応用民法1
判例の読み方・分析のしかたを訓練する―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
岡 孝 教授 2 2 第1学期 5

授業の目的・内容

主として財産法の重要判例を素材として、①判例の読み方を訓練する。特に事実関係の把握に力点を置く。②テーマによっては、(とりわけ最高裁調査官の)判例解説にも目を通してもらい、当該判例の問題点を理解し、どうあるべきかを検討してもらう。さらに、③その判例の論点およびその周辺の問題についての基礎知識の確認をおこなう。例えば、転用物訴権の検討に際しては、不当利得の類型論、給付利得(売買の取消しの事後処理などの場合)の概観、転用物訴権全面否定説の根拠などについて基礎知識を確認する。

授業計画

1 授業の進め方についての説明と事件の割り当て/無権代理の復習(表見代理との関係、117条の理解など)
2 最判平5.1.21民集47-1-265(無権代理人が本人の地位を共同相続)
3 最判昭45.9.22民集24-10-1424(94条2項類推適用)
4 最判平10.2.13民集52-1-65(未登記通行地役権の対外的効力)/最判平10.12.18民集52-9-1975(地役権者の登記請求権)
5 177条の第三者の範囲の復習
6 最判平5.10.19民集47-8-5061(請負契約と所有権)
7 添付の復習
8 最判平12.6.27民集54-5-1737(盗品の取得)
9 給付利得・侵害利得の復習
10 最判平7.9.19民集49-8-2805(転用物訴権)
11 最判昭36.12.15民集15-11-2852(不特定物売買と瑕疵担保責任)
12 不完全履行責任と売主の瑕疵担保責任の統合について(法務省の中間試案の検討)
13 最判昭56.1.19民集35-1-1(委任者の無理由解除の要件)
14 651条をめぐる判例理論の整理
15 本講義のまとめ
受講生の希望によっては、家族法の判例(1、2件程度)と差し替えることも考える。

授業方法

判例は割り当てるので、報告者は事前に準備をし、レジュメを提出すること。何度かの加除修正のやりとりをした上で、最終版を私がG-portに掲載する。他の受講生はそれをコピーして授業に臨むこと。授業は問答形式で進める。とりわけ事案(原告の主張、被告の反論、第一審判決の認定した事実と判決理由、控訴のポイント、第二審判決の認定事実と判決理由、上告理由、最高裁の判断)の整理に力を注ぐ。予習としては、必ずメモをとり、発表のさいには、そのメモに従って答えること。また、関連テーマについても事前の準備をしておくこと。予習をしてこない学生はそれだけで非常に悪い成績になることを覚悟せよ。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):80%(判例の整理の問題では、項目を細分化して採点する。)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):20%(割り当てられた報告レジュメの内容、授業での発言等がポイント)
平常点のうちの報告レジュメの内容では、図を示したり、要点が要領よくまとめられているかを主として評価の対象とする。報告のさいにはレジュメを棒読みするのではなく、レジュメに書かなかったことも適宜補って報告すること。

教科書

教材(判例のコピー)は作らない。各自コピーして授業に臨むこと。

参考文献

授業で、必要に応じてその都度紹介する。一歩進んだ勉強をしたい学生には、当該判例の最高裁調査官解説を読むことを勧めたい。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

1.予習にさいしては、かならず教材の判例を読むこと(百選などですまそうとはしないこと)。2.第2回目から座席を固定する。3.報告者の報告に異論があるとか、重要な事実を報告は落としているといったことについて、積極的な発言を希望する(平常点で加点する)。3.ここ数年、体調が悪いと称して休む学生がいる。試験の本番の時はどうするのか。体調管理も大切なことであり、入院とか通院の必要がない限り、平常点に影響があることを覚悟せよ。