心理学演習1
視知覚 古典を読む―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
今井 久登 教授 4 D/M 通年 3

授業概要

本年度は,現代の視覚認知研究においてもはや古典と言って差し支えないであろう以下の2冊,
 ・デビッド・マーの「ビジョン —視覚の計算理論と脳内表現—」(1987年;原書は1982年)
 ・ジェームズ・J・ギブソンの「生態学的視覚論 —ヒトの知覚世界を探る—」(1985年;原書は1979年)
を取り上げ,講読する。
 
知覚・認知心理学における根源的問題のひとつ「わたしたちは外界をどう捉えているか」は,心理学における基礎中の基礎とも言うべき問題であり,あらゆる心理学の領域にも通じる問題である。
 
本年度の題材として選定した上記2冊は,「計算論的アプローチ」と「生態学的アプローチ」という視知覚研究を代表する二大アプローチにおける原点とも言うべき書物である。この2冊の輪読を通じて,心理学の基礎的問題に対して真正面から向き合い,学生・担当教員の区別なく,本演習への参加者全員で再考する機会としたい。

到達目標

・古典を読むことの重要性を知る。「温故知新」の真の意味を知る。
・文献の講読を通じ,「わたしたちは外界をどう捉えているか」という問題に対して,論理的で根拠に基づいた各自の答え,あるいは洞察を得る。

授業計画

1 (第1学期) 顔合わせ 自己紹介と担当決め
2 (第1学期) 「ビジョン」第1章「思想と方法」
3 (第1学期)        〃
4 (第1学期) 「ビジョン」第2章「画像の表現」
5 (第1学期)        〃
6 (第1学期) 「ビジョン」第3章「画像から表面へ」
7 (第1学期)        〃
8 (第1学期) 「ビジョン」第4章「可視表面の直接表現」
9 (第1学期)        〃
10 (第1学期) 「ビジョン」第5章「認識のための形状表現」
11 (第1学期)        〃
12 (第1学期) 「ビジョン」第6章「摘要」
13 (第1学期)        〃
14 (第1学期) 「ビジョン」第7章「本アプローチに対する弁護」
15 (第1学期)        〃
16 (第2学期) 「生態学的視覚論」第1章「動物と環境」・第2章「媒質,物質,面」
17 (第2学期)     〃    第3章「生活体にとって意味のある環境」
18 (第2学期)     〃    第4章「刺激作用と刺激情報との関係」
19 (第2学期)     〃    第5章「包囲光配列」
20 (第2学期)     〃    第6章「事象と事象を知覚するための情報」
21 (第2学期)     〃    第7章「自己ー知覚に関する光学的情報」
22 (第2学期)     〃    第8章「アフォーダンスの理論」
23 (第2学期)     〃    第9章「直接知覚の実験的証拠 —持続する配置—」
24 (第2学期)     〃    第10章「外界の動きおよび自己の運動の知覚に関する諸実験」
25 (第2学期)     〃    第11章「遮蔽縁の発見とその知覚上の意味」
26 (第2学期)     〃    第12章「頭と眼で見ること」
27 (第2学期)     〃    第13章「移動と操作」
28 (第2学期)     〃    第14章「情報抽出理論とその帰結」
29 (第2学期)     〃    第15章「絵画・写真と視覚的経験」
30 (第2学期)     〃    第16章「映画と視覚的経験」

授業方法

文献の輪読を演習形式で行う。担当を章ごと(あるいは適切な分量ごと)に受け持ち,担当者はレポーターとして,レジュメを作成の上,内容を報告する。その報告に基づき,必要に応じて全員で議論する。

準備学習

毎回,講読文献のその回で扱う該当箇所を事前に読んだ上で演習に臨むこと。

成績評価の方法

平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):50%(出席状況・議論への参加具合や貢献度)
レポーターとしてのパフォーマンス:50%(担当箇所の理解度・報告のわかりやすさ・レジュメの出来)
 
上記を総合的に評価する。
欠席を前提としないので,万が一の欠席の際は,あらかじめ理由とともに必ず連絡すること。
博士後期課程学生については博士後期課程科目の基準で、博士前期課程学生については博士前期課程科目の基準で成績を評価する。

教科書

① デビッド・マー『ビジョン —視覚の計算理論と脳内表現—』、産業図書1987
② ジェームズ・J・ギブソン『生態学的視覚論 —ヒトの知覚世界を探る—』、サイエンス社1985

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

・授業内容の項に示した通りの進行を心がけたいと思うが,講読文献の内容はいずれも決して簡便でないので,進捗が前後することがやむを得ず発生することがあるだろうと思う。あらかじめご了承願いたい。
 
・昨今,古典というと,単に「古くさい」「役立たない」「つまらない」と受け止める向きも散見されるが,現代においても生き残り,読み継がれている文献は,どれも普遍的で重要な問題を論じている。本演習への参加を通じて,古典を読む/読み直すことにより先駆者たちの思考に直に触れられる,そのおもしろさを感じてもらえたら嬉しい。