美術史講義
ミケランジェロを通してみる盛期ルネサンス―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
高橋 朋子 講師 4 2~4 通年 3

授業概要

 15世紀の末、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロがフィレンツェで出会い接近する。それはほんの一時ではあったが、美術史的にはその後の美術の流れ、すなわち初期ルネサンス様式から盛期ルネサンス様式へと美術傾向が大きく方向転換する折り目となった。そしてレオナルド、ミケランジェロ、ラファエロといった巨匠の力によってルネサンス様式はひとつの頂点に達する。一方同じ頃ヴェネツィアでは、ティツィアーノを中心にフィレンツェの様式に対抗し、新たな絵画様式を成立させる。本年度の講義ではこうした美術の展開をミケランジェロという巨星を主役にして、ミケランジェロとの関わりからレオナルド、ラファエロ、ティツィアーノを中心に16世紀初頭の美術を考察します。

到達目標

本年度の講義の目標は、美術史的な区分では盛期ルネサンスからマニエリスムと呼ばれる時期の美術の様式の特色と展開を理解することです。また同時に、そうした様式を支えている時代背景、政治状況なども絡めて考察し、この時代の美術が何を目指したのかを考え、またこうした美術を成立させた文化的背景を検討することで、中央イタリア(ローマ、フィレンツェ)対ヴェネツィアといった16世紀イタリア美術の基本構造を理解することを目的とします。

授業計画

1 導入 盛期ルネサンスとは -ヴァザーリの『美術家列伝』解説-
2 レオナルド・ダ・ヴィンチ(1) -フィレンツェからミラノへ-
3 レオナルド・ダ・ヴィンチ(2) -ミラノ時代のレオナルド、「絵画」と「詩」(言葉)のパラゴーネ(「優劣比較論争」)-
4 ミケランジェロ -15世紀末のミケランジェロ-
5 フィレンツェに戻ったレオナルドとミケランジェロ、ラファエロ
6 ミケランジェロとレオナルド
-ダヴィデとアンギアリの戦い、カッシーナの戦い-
7 若きラファエロ
8 フィレンツェ時代のラファエロ
9 ユリウス2世のヴァチカン刷新
10 ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井装飾(1)
11 ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井装飾(2)
12 ローマでのミケランジェロとラファエロ
-ヴァチカンでの確執-
13 ラファエロとミケランジェロとセバスティアーノ・デル・ピオンボ
14 理解度の確認
15 予備日
16 美術論争と画家、「絵画」と「彫刻」のパラゴーネ 
  -15世紀末の場合-
17 若きティツィアーノとミケランジェロ
18 ティツィアーノとフェッラーラ
-アルフォンソのカメリーノ装飾-(1)
19 ティツィアーノとフェッラーラ
-アルフォンソのカメリーノ装飾-(2)
20 ミケランジェロと神話画
21 ミケランジェロ対ティツィアーノ(1)
22 ミケランジェロ対ティツィアーノ(2)
23 ミケランジェロとメディチ家の確執
24 ミケランジェロとバッチョ・バンディネッリ
25 中央イタリア対ヴェネツィア(1)
-ヴェネツィアのマニエリスム-
26 中央イタリア対ヴェネツィア(2)
-ティツィアーノのマニエリスム危機-
27 美術論争と画家、「絵画」と「彫刻」のパラゴーネ
  -16世紀半ばの場合-
28 中央イタリア対ヴェネツィア(3)
-コジモ大公の美術政策とヴァザーリ-
29 授業の総括
30 予備日
今年のテーマである盛期ルネサンスの芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツィアーノを講義します。実際講義を始めた時点で計画の順番が入れ替わることもあります。また内容によっては一回で終わらない場合も予想されます。その結果計画がすべて消化できないことも重々考えられることを断わっておきます。

授業方法

授業はパワーポイントを使用して進めます。また板書はしません。その代り各テーマごとに簡単に内容をまとめたプリントを毎回配布します。なおそのプリントには、講義で取り上げた作品は必ずすべてリストアップします。

準備学習

美術館を訪問し、作品に接しておくこと。また常に美術展に関心を持ち見に行くこと。
美術全集などを見ることも習慣としてください。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):50%(試験の成績のみ)
第2学期(学年末試験):50%(試験の成績のみ)
各学期末の試験、合計2回の成績で評価します。試験は客観問題3割、あとは論述問題で構成します。授業中に配付したプリントと自筆のノートのみ持ち込み可。ただしノートに図版のコピーを貼ることは厳禁です。

参考文献

本年度の講義全般の参考文献に関しては、第1回目に参考文献一覧を配布します。また特化した内容に関しては毎回配布するプリントにて指示します。