哲学史
20世紀中後期の哲学―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
酒井 潔 教授 4 1~4 通年 2

授業概要

この授業が担当するのは、15世紀から今日にいたる西洋近現代哲学史である。これを、第一部から第四部に分け、全部で四年間かけて講じ、なし得るかぎり具体的でかつ活き活きした哲学史を描きたいと考えている。今年度はその第四部として、20世紀中後期の哲学を扱う。具体的には、実存主義の哲学(サルトル、ヤスパース)から初めて、分析哲学(フレーゲ、ラッセル、ヴィットゲンシュタイン)、アメリカの哲学(ジェイムズ、デユーイ)、ガダマーの解釈学、構造主義、フランス思想の諸潮流(バタイユ、フーコー、レヴィナス、ドゥルーズ、デリダ)、フランクフルト学派(ホルクハイマー、アドルノ、ベンヤミン、ハーバーマス)、正義論(ロールズ)、共同体論(サンデル)、生命倫理学などを取り上げる予定である。
なお、2016年度は、再び第一部に戻って、15世紀ルネサンスのニコラウス・クザーヌスから始めることになる。

到達目標

20世紀中後期の主要な哲学思想について必要な哲学史的事項を習得し、かつ正確な理解を獲得し、そしてそのことを通じて、現代の人間・自然・社会において生じているさまざまな問題について自らの力で批判的に考え得るようになることを目指す。

授業計画

1 授業の方針、年間授業計画、受講上の注意、イントロダクション(1:「哲学史」とは何か、2:昨年度の内容(キルケゴールからメルロ=ポンティまで)、3:今年度扱う20世紀中後期哲学史の概観)
2 Ⅰ実存主義の哲学と文学(1)サルトル『存在と無』(1943)―「即自」と「対自」をめぐって
3 (2)サルトル『嘔吐』(1938)―存在の無意味、あるいは「自由」ということ
4 (3)カミュ『異邦人』(1942)、およびカフカ『変身』(1915)とは何か
5 (4)ヤスパースの実存哲学ー「実存開明」、「限界状況」、「包括者」、「暗号解読」
6 (5)ヤスパースの歴史哲学―『現代の精神的状況』(1931 ),『歴史の起源と目標』(1949)
7 Ⅱ分析哲学(1)分析哲学とは何か-フレーゲ(「宵の明星」=「明けの明星」)とラッセル(記述理論)
8 (2)ヴィットゲンシュタインの言語哲学
9 (3)ヴィットゲンシュタイン『論理哲学論考』(1922)を読む。
10 Ⅲアメリカの哲学(1)ジェイムズの「純粋経験」
11 (2)デューイのプラグマティズム
12 Ⅳガダマーの解釈学-私たちが古典テクストを読み、解釈するとはどのようなことか(『真理と方法』(1960))
13 Ⅴ「構造」とは何か(1)-レヴィ=ストロースの「構造」、ルーマンの「システム」
14 (2)ロムバッハにおけるフライブルク現象学の展開-「構造存在論」、「形象哲学」、「ヘルメティーク」
15 第1学期の復習と第2学期への展望
16 Ⅵ 20世紀中後期のフランス哲学思想(1)概観:「ポスト・モダン」とはどのようなことか
17 (2)バタイユ:「聖なるもの」、「供儀」、「エロティシズム」、「消尽」
18 (3)フーコー:『狂気の歴史』(1961):「理性」の他者としての「狂気」
19 (4)レヴィナス:『全体性と無現』:「顔」(visage)と「他者」、「女性」
20 (5)デリダ:「二項対立」・「ロゴス中心主義」・「ヨーロッパ中心主義」への批判から「脱構築」へ
21 Ⅶフランクフルト学派(1)ホルクハイマー:『啓蒙の弁証法』(1947):近代の「道具的理性」に対する批判
22 (2)アドルノの美学-「美的感覚」、「芸術作品」、「美と醜」、「モナド」
23 (3)アドルノの「否定弁証法」-なぜヘーゲルの弁証法に反対するのか
24 (4)ベンヤミンの「パサージュ論」-近現代都市の光と影(19世紀から20世紀における都市パリの変遷と歴史)
25 (5)ハーバーマス:「コミュニケーション理性」-それでも「理性」の可能性を求めて
26 Ⅷ 現代正義論の系譜(1)ロールズ対ノージック論争(ロールズ『正義論』1971再考)、リベラリズムの諸流派
27 (2)リベラル対コミュニタリアン論争-「個人」とは何か、個人と国家
28 (3)サンデル:『リベラリズムと正義の限界』(1982)、共同体論とは何か、コミュタリアニズムの諸流派
29 Ⅸ生命倫理学(1)パーソン論(人格論)を手掛かりに
30 (2)臓器移植と身体論-クローン、生殖技術、遺伝子治療
(医療技術と自由主義)
受講生の理解度や関心の傾向を見ながら、授業計画の一部を変更する可能性がある。

授業方法

講義ノートに基づく講義形式。毎回プリントを用意する。適宜パワーポイントによって、図版、写真、地図などを示し、かつそのつどの鍵概念やキーセンテンスなども明示して、理解の一層の助けとしたい。

準備学習

できれば事前に、各自で、参考書や事典などにより、少なくとも個々の哲学者のその人と思想のアウトラインについて調べておいてほしい。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):50%(哲学史的事項が習得できているか)
第2学期(学年末試験):50%(哲学的思考を理解し、自分の論述を展開できるか)
第1学期と第2学期の試験の結果を総合して評価する。

教科書

授業の教科書はとくに使用しないが、各自の自習の際に参考になると思われるいくつかの本について、それぞれの特徴等もあわせて第1回の授業時に紹介する。

参考文献

野田又夫『西洋哲学史-ルネサンスから現代まで』、ミネルヴァ書房1965
岡崎文明他『西洋哲学史-理性の運命と可能性』第2版、昭和堂2002
三宅剛一『哲学概論』、弘文堂1976
熊野純彦『西洋哲学史ー近代から現代へ』(岩波新書)、岩波書店2006
高坂正顕『西洋哲学史』、創文社1971
酒井潔『自我の哲学史』(講談社現代新書)、講談社2005
それ以外の文献についても、そのつど教室で指示し、かつ文献リストをプリントにして配布する、そして参考の仕方等について適宜必要な説明を行う。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。