文学・文化 講義(6)
近代ドイツ市民社会の音楽文化史―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
玉川 裕子 講師 2 1~4 第2学期 2

授業概要

 今日いわゆるクラシック音楽の世界でもっともしばしば耳にするのは、18世紀から19世紀にかけての時代に生み出された作品である。この時代のドイツの作曲家の名前は、バッハからベートーヴェン、ブラームスにいたるまで、クラシック音楽に特別の関心を抱いていない人でもおなじみだろう。
 ところで、これら有名作曲家のリストにはなぜ男性ばかり登場するのだろう? 女性は音楽とは無縁な存在だったのだろうか。いや、そんなことはない。それどころか、19世紀市民社会において、音楽は女性にも必須の教養とされていた。
 本講義では、従来の音楽史ではなかなか見えてこなかった女性の音楽実践に光を当ててみる。ジェンダー視点から音楽文化史を読み直してみることは、しかし女性たちの豊かな音楽活動の一端を明らかにするにとどまらない。有名男性作曲家とその作品だけをとりあげた場合には見えてこなかった、ドイツ市民社会における音楽文化の多様性や多義性が浮かび上がってくるだろう。同時にまた、なぜ彼女たちの活動がこれまで可視化されてこなかったのか、それどころか、そもそもなぜ音楽の歴史が少数の有名男性作曲家とその作品を中心に語られてきたのか、についても考えてみたい。
 授業は講義が中心である。また、内容に関連する音楽を毎回聴いてもらう予定である。ときには聴いた音楽や講義の内容について、コメントを書いてもらう。

到達目標

音楽に関する知識を得るばかりでなく、それ以上に音楽が、さらには文化というものがわれわれにとってどういう意味を持ちうるかについて、考えをめぐらすことができるようになる。

授業計画

1 ドイツ近代市民社会と音楽
2 音楽とジェンダー
3 メンデルスゾーン家の場合(1)姉と弟の生涯
4 メンデルスゾーン家の場合(2)ライプツィヒのフェリックス・メンデルスゾーン
5 メンデルスゾーン家の場合(3)自邸における音楽実践
6 メンデルスゾーン家の場合(4)日曜音楽会
7 シューマン夫妻の場合(1)妻と夫の生涯
8 シューマン夫妻の場合(2)神童クララ・ヴィーク
9 シューマン夫妻の場合(3)女性職業音楽家と結婚生活
10 シューマン夫妻の場合(4)ピアニスト、クララ・シューマン
11 シューマン夫妻と仲間たち
12 ピアノを奏でる良家の子女
13 楽器と女性
14 授業のまとめ
15 自主研究

授業方法

講義形式

準備学習

授業で提示した参考文献を読むこと。

成績評価の方法

レポート:65%(レポートとしての形式が整っていること。内容について理解していること。内容理解に基づいて、自らの見解を表明していること。)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):15%(出席)
授業中、もしくは宿題として課すコメント:20%(講義やテキストの内容をしっかり理解していること。自らの見解を表明していること。)
5回以上欠席した者には、原則としてレポートの提出を認めない。

参考文献

フライア・ホフマン『楽器と身体――市民社会における女性の音楽活動』、春秋社2004
山下剛『もう一人のメンデルスゾーン――ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルの生涯』、未知谷2006
モニカ・シュテークマン『クララ・シューマン』、春秋社2014
吉成順『〈クラシック〉と〈ポピュラー〉――公開演奏会と近代音楽文化の成立』、アルテスパブリッシング2014