● ※日本史特殊研究
―平安時代の儀式・政務の研究――

　平安時代の理解を深める上では、平安期の古記録（日記）・儀式書を読む力を高め、当時の制度や故実を理解することが肝要である。王朝文学の影響もあって、平安貴族は、詩歌管絃など遊興の耽るイメージがあるが、近年の研究によって、日々、政務や業務に従事していたことが判明しつつある。平安期で難解なのは、平安宮内の諸司や五畿七道諸国から進められる文書（上申文書）が、どのように整理・確認、決裁・審議されるかに関してである。
　今年度は、先ず、平安期の政務関係の重要論文を読んでから、10世紀前半に外記庁（太政官候庁）で行われる外記政の模様を伝える、『洞院家廿巻部類』等に収められた「外記政」（洞院家旧蔵本「外記政」）を、東山御文庫本『外記政』（東山御文庫勅封45-22）を底本に翻刻・講読しながら、外記政の儀式次第や引用される小野宮流の藤原実頼の日記『清慎公記』逸文を読み解くことにより、儀式書や日記の読み方を習得し、平安期の政務に関して理解を深める。

1	ガイダンス-平安時代研究の工具の紹介・解説-
2	講義：平安時代史研究を切り拓く新史料と禁裏・公家文庫研究の進展
3	講義：変体漢文の学び方
4	論文講読：平安時代の政務関係の論文を読む１ 西本昌弘「古代国家の政務と儀式」 橋本義則「外記政の成立」
5	論文講読：平安時代の政務関係の論文を読む２ 吉川真司「申文刺文考」・「王宮と官人社会」
6	史料解題：東山御文庫本『外記政』の性格とその伝来 　　　　　　　　－洞院家旧蔵本と禁裏文庫－
7	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』１丁表～２丁表
8	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』２丁表～３丁裏
9	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』３丁裏～４丁裏
10	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』５丁表～６丁表
11	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』６丁裏～７丁裏
12	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』８丁表～９丁表
13	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』９丁裏～10丁裏
14	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』11丁表～13丁表
15	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』13丁裏～15丁表（雨儀）
16	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』15丁裏～16丁裏
17	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』16丁裏～17丁裏
18	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』17丁裏～18丁裏
19	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』19丁表～20丁表（南申文）
20	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』21丁表～23丁表（内印）
21	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』23丁表～24丁表
22	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』24丁裏～25丁表
23	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』25丁裏～27丁裏
24	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』27丁裏～31丁裏
25	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』32丁裏～34丁裏（『清慎公記』逸文・承平3・4年条）
26	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』34丁裏～38丁表（『清慎公記』逸文・承平5・7・8年条）
27	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』36丁裏～38丁表（『清慎公記』逸文・天慶2・3・4・5年条）
28	史料翻刻・講読：東山御文庫本『外記政』38丁表～41丁表（『清慎公記』逸文・天慶6・9年条）
29	今年度のまとめ－平安時代の政務関係の論文の課題を見つけるには－
30	予備日

史料の翻刻・講読の進捗状況によっては、担当してもらう分量を減らしたり、増やしたりする予定。

論文の講読及び史料の翻刻・講読は、担当者を決め、事前に準備をして、レジュメで報告をしていただく。翻刻データは、訂正を加え、集約する予定。なお、講読予定の史料の紙焼き写真のコピーは、配布する。
史料講読が早く終了した場合は、同じく洞院家旧蔵の禁裏本の史料を講読する。

レポート：30％（報告部分をもとに、課題を見つけ、論文になるようなレポートを書いていただきたい）

平常点（出席、クラス参加、グループ作業の成果等）：70％（正しく史料を読めるかが重要。）

レジュメの読みやすさに注意。引用史料も全て読んでいただきます。

西本昌弘「古代国家の政務と儀式」『日本史講座』２　律令国家の展開　東京大学出版会　2004年
橋本義則「外記政の成立」『平安宮成立史の研究』　塙書房　1995年
吉川真司「申文刺文考」『律令官僚制の研究』　塙書房　1998年
吉川真司「王宮と官人社会」『列島の古代史』３　社会集団と政治組織　岩波書店　2005年
田島公責任編集『週刊朝日百科　週刊新発見！日本歴史』15　平安時代３　朝日新聞出版　2013年［配布予定］
木本好信「藤原実頼の「清慎公記」逸文」『平安朝日記と記録の研究』　みつわ　1980年
田島　公「「公卿学系譜」の研究」田島公編『禁裏・公家文庫研究』３　思文閣出版　2009年［抜刷配布予定］
小倉慈司「「高松宮家伝来禁裏本」の来歴とその資料価値」国立歴史民俗博物館編『和歌と貴族の世界　うたのちから』　塙書房　2007年

電子辞書もいいですが、以下の漢字辞典・国語辞書を推奨します。
戸川芳郎監修、佐藤　進・濱口冨士雄編『全訳漢辞海【第三版】』　三省堂　2011年
藤堂明保・加納喜光編『学研新漢和大字典　普及版』 　学研教育出版　2005年
上田万年・岡田正之・栄田猛猪・飯島忠夫・飯田伝一共編『講談社新大字典』（普及版）講談社　1993年
山田俊雄・築島　裕・小林芳規・白藤禮幸編修『第二版　新潮国語辞典―現代語・古語―』　新潮社　1995年
　
単位互換制度のある早稲田大学文学学術院で、同じ日の４限に「日本史学特論５」（前期・2単位）・「日本史学特論６」（後期・2単位） を担当し、前期は宮内省図書寮編修課編・刊『後三条天皇実録』、後期は後三条天皇撰『院御書』を講読する予定ですので、更に勉強したい人は出席して下さってもかまいません。

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