国際政治Ⅳ
国境を越える諸課題とガバナンス―
012-A-532

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
阪口 功 教授 2 3~4 第1学期 2

授業概要

 本科目は、グローバルガバナンスの理論編の「国際政治Ⅲ」を受けて行われる授業であり、グローバルガバナンスの事例編になります。すなわち、国際政治Ⅲで学んだグローバルガバナンスの理論(国際制度、プライベート・レジームなど)を、平和、人権・人道、貿易、開発、環境などの様々な事例に適用し、分野横断的かつ多元的な視点を持ってガバナンスの問題を学んでいきます。

到達目標

 この授業では、次のような問いを探求し、学んでいきます。
 
・貿易の分野では深いレベルの国際協力が達成されているのに対して、開発や安全保障の分野では協力は非常に低い水準にとどまっているのはなぜか?
・天然痘の撲滅には成功したものの、マラリアについてはほとんど進展が見られないのはなぜか?
・オゾン層の破壊防止についてはほぼ問題解決のめどがついているが、温暖化問題については協力が全く進展しないのはなぜか?
・NGOは商業捕鯨の禁止や対人地雷の全廃では顕著な「成功」を収めたが、核の廃絶や温暖化防止などの問題では目立った成果を上げることができていないのはなぜか?
・MSC(水産認証ラベル)は普及が進んだが、FSC(森林認証ラベル)では普及が進まないのはなぜか?

 もちろん、こういった相違が発生するのには、何らかの構造的制約が存在する可能性が高く、この構造的制約を把握することが、制約を乗り越え問題を解決していくための第一歩になります。この授業では、様々なイシューにおけるガバナンスの供給について学ぶことを通じて、問題を構造的に把握し、解決のための政策提言能力の涵養を獲得することが目標となります。

授業計画

1 ガイダンス
2 安全保障レジーム:勢力均衡と核抑止
(中西『国際政治学』5章)
3 安全保障レジーム:冷戦の終焉と人間の安全保障
(中西『国際政治学』5章)
4 国連の平和維持活動と人道的介入:冷戦期の国連軍とPKO
(石塚『国連PKOと国際政治』)
5 国連の平和維持活動と人道的介入:冷戦後のPKOと人道的介入
(石塚『国連PKOと国際政治』)
6 GATTレジームの形成と発展
(飯田『国際政治経済』4章)
7 日米通商摩擦
(映像資料視聴予定)
8 WTOレジームの形成と課題
(飯田『国際政治経済』4章、7章)
9 開発のグローバルガバナンス:冷戦期の開発援助体制
(稲田『国際協力のレジーム分析』)
10 開発のグローバルガバナンス:冷戦後の開発援助体制
(稲田『国際協力のレジーム分析』)
11 キンバリープロセスとフェアトレード
(大矢根『コンストラクティヴィズムの国際関係論』6章)
12 地球環境ガバナンス:オゾン、酸性雨、温暖化
(亀山『グローバル社会は持続可能か』7章)
13 地地球環境ガバナンス:生物多様性
(亀山『グローバル社会は持続可能か』7章)
14 総括
15 予備日
国際政治Ⅲ(理論編)に続く授業のため「国際政治Ⅲ」のシラバスも参照してください。

授業方法

講義中心ですが、適宜ビデオなど映像資料を利用します。

準備学習

各週指定の文献を読了の上、授業に参加すること。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):80%
授業内ミニテスト:20%
出席は毎週とります。出席回数が学内規定の3分の2に達しない場合は、単位を取得する「権利」を失います。

教科書

中西寛ほか『国際政治学』、有斐閣2013
石塚 勝美『国連PKOと国際政治』、創成社2011
稲田十一『国際協力のレジーム分析』、有信堂高文社2011
山田高敬ほか『グローバル社会の国際関係論』、有斐閣2006
鈴木基氏『平和と安全保障』、東京大学出版会2007
飯田敬輔『国際政治経済』、東京大学出版会2007
山本吉宣『国際レジームとガバナンス』、有斐閣2008
大矢根聡『コンストラクティヴィズムの国際関係論』、有斐閣2013
毛利聡子『NGOから見る国際関係:グローバル市民社会への視座』、法律文化社2011
亀山康子ほか『グローバル社会は持続可能か』、岩波書店2015

参考文献

加藤秀治郎ほか『国際政治の基礎知識』増補版、芦書房2002
猪口孝『国際政治事典』、弘文堂2005
川田侃ほか『国際政治経済辞典』、東京書籍2003

その他

・「国際政治Ⅳ」のみの履修も可能ですが、「国際政治Ⅲ」を履修することが強く推奨されます。
・また、この授業について行くには国際関係論の基礎的理解が必要なため、国際関係入門に相当する「グローバルガバナンス論I・Ⅱ」を1、2年次に履修しておくことを強く推奨します。
 「国際政治経済I・Ⅱ」、「国際開発協力論I・Ⅱ」、「国際政治史I・Ⅱ」、「安全保障論Ⅰ・Ⅱ」、「国際政治I・Ⅱ」などの隣接科目の履修も推奨されます。