、貿易自由化による国際社会・国際経済のグローバル化・ボーダーレス化を背景として、世界の貿易量は大きく成長しており、貿易立国である我が国にとって、国際貿易とそれを支える関税・税関行政は、ますます重要になってきています。
 こうした中、グローバルな貿易体制の運営を担う世界貿易機関(WTO)に加え、二国間の経済連携協定(EPA)、最近ではその二国間を超えたリージョン・ワイドなメガEPA交渉(TPP等)が進展するなど、世界の貿易秩序は変革の時期を迎えています。このような時期に、我が国として「あるべき貿易秩序」のビジョンを描き、交渉に臨む姿勢が必要になっています。
 また、このようなグローバリゼーションが進展する中、国際的なモノの流れを円滑にする制度・法執行とともに、覚せい剤や拳銃等の社会悪物品、又はコピー商品や海賊版といった知的財産侵害物品の密輸を阻止するための適切な制度・法執行も税関行政の重要な役割です。
 さらに、国際貿易の健全な発展を実現するためには、各国が協調して協定を策定し、国内制度を整備し、法執行の適正化を図っていかなければなりません。その点、我が国としても税関の“知”のグローバル・スタンダードの確立と技術協力を通じた途上国への普及に向けて、外国税関やその他諸外国の関係機関と緊密に連携する必要があります。
 本授業では、我が国の関税政策・税関行政の企画・立案を担っている財務省の、行政経験や国際交渉経験の豊かな現役国家公務員が講師を務め、「そもそも関税とは何か?」から始まり、上記のような国際貿易法等の国際的な動向、我が国の関税・税関行政における制度・法執行について概観し、事例を交えながら、その理解を深め、学生の皆さんと共に考えていくことが目的です。
 講師には、授業における疑問点だけではなく、国家公務員としての職務のやりがいや、何故、国家公務員を職業として選んだのか等、気軽に質問してください。皆さんの積極的な履修を期待しています。法学部生に限らず、他学部(経済学部・文学部・理学部)の学生の履修も大いに歓迎します。

授業計画

1 イントロダクション -今、“関税”・“税関”に起きていること-(財務省関税局総務課長 柴﨑澄哉)
2 関税とは何か? “7,433”-それぞれの関税率に込められた意味-(財務省関税局関税課関税企画調整室長 西野健)
3 関税をめぐる国際的な動向(1) 世界経済のブロック化を脱却せよ -多角的自由貿易体制の確立-(財務省関税局局付(青山学院大学経営学研究科特任教授、前財務省関税局関税課世界貿易機関専門官) 近藤嘉智)
4 関税をめぐる国際的な動向(2) 国際通商の憲法 -WTO(世界貿易機関)協定-(財務省関税局局付(青山学院大学経営学研究科特任教授、前財務省関税局関税課世界貿易機関専門官) 近藤嘉智)
5 貿易救済措置 -セーフガードやアンチダンピングなど、グローバル化の安全弁-(財務省関税局関税課関税企画調整室長 西野健)
6 関税をめぐる国際的な動向(3) 多角的自由貿易体制の限界と地域主義の拡大 -国際通商の特別法としてのFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)-(財務省関税局関税課(参事官室)課長補佐 中尾崇)
7 税関行政(1) 輸入品は必ず“ここ”を通ってくる -グローバルサプライチェーンの関所-(財務省関税局業務課課長補佐 中西佳子)
8 税関行政(2) EPA関税率の適用を左右する原産地のルール -フランス産のぶどうを原料としてスイスで醸造・瓶詰めしたワインに日スイスEPAのEPA税率は適用できる?EPAにおける原産地のルールの交渉はどのように行っている?-(財務省関税局関税課兼業務課課長補佐 香川里子)
9 税関行政(3) 何をもとに関税額を決定するか -貨物の価格だけ?運賃は?ロイヤルティは?そのルールは日本が勝手に決めているの?-(財務省関税局関税課課長補佐(前財務省関税局業務課課長補佐) 正海伸幸)
10 税関行政(4) 覚せい剤・拳銃・コピー商品等の密輸を最前線で食い止める(財務省関税局関税課国際協力専門官(前財務省関税局監視課課長補佐) 鈴木崇文)
11 税関行政(5) 国際物流のセキュリティ強化と貿易円滑化の両立 -今求められる官民パートナーシップ-(財務省大臣官房専門調査官兼関税局管理課(元財務省関税局業務課認定事業者調整官) 米山徹明)
12 税関行政(6) 法執行のダイナミズムを体感する -税関見学を通じて-
13 多様化する税関業務と各国税関の調和 -我が国税関の“知”をグローバル・スタンダードにするために-(財務省関税局参事官(国際協力担当) 田中秀治)
14 政策提言 税関行政の今後について(財務省関税局総務課長 柴﨑澄哉)
15 総括

授業方法

 本授業は、第12回の授業(税関見学)を除き、講義形式を基本としますが、履修生と双方向で共に考えながら進めていく予定です。講師は、我が国の関税政策・税関行政の企画・立案を担っている財務省の、行政経験や国際交渉経験の豊かな現役国家公務員が、それぞれの分野に応じて各回の授業を分担するオムニバス形式です。

成績評価の方法

小テスト:55%(授業中に、授業内容に関する簡単な小テストを実施し、理解度の確認をします。)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):45%
 成績評価は、上記の通り、小テスト及び平常点の評点により行います。ただし、期末にレポートを提出した場合は、成績に加味します。

教科書

毎回資料を配布しますので、特に指定しません。

参考文献

必要に応じ、随時指示します。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

 第12回の授業では、東京税関の見学を予定していますが、半日程度時間がかかる予定です。そのため、他の授業に出席する必要があるなど、やむを得ず税関見学を欠席する場合には、成績評価において不利な扱いとならないよう考慮します。
 関税・税関行政については、財務省ホームページの関税政策部分(http://www.mof.go.jp/customs_tariff/)及び税関ホームページ(http://www.customs.go.jp/)に豊富な情報が掲載されていますので、参考にしてください。
 その他、授業後に授業内容に関する質問や問合せがある場合等については以下のメールアドレスまでご連絡ください。
 
 質問等受付窓口 customs-study@mof.go.jp