グローバル・マネジメントⅡ
新興国企業論:途上国側からの視点―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
渡邉 真理子 教授 2 3~4 第2学期 3

授業概要

本講義では、企業の戦略が、産業の発展、経済の発展に結びつくのか、という視点を得ることを目的とする。具体的には、次のような内容を学習していく。まず、開発経済学の文献を中心に、経済発展に産業の発展がどのような役割を果たしたと考えられるのか、どのような要因が産業と経済の発展に貢献したのか、これまでの分析を紹介していく。さらに、企業が発展途上国の発展にどのように貢献できると考えられているのか、そうした考え方の変遷を紹介する。そのあと、具体的な発展途上国の産業の発展の経験をケーススタディおよび分析をもとに紹介していく。

到達目標

発展途上国の経済成長にとって不可欠な産業の発展と経営戦略、企業経済学と結びつけて理解できるようにする。これにより、新興国ビジネスを発展途上国の成長戦略の中に位置づける視点を得られるようになる。

授業計画

1 イントロダクション 開発経済学における産業発展の再検討と企業戦略への注目 BOPからCSV、破壊的イノベーション論へ
2 第I部 マクロの視座:GDPと生産性を引き上げる
経済成長: 経済成長とはなにか 経済成長は当たり前か
3 構造転換: 経済発展とは、質的な転換をもたらす構造転換をともなった経済成長を指す。 ルイスモデル:農業から工業へ ハリス・トダロモデル:農村から都市へ 大家族から個人へ
4 貧困の罠:マクロの罠 低所得の罠
5 開発戦略の変質:政府とODAによる開発の時代 輸入代替工業化から輸出工業化 計画経済 産業政策  
6 第2部 ミクロの視座:取引の利益を拡大
途上国ビジネスの経営戦略:BOP論 ポーターのCSR論、クリステンセンの破壊的イノベーション論 カナ&パルプの制度の欠如論 途上国でのビジネスモデル構築
7 いちばの果たす役割(1): 取引の利益といちば 中国の経済発展概観 取引プラットフォームと技術プラットフォーム
8 いちばの果たす役割(2): いちばと産業発展の事例 ケニアの空飛ぶバラ 古着市場
9 技術の伝播(1):新規参入を可能にする要因としての技術 技術移転のチャネル
10 技術の伝播(2):先進技術がどのように途上国に伝わるか  グラミンフォンの事例
11 外部性をコントロールする(1):他人の行動が自分たちの取引に影響する 負の外部性 コモンズの悲劇
12 外部性をコントロールする(2):特許の悲劇
13 外部性を利用する:正の外部性を取り入れる企業戦略 プラットフォームをつくる
14 イノベーションの手法による開発戦略 「人々の行動・習慣・価値観を不可逆的に変化させるもの」としてのイノベーション 事例:MITイノベーションラボ 
15 総括:開発の問題をビジネスで解決するときの考え方

授業方法

講義を中心に行う。途中での討論の前に簡単なレポートの提出を求めることもある。

準備学習

授業中に指示する

成績評価の方法

レポート:40%
小テスト:40%
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):20%
出席状況、報告内容、討論なども考慮し総合的に評価する。

教科書

ジェトロ・アジア経済研究所『テキストブック開発経済学』、有斐閣2003
ジョン・マクミラン『市場を創る』、NTT出版ISBN=9784757421270
カナ & パレル『新興国マーケット進出戦略』、日本経済新聞出版ISBN=9784532317768

参考文献

バナジー・デュフロ『貧乏人の経済学』、みすず書房2012年、ISBN=9784622076513

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。