学習心理学(経験による環境への適応過程)

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
濱村 良久 講師 4 1~4 通年 2

授業の目的・内容

あなたが心理学に向かうきっかけとなった「あるもの」とは、経験や努力によって絶対に変えられないものでしょうか?もし変えられるものであるとすれば、それは学習心理学の領域であるかもしれません。自分や彼は、どうしてそういう行動を取る(または取らざるを得ない)ようになったのでしょうか。もし彼が「自分はそうしたい訳じゃないけど、周りがこうだから仕方がない」と言うならば、彼の現在の行動は彼が環境(周り)になんとか適応しようとした結果だと考えられます。しかし神様の目から見ると、彼は環境(周り)に操られているように見えるかもしれません。何を変えれば、私たちは自分や他人の「不適応」かつ「自分でも不本意な」行動を変えられるでしょうか。学習心理学とは、私たちの現在の行動はどのような環境や経験、適応の結果なのかを考え、私たちの行動を実際に左右しているものは何か、それを変えるにはどうすればいいのかを研究する学問です。

授業計画

1 学習心理学とは何か 学習心理学は何を研究する学問でしょうか。
2 環境への適応 赤ちゃんや野生児の例を参考に、環境への適応とは何かを考えます。
3 古典的条件づけ1 パブロフが発見した古典的条件づけの概略を説明します。
4 古典的条件づけ2 最近の古典的条件づけ理論について説明します。
5 性格と古典的条件づけ 性格の個人差は、古典的条件づけ理論からどのように説明されるでしょうか。
6 オペラント条件づけ1 進化論によって動物の知的能力に関心が集まり、ソーンダイクの研究が生まれました。
7 オペラント条件づけ2 スキナーのフリーオペラントについて説明します。
8 オペラント条件づけ3 学習理論の行動療法への応用について説明します。
9 強化スケジュール1 強化スケジュールの基礎について説明します。
10 強化スケジュール2 強化スケジュールの応用について説明します。
11 恐怖と回避行動1 感情を学習理論から考えてみます。
12 恐怖と回避行動2 学習理論から、どうしたら恐怖が克服できるかを考えてみます。
13 罰1 罰の基本的法則について説明します。
14 罰2 罰の応用について考えてみます。
15 予備日
16 ほめへの応用 オペラント条件づけから教育について考えてみます。
17 叱りへの応用 オペラント条件づけから教育について考えてみます。
18 刺激性制御 3項随伴性について学びます。
19 概念形成 概念はどうやって学習するのでしょうか。動物にも概念はあるのでしょうか。
20 観察学習1 強化が直接与えられない場合でも学習が成立することがあります。
21 観察学習2 観察学習の臨床への応用について説明します。
22 運動学習1 学習理論から運動技能の獲得について考えます。
23 運動学習2 運動学習の諸理論について学びます。
24 選択行動1 選択行動の基本的法則について学びます。
25 選択行動2 学習理論から見ると、経済心理学(行動経済学)は人間の選択行動の問題と考えることができます。
26 比較認知1 動物と人間の認知機能の差はどこにあるのでしょうか。
27 比較認知2 比較認知の諸理論について学びます。
28 高次認知過程と言語1 言語能力はどうやって進化してきたのでしょうか。
29 高次認知過程と言語2 動物の言語獲得について考えます。
30 授業のまとめ

授業方法

教科書と配付資料をもとに、講義形式で授業を行います。また毎回、出席調査を兼ねて質問・意見を書いてもらいます。出された質問については次回の授業の冒頭に取りあげます。積極的に質問・意見を出してくれることを望みます。質問・意見は電子メール(hamamura@nda.ac.jp)でも受け付けます。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):85%(学習心理学の知識)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):5%(質問・意見の鋭さ、論理性)
夏期休暇時にレポートを課します。:10%(学習心理学の知識)
夏期レポート未提出者は学年末試験の受験資格がありません。

教科書

『メイザーの学習と行動 日本語版第3版』第3版、二瓶社2008年、ISBN=9784861080456
教科書はやや専門的に書かれているので、初めは読んでもすぐには理解できないかもしれません。しかしこれらの研究も、学生の皆さんと同じような日常の「心」への関心から始まったのです。彼らは何を知りたくて学習心理学を研究し始めたのか?彼らはどのような答を手に入れることができたのか?その答は彼らが当初かかえていた問題とどうかかわっていたのか?この授業が、学生の皆さんが今まで持っていた心理学への関心と、実際の心理学の研究をつなぐ架け橋になれたらと思います。(教科書購入は義務ではありません。)

参考文献

参考文献は授業時に指示します。

その他

授業、レポート、テスト、その他についての質問は、電子メール(hamamura@nda.ac.jp)でいつでも受け付けます。学生のメールには必ず返事を出しますが、どの授業の質問か分からないことがよくあり、また迷惑メールと判別がつきにくいので、題名に必ず氏名と授業名(学習心理学)を入れて下さい。携帯からのメールには返信文字数制限を記入し、パソコンメールからの受信拒否を設定している場合は一時的に解除してください。匿名のメールおよび添付ファイルはウィルス対策のため読まずに削除しますので、注意して下さい。