※哲学演習 
ジョン・ロックの『人間知性論』―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
下川 潔 教授 4 2~4 通年 3

授業概要

 昨年度に続き、ジョン:ロックの著作『人間知性論』(An Essay Concerning Human Understanding)を取り上げ、近代知識論の特質と構造を解明することにしたい。必要に応じて、ロック以前、あるいはロック以後の知識論にも言及しながら、この古典から多くを学び、かつそれに隷従することなく自由に批判的検討も加えてみたい。
 今年度は、『人間知性論』の第二巻「観念について」(Book II, 'Of Ideas')の冒頭から読み始め、ロックのいう「経験」(experience)がどのようなものであるかを学び、「単純観念」とはいかなるものかを学び、物体の性質としての「固性」や、心の働きとしての「知覚」や「記憶」についての論述を考察する。第2巻の3分の1か半分ちかくまで進むことができればよいと考えている。
 哲学史の教科書に見られるロック知識論の紹介では、しばしばタブララーサの話ばかりが出てきて「経験論」という言葉が説明ぬきで使われる。「経験」がいかなるものであるのか、そして観念、とりわけ単純観念は、どのような役割を果たすのかという問題を今年度は考え直してみたい。
 『人間知性論』は、独断や狂信を排除して、人間の身の丈にあった知識や信念を得ること、つまり適度に懐疑的でありながら、しっかりと経験に根を下ろした有益な知識と信念を確保することを目的としている。このことを念頭において、『人間知性論』の第2巻を読み、その基本主張を理解し、ときには他の哲学者の見解との対比を通じて、ロック知識論の特質と構造を解明するようにしたい。

到達目標

●近代哲学の古典的テクストを辞書を引きながら読み、意味を理解できるようにする。
●近代知識論の基本用語の意味、その問題関心を理解する。

授業計画

1 方針の説明 メインテクストと精読個所の指定
2 John Locke, An Essay Concerning Human Understanding, Book IIを読む。
3 同上
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14 第1学期の総括
15 自主研究
16 John Locke, An Essay Concerning Human Understanding, Book IIを読む。
17 同上
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29 総括と学年末課題の提示
30 自主研究

授業方法

この演習に参加する人は、必ず原典の指定した個所を予習してきてほしい、必要に応じて、特定の人に調査と発表を依頼する。そのときには時間をかけて準備し、レジュメを作成して発表をおこなうこと。

準備学習

●毎回の演習の前に、自宅で時間をかけてテクストの予習をする。
●毎回の演習の後に、原文を読み直し、理解を定着させる。
●発表をするときには、周到に準備し、レジュメを作成する。

成績評価の方法

レポート:50%(学年末論文)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):50%
平常点(出席、予習、討論への貢献、調査、発表を重視)と学年末論文の両者を総合して評価する。
※学部生が履修した場合は学部相当の基準で成績を評価し、大学院生が履修した場合には博士前期課程と博士後期課程、それぞれの基準で成績評価を行う。

教科書

John Locke, abridged and edited by Kenneth Winkler , An Essay Concerning Human Understanding, Hackett
この演習に参加したい人は、安価で良質なKenneth Winkler編のAn Essay Concerning Human Understanding (Hackett)をあらかじめ購入しておいてください。