国際開発協力論Ⅰ
国際開発援助政策の史的展開―
012-A-533

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
元田 結花 教授 2 1~4 第1学期 3

授業概要

 途上国の「開発」を国際社会が協力して実現しようという動きは、世界の各地で日々展開されています。このような「開発の国際化」は、第二次世界大戦後に特に顕著になってきたものですが、一口に「開発」といっても、実際は対象社会全般の変化が目指されているのであり、どのような変化が必要なのか、その変化をどう評価するのかといったことを考えると、目指すべき「開発」は立場によって異なってきます。このような「開発」を、「協力」の名の下に国境を越えた外部の者の関与を通じて実現しようとするならば、常にどの視点から何を問題にしているのかが重要となります。
 以上のような問題認識の下に、本講義では、国際開発援助政策に焦点を当てながら、開発に向けた国際的な取り組みをめぐる代表的な議論の展開を追う形で、何が問題とされ、どのような対応策がとられてきたのかについて勉強していきます。どの時期にどの理論が採用され、政策に変換・執行されたことによって、どのような結果がもたらされたのかを知ることで初めて、それに続く時期の開発をめぐる議論や政策が理解できるようになる以上、現在の最先端の議論・政策を知るためにも、歴史的な観点からの理解の形成は不可欠です。従って、「国際開発協力論Ⅱ」でも、この「国際開発協力論Ⅰ」で扱う内容に適宜触れることになります。

到達目標

 本講義の履修を通じて到達されるべき目標は四つあります。第1の目標は、国際開発援助政策を題材として、「開発」の実現を「国際」的に「協力」することの意味を、授業で扱った各種論点に触れながら、自分の言葉で説明できるようになることです。第2の目標は、国際開発援助政策を理解する上での、基本的な知識を身につけることです。具体的には、公刊されている国際開発援助政策に関する資料・文献を自力で読み進める際に必須となる背景知識を会得することが目指されます。第3に、歴史の教訓と現代的問題群を結びつけて考えられるようになることが求められます。特に、過去に問題とされていたことが果たして克服されているのかという観点から、それ以降の時代のアプローチを分析できるようになることが重要となります。最後に、理論と実践を結びつけて国際開発援助政策の変遷を説明できるようになることが期待されます。すなわち、ある時代に採用された政策に関して、①それが依拠している理論の内容、②その理論が選択された理由、③具体的な政策の形態と執行過程のあり方、④政策がもたらした結果、の各点に触れる形で、分かりやすく論理的に説明できることが目標となります。

授業計画

1 イントロダクション:講義の運営方法、対象、分析視角
2 何が問題なのか?:不平等な世界の現実
3 「不平等」と「貧困」のとらえ方
4 開発途上国の歴史的成立経緯(1):資本主義の展開と植民地支配
5 開発途上国の歴史的成立経緯(2):DVDの視聴
6 第二次世界大戦後の世界デザイン:国際的な課題としての開発の登場
7 開発の黄金時代:規範としての「西洋」と「近代」
8 「近代」の行き詰まり:従属論の隆盛、新国際経済秩序(NIEO)、ベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)
9 新自由主義の時代の始まり:構造調整政策の展開とその社会的影響
10 国家の役割の再検討と「ガバナンス」の登場
11 アジェンダのインフレーションと包括化:「多様化」と「画一化」
12 21世紀に向けた収斂?:人間への回帰、貧困削減戦略文書(PRSP)、ミレニアム開発目標(MDGs)
13 現代の潮流(1):援助効果への関心の高まり、MDGsから持続可能な開発目標(SDGs)へ、ポストPRSP体制へ向けた動き
14 現代の潮流(2):グローバルな課題の台頭、新興ドナーの台頭、国際開発援助ガバナンスの多中心化
15 理解度の確認
 上記の授業計画は暫定的なものであり、特に終盤部分については、近年の国際開発協力の動きに応じて変更する場合もあります。

授業方法

 通常の講義形式を採用し、受講者にはレジュメと参考資料を配布します。必要に応じて、写真、DVDなど、視覚的な情報も活用します。適宜質疑応答の時間をとりますので、受講者は受け身にならずに、積極的に参加するようにしてください。

準備学習

 特定の教科書は用いませんので、復習を中心とした学習形態となります。前回の講義の内容について、自分のノートやレジュメ、配布資料に目を通した上で授業に臨むようにしてください(約1時間)。また、配布資料については、必要に応じて「次回までにこの部分を読んでおくように」と指定することがありますので、その場合は指示に従ってください。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):90%(講義内容の理解度)
レポート:10%(視聴したDVDの内容の理解度、設問に対する解答内容の適切性)
 論述形式の定期試験を実施し、講義内容の理解度を評価します。試験の際には、指定した用紙に自筆で必要事項をまとめたものを持ち込むことを許可します。レポートについては、講義中に視聴したDVDの内容を踏まえ、途上国にどのようなまなざしを向けるのか、受講生自らの考えをA4版2枚程度にまとめてもらいます。

教科書

 特定の教科書は用いません。その代わり、取り扱うテーマに関連する参考文献を適宜紹介します。

参考文献

 取り扱うテーマに関連して、参考文献を適宜紹介します。また、教員指定図書を参照のこと。

その他

 「国際開発協力論Ⅰ」は理論的な内容を扱うため、受講生にとっては、何について論じているのか具体的なイメージを持ちにくくなることが十分に考えられます。教員としても、写真やDVDを用いたり、事例を紹介したりして、分かりやすく伝える努力をしますが、疑問がある場合は、遠慮することなく教員の方まで問い合わせて下さい。質問する際の注意事項については、開講時に提示します。
 政治学、行政学、国際政治、国際政治史といった分野の基本的な知識や、各地域の政治・社会に関する知識があった方がより深く授業の内容を理解できますので、関連する他の先生方の講義を十分に活用して下さい。配当年次は1~4年次となっていますが、講義内容を十分に咀嚼するために必要な背景知識を鑑みると、3・4年次での履修を推奨します。
 なお、この「国際開発協力論Ⅰ」で扱った内容は、「国際開発協力論Ⅱ」における前提知識となります。