美とロゴス

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
下川 潔 教授・他
2 第1学期 2

授業概要

哲学科の教員全員による輪講です。全部合わせて概論的説明になることをめざすわけではなく、それぞれの教員は、哲学思想史と美学美術史という二つの特定研究分野の専門知識と方法を十分に活かして、共通テーマに各論的かつ多角的な考察を加えます。自らが研究している時代や地域の美のあり方、あるいはロゴス (言葉、論理、説明)のあり方を踏まえ、大きなテーマの枠内で具体的な問題設定をして、各人各様にこれを論じていくわけです。これによって受講者は、専門 のいかんを問わず、大きなテーマについてただ漠然と考えるのではなく、それを具体的に特定の方法で考察することの面白さと重要性についても学ぶことになるでしょう。2015年度は、全体のテーマを「言葉」とし、哲学思想史と美学美術史の両面から、多様な取り組みを行います。 なお今年度は、全教員が参加する授業が2回あり、各教員が一人で担当する授業は1回もしくは2回となります。

到達目標

●哲学科専任教員の専門分野がどのあたりであるかを学びます。
●「言葉」と関連するいくつものテーマと複数の学問的アプローチに接することによって、自分がもっていた先入見から解放され、自らの問題関心を再認識してください。
●特に関心をもった講義については、調査し文献を読み、これを土台にして学年末課題に取り組んでください。

授業計画

1 担当教員全員によるガイダンス
2 ロゴスについて(小島和男・哲学思想史系)
 古代ギリシアにおける「ことば」について、「ロゴス」という単語から考えてみたいと思います。ロゴスには、勿論「言葉」という意味があります。ある人はミュートス(神話)と対比させたりもしますが、ミュートスも言葉で話されるものであり、その意味ではロゴスに含まれています。ではさて、私達はこの「ロゴス」という言葉をどのように整理して理解しましょうか? そもそも整理し理解できるものなのか、も考えてみたいと思います。
3 詩書画の世界(島尾新・美学美術史系)
 東アジアでは「ことば」と「かたち」とは、常に絡み合いながら展開してきました。その典型が詩書画の世界です。詩と画はテーマを共有し、また詩が書という表現手段を持つことによって、視覚的なコラボレーションも可能になります。その様相を、具体的な作品を見・読みながら、紹介したいと思います。
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5 言語と明晰な思考(下川潔・哲学思想史系)
 言葉は、しばしば思考の欠陥を隠すために使われます。言葉の濫用を避け、言葉を明晰な思考の道具として使うためには、どうしたらいいのでしょうか。このような実践的関心をもって、言葉の地位を言葉以前の「観念」(ideas)の立場から再検討します。材料は、17世紀イングランドの言語哲学から取り出します。
6 歌と絵と物語(佐野みどり・美学美術史系)
 日本の絵画には、その背後に<歌ことば>や<物語>を潜ませている作例が多く見られます。やまと絵を対象に、それらを取り上げ、イメージと言葉の関係を考えていきます。
7 かたちづくる言葉(杉山直樹・哲学思想史系)
 聖書によると神さまはこの世を言葉で創造します。無茶な話?しかし実際「言葉」というものには何かを──たとえば私たちの思考や感性を──かたちづくる独特の力が、備わっているのではないか。そんな言語観を紹介します。
8 絵と言葉(高橋裕子・美学美術史系)
 絵は「絵文字」として言葉の代わりを務めることがあります。絵に表されている主題はしばしば言葉でつづられた物語です。また、絵の中には作者の署名をはじめ、さまざまな言葉が含まれていることも珍しくありません。こうした絵と言葉の多様な関係とそこから生じる問題を具体的に見ていきます。
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10 論理とことば(酒井潔・哲学思想史系)
 論理的にものを考え、論理的にことばを語るとはいったいどのようなことでしょうか。西洋の伝統的形式論理学のなかからとくに誤謬論を取り上げ、できるだけ具体的な事例に即し、また練習問題なども織り交ぜながら考えてみたいと思います。
11 仏教における〈ことば〉(松波直弘・哲学思想史系)
 仏教には、〈ことば〉を追究する宗教という一面があります。さとりや成仏を目指すにあたって、仏たちのさとり得た内容そのものは、〈ことば〉で言い表せるものなのか。仏教が課題としてきた〈ことば〉で表明できる境界について考察していきます。
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13 担当教員全員によるコンクルージョン
14 自主研究
15 予備日

授業方法

リレー講義形式で授業を行います。初回と最後の回は担当教員全員が参加します。

準備学習

特に予習は必要ありませんが、各教員の授業に触発され関心が芽生えたときには、それを大事にして図書館へ行き、関連する文献を読み、調査に取り組むのが望ましいです。

成績評価の方法

レポート:80%(美学美術史系の授業から一つ、哲学思想史系の授業から一つのテーマを選び、二つのレポートを書いてもらいます。)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):20%
美学美術史系と哲学思想史系の二つのレポートと、平常点(出席やリアクションペーパー)を総合して評価します。

参考文献

授業時に各教員が指示します。