※日本史特殊研究
平安時代の儀式・政務の研究―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
田島 公 講師 4 3~4 通年 3

授業概要

 平安時代の理解を深める上では、平安期の古記録(日記)・儀式書を読む力を高め、当時の制度や故実を理解することが肝要である。王朝文学の影響もあって、平安貴族は、詩歌管絃など遊興の耽るイメージがあるが、近年の研究によって、日々、政務や業務に従事していたことが判明しつつある。平安期の研究で難解なのは、平安宮内の諸司や五畿七道諸国から進められる文書(上申文書)が、どのように整理・確認、決裁・審議されるかなど、朝廷で行われていた政務に関してである。こうした難解な史料を読み解くため、今年度は、昨年度に引き続き、10世紀前半に外記庁(太政官候庁)で行われる外記政の模様を伝える、『洞院家廿巻部類』等に収められた「外記政」(洞院家旧蔵本「外記政」)を、東山御文庫本『外記政』(東山御文庫勅封45-22)を底本に翻刻・講読しながら、外記政の儀式次第や引用される小野宮流の藤原実頼の日記『清慎公記』逸文を読み解くことにより、儀式書や日記の読み方を習得し、平安期の政務に関して理解を深める。また、並行して、醍醐天皇と村上天皇の日記から事項ごとに類聚した『延喜・天暦御記抄』を陽明文庫所蔵本の高精細デジタル画像で確認しつつ、読み進め、10世紀前半から中葉の政治・社会・文化について理解を深める。

到達目標

 平安時代の漢文史料を一人で読み解くための、漢文の正しい読み方、変体漢文の知識を習得できるようになる。
 平安時代をテーマに修士論文が書けるるように、研究状況や研究のための便利な工具(ツール)とデータ・ベースを使いこなせるようになる。
 平安時代の史料の伝存状況を理解し、古写本本や新写本の使い方を学び、史料の正しい本文(テキスト)を提示し、史料解釈できるようになる。

授業計画

1 ガイダンス:昨年度の授業のまとめと平安時代研究の工具の紹介・解説
2 講義:東山御文庫本『外記政』の性格とその伝来
        -洞院家旧蔵本と禁裏文庫-
3 講義:『延喜・天暦御記抄』について
4 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その1
5 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その1
6 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その2
7 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その2
8 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その3
9 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その3
10 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その4
11 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その4
12 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その5
13 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その5
14 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その6
15 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その6
16 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その7
17 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その7
18 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その8
19 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その8
20 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その9
21 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その9
22 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その10
23 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その10
24 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その11
25 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その11
26 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』その12
27 史料講読:『延喜・天暦御記抄』その12
28 史料翻刻・講読:東山御文庫本『外記政』まとめ
29 史料講読:『延喜・天暦御記抄』まとめ
30 予備日
史料の翻刻・購読は東山御文庫本『外記政』と『延喜・天暦御記抄』とで、原則、1週間おきに交互に行うが、進捗状況や報告者の準備状況により、一方を2週間続けて行う場合がある。

授業方法

史料の翻刻・講読は、担当者を決め、事前に準備をして、レジュメで報告をしていただく。翻刻データは、訂正を加え、集約する予定。なお、講読予定の史料の紙焼き写真のコピーや論文は、配布する。
東山御文庫本『外記政』の報告者は、『西宮記』『北山抄』『江家次第』の「外記政」関係との比較などをして、本文の確定をしてきてください。。

準備学習

東山御文庫本『外記政』は昨年度の続きをするので、本年度から参加する受講者は、昨年度の受講者が報告したレジュメを事前に入手しておくこと。
東山御文庫本『外記政』の史料翻刻・購読は、報告者以外の受講者は、復習を必ずしてほしい(確定された本文の他、引用された史料を読み直してください(約30分)
陽明文庫所蔵『延喜・天暦御記抄』は報告しない者も、事前に漢字辞書を引くなどして、テキストを読んでおくこと(約1時間)

成績評価の方法

レポート:30%(報告をもとに何か研究テーマを設定し、研究論文に繋がるようなテーマでの報告を期待する。)
小テスト:10%(正統な漢文や変体漢文が正しく読めているか。)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):60%(テキスト本文のみならず、レジュメに引用した史料も含め、正しい漢文が読めるか。)
平安時代の史料を読み解くには、多読と精読の繰り返しである。本文の内容を理解するために、声に出してテニヲハに気を付け、考えながら史料を読んでいるか、平常点では史料の読みを重視する。。
学部生は学部科目の基準で成績を評価する。

参考文献

吉川真司『律令官僚制の研究』、塙書房1998年、ISBN=4827311501
橋本義則『平安宮成立史の研究』、塙書房1995年、ISBN=482731134X
西本昌弘『日本古代の王宮と儀礼』、塙書房2008年、ISBN=9784827312201
西本昌弘『日本古代の年中行事書と新史料』、吉川弘文館2012年、ISBN=9784642024891
田島公『週刊新発見!日本歴史15 平安時代3 』(週刊朝日百科)、朝日新聞社2013
田島公『禁裏・公家文庫研究 3』、思文閣出版2009年、ISBN=4784211438
翻刻としては、以下のものがある。
木本好信「藤原実頼の「清慎公記」逸文」(『平安朝日記と記録の研究』 みつわ 1980年)
所 功「延喜天暦御記抄(補遺・覚書)」(『國書逸文研究』第八号 1982年)
所 功編『三代御記逸文集成』 国書刊行会 1982年

その他

電子辞書もいいですが、以下の漢字辞典・国語辞書を推奨します。
戸川芳郎監修、佐藤 進・濱口冨士雄編『全訳漢辞海【第三版】』 三省堂 2011年
藤堂明保・加納喜光編『学研新漢和大字典 普及版』  学研教育出版 2005年
上田万年・岡田正之・栄田猛猪・飯島忠夫・飯田伝一共編『講談社新大字典』(普及版)講談社 1993年
山田俊雄・築島 裕・小林芳規・白藤禮幸編修『第二版 新潮国語辞典―現代語・古語―』 新潮社 1995年