※舞台芸術文化論演習
身体のイデオロギーとしての演技論 古代ギリシア・ローマの演技論―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
横山 義志 講師 4 D/M 通年 4

授業概要

演技とは何か。何を、どう演じるべきか。
今、テレビドラマを見ていて、俳優が台詞の途中から歌い出したり踊り出したりすることはまずない。だが、このような歌と踊りを排除した演技形式は、それほど歴史が古いものではない。
本講では、西洋近代社会において、なぜ「歌い踊らない演技」というものが発生したのかを考えていく。そのために西洋における演技論の歴史をひもといていこう。
 
昨年度は現代から近代までざっと遡ったあと、プラトンに至るまでの古代ギリシアの演技論を概観した。今年度はアリストテレスから古代ローマまでの演技論を読んでいきたい。これらは近代演技論の成立に決定的な役割を果たしている。
 
演技論史という分野は比較的新しく、そこにはまだ明瞭な海図が描かれているわけではない。
時には現代の舞台・映像作品も紹介しながら、履修者の助けもお借りしながら進めていきたい。

到達目標

「演技」という概念の歴史的変遷を知り、「演技」する身体の表象を分析するためのツールを手に入れ、使いこなせるようにする。
常識の疑い方を身につける。

授業計画

1 演技論とは何か/古代演技論とは何か
2 ギリシア文字の読み方/古代ギリシアにおける演技の概念
3 プラトンからアリストテレスへ(1)
4 プラトンからアリストテレスへ(2)
5 アリストテレスの演技論(1)
6 アリストテレスの演技論(2)
7 アリストテレスの演技論(3)
8 アリストテレスの演技論(4)
9 アリストテレスの演技論(5)
10 キュニコス派・初期ストア派の演技論(1)
11 キュニコス派・初期ストア派の演技論(2)
12 キュニコス派・初期ストア派の演技論(3)
13 キュニコス派・初期ストア派の演技論(4)
14 一学期のまとめ
15 予備日
16 中期ストア派の演技論(1)
17 中期ストア派の演技論(2)
18 中期ストア派の演技論(3)
19 中期ストア派の演技論(4) 
20 中期ストア派の演技論(5)
21 中期ストア派の演技論(6)
22 ローマ弁論術における演技論(1) 
23 ローマ弁論術における演技論(2)
24 ローマ弁論術における演技論(3) 
25 ローマ弁論術における演技論(4) 
26 ローマ弁論術における演技論(5) 
27 発表(1)
28 発表(2)
29 まとめ
30 予備日
参加者の数に応じて、発表の回を増減します。

授業方法

講義・討議・発表。
 
授業中の発言も含め、履修者の積極的な参加を期待しています。身体の表象をめぐる普遍的な問題を扱うので、どんな分野の方でも歓迎です。昨年度の授業内容は前提としません(もちろん昨年度からの継続受講も歓迎です)。
 
基本的に大学院生対象の授業ですが、積極的にご参加いただける方であれば、学部の方も歓迎いたします。
 
ギリシア語・ラテン語の知識は必要としません(一応ギリシア文字の読み方だけは確認する時間をつくろうと思います)。もちろん古典語ができる方も歓迎です。
 
また、講師は劇場で働いているので、演劇・舞台の話をしたい方も歓迎です。

準備学習

ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』プラトン伝、第三巻3〜18(岩波文庫では上巻)、アリストテレス『詩学』第二六章、『弁論術』第三巻第一章を読んでおいてください。(どれも30分もかかりません。)

成績評価の方法

レポート:30%((前期末)授業の理解度、選んだ主題の興味深さ、説得力)
平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):30%(出席・議論への参加)
発表:40%((年度末)授業の理解度、選んだ主題の興味深さ、説得力)
前期末に簡単なレポートを提出していただき、後期にはそれをもとに発表をしていただきます。テーマは古代でなくても、「演技」に関することであればかまいません。同じ話を繰り返さなくてもよいように、出席も重視します。
博士前期課程の学生と博士後期課程の学生は、それぞれ別の基準で評価する。
学部学生は、学部科目の基準で評価する。

参考文献

授業で取り上げるであろうテクストのうち、日本語で手に入りやすいもののみ挙げておきます。
 
プラトン『国家』『法律』(岩波文庫)
アリストテレース『詩学』/ホラーティウス『詩論』(岩波文庫):基礎中の基礎。演技についてはまず『詩学』二六章に目を通してから、どうしてそのような話になるのか、考えながら全体を読んでみてください。
アリストテレス『弁論術』(岩波文庫)
ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』(岩波文庫):これは楽しい本なので、ぜひ拾い読みしてみてください。使いこなすのは大変ですが・・・。
キケロー『弁論家について(上・下)』(岩波文庫)

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

全体の基礎となる議論をするので、第1回目の授業には必ずご出席ください。
履修者の興味等に応じて、内容を多少変更する可能性もあります。