日本語教育論Ⅰ

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
森沢 小百合 講師 2 1 第2学期 2

授業概要

日本語を母語としない児童に対する日本語教育の理念と実践についての理解を深めることをねらいとする授業科目である。近年外国から移住する人々の増加に伴い日本語がわからない児童が小学校に入学・編入する事例が増加していることから、今後教員になるものには不可欠の知見と考えている。具体的には「小学校における日本語教育の重要性と社会的要請」「日本語教育の基本的な考え方」「小学校における日本語教育の具体的なあり方」等について実技・演習を交えて扱う。

到達目標

1.幼少期より複数言語環境で成長する子どもが増えている現代社会の現状を理解すること
2.子どもが複数の言語を学びながら成長するとき、どのような課題に遭遇するかを理解すること
3.複数言語環境で成長する子どものことばの学びの支援について理解すること
4.複数言語を学びながら成長する子どものアイデンティティ形成について、理解すること
5.以上を踏まえて21世紀の人としてのあり方と社会のあり方について考えること

授業計画

1 オリエンテーション
移動する時代と子どもたち
2 日本で日本語を学ぶ子どもたち:日本の学校で第二言語として日本語を学ぶ子どもたちの様子と、直面する課題について考える
3 ことばの学びとことばの力:子どもたちが複数言語環境で日本語を学ぶことについてバイリンガル理論から探る
4 ことばとアイデンティティ:幼少期より複数言語環境で成長する子どもは、自分のことをどのように考えるのか
5 子どもの日本語教育の観点-①:JSLの子どもたちを対象にした日本語指導はどのような観点から行われるべきなのか「個別化」「文脈化」「統合化」
6 子どもの日本語教育の観点-②:子どもたちの言語能力をどう捉えるか「JSLバンドスケール」
7 ことばの学びを支える「教材」
8 子どもの日本語教育実践活動を考える-①:「実践活動を組み立てる(グループ活動)」
9 子どもの日本語教育実践活動を考える-②:「実践活動の発表」
10 子どもの日本語教育実践活動を考える-③:「実践活動の発表」
11 子どもの日本語教育に関するテキストから考える:『JSLカリキュラムの授業作り』
12 複数言語環境で育った子どもたちの語り-①:ライフストーリーを解釈する
13 複数言語環境で育った子どもたちの語り-②:ライフストーリーを解釈する
14 総括
子どもの日本語教育における「支援」と「連携」:「鈴鹿市における取り組み」
15 予備日

授業方法

本授業では、子どもが幼少期より複数言語に触れるとどのような状況に遭遇するのか、突然国境を越えて移動した子どもの場合どのように新しい言語を学ぶのか、またそのような複数言語環境で成長した子どもが青年期から大人になるときに複数言語を話す自分とどう向き合い、アイデンティティを形成していくのかなどについて考える。
毎回の授業で出されるいくつかの問いについてグループディスカッションを重ねていく中で、各テーマに対する理解を深めていく。教員からの一方方向での講義形式ではなく、テーマについて自らの問題として考え発信する能力が必要とされる。

準備学習

事前に教科書の該当箇所を読んでおくこと

成績評価の方法

レポート:70%(小レポート40%(20%×2回)期末レポート30%)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):30%(出席10%参加度20%(コメントシート))
授業終了時にコメントシートに感想や質問を書いて提出、それが出席点となり、その問いに適切に答えられているかをクラス参加度として評価する。
欠席が全授業の3割を超えた場合には、失格となる。

教科書

川上郁雄・尾関史・太田裕子『日本語を学ぶ 複言語で育つ-子どものことばを考えるワークブック-』、くろしお出版2014年、ISBN=9784874246351
その他、適宜プリントを配布する

参考文献

川上郁雄『「移動する子どもたち」のことばの教育学』初版、くろしお出版2011年、ISBN=9784874245118
川上郁雄『「移動する子どもたち」と日本語教育―日本語を母語としない子どもへのことばの教育を考える―』初版、明石書店2006年、ISBN=9784750324173
川上郁雄『「移動する子どもたち」の考える力とリテラシー―主体性の年少者日本語教育学―』初版、明石書店2009年、ISBN=9784750329161
川上郁雄『海の向こうの「移動する子どもたち」と日本語教育―動態性の年少者日本語教育学―』初版、明石書店2009年、ISBN=9784750330617
川上郁雄『私も「移動する子どもだった―異なる言語間で育った子どもたちのライフストーリー―』初版、くろしお出版2010年、ISBN=9784874244746

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。