美術史講義
031-A-233

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
第1学期  廣海 伸彦 講師
第2学期  岡野 智子 講師
4 2~4 通年 3

廣海 伸彦 講師 (第1学期) 

授業概要

日本美術の歴史において,新鮮な造形がどのような方法で生み出されてきたかということを考える。特にこの講義では,江戸時代の絵画に主たる対象として,この時代の魅力的な創造が,既存の作品をたくみに改変することで成り立っていることを解説する。

到達目標

受講者の各自が美術作品に関心を寄せ,それらの作品を生み出した具体的な動機を考えること,またそれを自分の言葉をもちいて客観的に説明できるようになることを目指す。

授業計画

1 はじめに―日本絵画における模倣と創造
2 物語絵の往還―『源氏物語』と『伊勢物語』
3 歴史絵と物語絵―東照大権現と戦利の記憶
4 偉大なる剽窃者―俵屋宗達と古絵巻
5 奇想への即応―岩佐又兵衛と中国版本
6 時世粧をまとう―近世初期風俗画と中国人物図
7 聖人の面影―湯女図と浮世絵
8 形態を介した私淑―風神雷神図の系譜
9 徹底的な微視―伊藤若冲と中国絵画
10 異境へのあこがれ―池大雅と舶載画譜
11 絵画と木版画―勝川春章と鳥文斎栄之
12 洋風の咀嚼―歌川国芳と西洋版画
13 都市像の記憶―江戸の浮世絵と岸田劉生
14 大首絵というモード―喜多川歌麿と上村松園
15 予備日

授業方法

講義形式で行なう。毎回のテーマに沿って,作品の画像をプロジェクターで投影し,解説する。

準備学習

各回の講義内容に関係する展覧会の情報についてを紹介する。これを参考にして,各自が実際の作品を積極的に鑑賞するように心がけること。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):50%
小テスト:30%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%
受講者個々の着眼点を見つけ,それをもとになぜそう考えるのかを自分の言葉で論じているかを評価する。

参考文献

小林忠『江戸の画家たち 』新装新版、ぺりかん社2007年、ISBN=4831510173
佐藤康宏『日本美術史』改訂版、放送大学教育振興会2014年、ISBN=9784595314759

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

岡野 智子 講師 (集中(第2学期)) 琳派・江戸琳派

授業概要

 日本の伝統的な美意識を基盤としながら常に新しい試みに取り組んだ「琳派」。「琳派」にはどのような様式上の特徴があり、江戸時代絵画においていかに位置づけられるのか。「琳派」の成立と展開、さらに江戸後期に確立された「江戸琳派」について、画家や作品の考察を通して具体的に検証する。
 宗達、光琳、抱一を中心に、その周辺画家、また近年高く評価されるようになった其一、孤邨、雪佳なども取り上げる。絵画様式だけでなく、作品成立の背景や画家の生きた地域、時代にも視野を広げ、さらに「琳派」への理解を深めていく。ひいては江戸時代絵画の多様性にも言及していきたい。

到達目標

「琳派」の画家や作品について学び、江戸絵画における位置づけや、日本美術の中での意義が理解できるようになる。「琳派」の育んだ表現が現代にも息づいていることを知り、自己と結び付けて考察が可能になる。

授業計画

1 「琳派」とは何か
2 俵屋宗達-新しいやまと絵の確立-
3 尾形光琳-卓越した意匠家の誕生-
4 尾形乾山-琳派のやきもの-
5 酒井抱一-江戸琳派への展開-①
6 酒井抱一-江戸琳派への展開-②
7 鈴木其一-江戸琳派の革新-
8 「鈴木其一展」見学会
9 近代の琳派-神坂雪佳ほか-
10 琳派の花鳥表現-意匠化と写実-
11 琳派と古典文学
12 様式の継承-風神雷神図を描き継ぐ-
13 京琳派と江戸琳派
14 予備日
15 総括

授業方法

パワーポイントを多用する。画像をより鮮明に映写するため、教室は原則としてほぼ消灯する。毎回上映作品から1点を選んで、授業終了時に各自コメントを提出、次回その中からいくつかのコメントを紹介する。

準備学習

江戸時代絵画(近世絵画)に関する概説を、日本美術史の概説書の該当部分等で読んでおく。
琳派作品が展示されている展覧会で実作品を鑑賞する。

成績評価の方法

レポート:40%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):60%
毎回提出のコメントにおいて、自分が選んだ作品について、どのように受けとめ、それを自分の言葉で確実に語れるか、その積み重ねがレポートに反映されているかを重視する。特に展覧会での鑑賞体験からの記述を推奨する。

教科書

教科書は特に指定しない。

参考文献

授業時に提示する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

江戸時代絵画に関心のある学生が、「琳派」を通して具体的なアプローチを学習する糸口としたい。集中講義で開講日もイレギュラーな形となるが、出席回数を重視するのでできるだけ出席されたい。秋に開催の「鈴木其一展」見学を予定するので、必ず参加すること。