外国書講読(実証的研究論文の読み方)
012-B-831

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
三輪 洋文 准教授 2 1~4 第2学期 5

授業概要

この授業の目的は,英語で書かれた実証的な研究論文を読む訓練を積むことです。「実証的」とは,問いに対して経験的に得られた証拠に基づいて答えることを意味しますが,この授業ではデータを計量的に分析した論文を扱います。
実証的な研究論文は,論理を明確にすることに神経が使われており,無駄に難解な表現が使われることは少なく,段落構成が明確で,各段落の冒頭にトピックセンテンスが置かれていることが多いです。加えて,特に計量分析を使った論文は,多くの場合,決まった型に従って書かれています。したがって,コツを身につけさえすれば,短時間で流し読みしただけで論旨を掴むことが可能になります。これは,英語が特別得意でなくても,最低限の単語や文法の知識があれば,誰でもできるようになります。
教材は政治学の研究論文が多くなりますが,政治学の初学者でも内容を常識的に理解しやすいものを扱い,必要な予備知識は前の週に解説します。計量分析についても,結果を読み取るのに必要なだけの解説は提供します。

到達目標

英語で書かれた実証的な研究論文を短時間で読み,論旨を把握できる。

授業計画

1 ガイダンス/実証的な研究論文の読み方の基礎
2 期日前投票制度の効果に関する論文
3 候補者の顔と得票の関係に関する論文
4 中絶に対する態度の性差に関する論文
5 対外感情とテロの関係に関する論文
6 有権者の合理性に関する論文
7 集団間接触と排外的態度に関する論文
8 選挙動員の効果に関する論文
9 政治家によるツイートの影響に関する論文
10 裁判官の独立性に関する論文
11 社会関係資本と投票率の関係に関する論文
12 女性議員の能力に関する論文
13 人種による政治家の応答性の違いに関する論文
14 選挙不正に関する論文
15 総括
受講者の興味関心や能力によって,扱うテーマや進度を変更することがありえます。

授業方法

演習形式で行います。1週間に1本のペースで読んでいきます。短い論文から初めて,徐々に長めの論文を扱っていきます(第2回は長めの論文ですが,教員が予め重要な箇所に線を引いたものを読んでもらいます)。教材は教員の方で用意して配布します。
全員が課題文献を読んできていることを前提として,教員が受講者を無作為に指名して論文の内容や構成について質問します。必要に応じて,英語論文の読み方のコツや論文の内容の細かい点について教員が解説します。余裕があれば,課題文献が取り上げている政治学上の問題についても議論してもらいます。授業の最後20分ほどを使い,次週の課題文献を読むのに必要となる予備知識について説明します。

準備学習

課題文献を読むことが宿題になります。課題文献の理解度を試すワークシート(A4で1枚程度)に答えて提出することが求められます。読む分量は1週につき3,000~11,000単語程度です。量が多いと感じるかもしれませんが,それほど重要でない部分を適度に読み飛ばす能力も身につけてください。所要時間は受講者の英語力によりますが,長いものでもだいたい120分以内に読めるようになってほしいと思います。

成績評価の方法

レポート:25%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):75%
平常点75点のうち,35点は毎週の課題であるワークシート,40点は授業での教員からの質問に対する返答(出席点を含む)によって評価します。
レポート課題では,教員がいくつか指定した論文の中から好きなものを選んで読み,内容をA4で2~4枚程度にまとめてもらいます。読解が正確であることのみならず,必要な点を簡潔にまとめられているかどうかも評価の対象になります。

教科書

最初の3回で次の文献を扱う予定です。履修を検討している人は,次のURLにアクセスして論文のアブストラクト(概要)を読んでみてください。アブストラクトだけならばオンラインで無料で読むことができます。
Barry C. Burden, David T. Canon, Kenneth R. Mayer, and Donald P. Moynihan. 2014. Election Laws, Mobilization, and Turnout: The Unanticipated Consequences of Election Reform. American Journal of Political Science 58(1): 95–109. http://dx.doi.org/10.1111/ajps.12063
Yusaku Horiuchi, Tadashi Komatsu, and Fumio Nakaya. 2012. Should Candidates Smile to Win Elections? An Application of Automated Face Recognition Technology. Political Psychology 33(6): 925–933. http://dx.doi.org/10.1111/j.1467-9221.2012.00917.x
Steven E. Barkan. 2014. Gender and Abortion Attitudes: Religiosity as a Suppressor Variable. Public Opinion Quarterly 78(4): 940–950. http://dx.doi.org/10.1093/poq/nfu047

履修上の注意

履修者数制限あり。(20名)
第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

実証的な研究論文を読む能力は,研究論文以外にもある程度堅い文章を速読するのに応用できるでしょう。しかし,小説などパラグラフリーディングに不向きな文章を読むことには貢献しないと思われますので注意してください。また,同じ政治学でも思想系の文献を読む際には速読ではなく精読が求められますので,そのような分野に興味がある学生には,この授業は相性が悪いでしょう。
大学院に進学して政治学の実証研究をしてみたいが,英語論文を読む自信がない,という学生には特に履修を勧めます。