※西洋美術史特殊研究
イギリス美術研究―18世紀を中心に―
031-A-233

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
高橋 裕子 教授 4 2~4 通年 4

授業概要

美術不振の国、と見られがちなイギリスですが、中世においてはむしろヨーロッパ大陸に影響を与える勢いを持っていました。また18世紀には、イタリアやフランスに対する自国の美術の「遅れ」を意識してこれを改革しようとする動きがあった一方で、これら中心的国々にはない新しい観点や美術傾向が生じたことも見逃せません。この講義では、主に18世紀の美術家たちに注目し、適宜、前後の時代にも目を配ります。また、イギリスの美術家がヨーロッパ大陸の美術をどのように理解し、そこからどのような影響を受けたか(または、受けなかったか)、そしてどのような影響を与えたか、という問題も取り上げます。18世紀のイギリス美術の特質を知るとともに、イギリスという鏡に映ったヨーロッパ大陸の美術伝統への理解を深めることを併せて目指します。

到達目標

18世紀を中心としたイギリス美術についての知識を得るとともに、イギリス美術を通じてルネサンス以来のヨーロッパ美術の伝統を理解する。

授業計画

1 イントロダクション―「美術不振の国」というイメージをめぐって
2 イギリス史の概略
3 肖像画と宗教改革―ホルバイン、ヒリアード
4 外国人画家への依存(1)ヴァン・ダイク
5 チャールズ1世の美術コレクション
6 外国人画家への依存(2)リリー、ネラー
7 ホガースとその時代
8 ホガースの「戦略」
9 「グランド・ツアー」とその影響(1)パトロンたち
10 「グランド・ツアー」とその影響(2)画家たち
11 風景画の勃興
12 イギリス式庭園
13 レノルズとその時代
14 レノルズの「戦略」
15 予備日
16 レノルズの「美術講義」(1)そのアカデミズム
17 レノルズの「美術講義」(2)過去の美術の評価―伝統の継承
18 レノルズの「美術講義」(3)過去の美術の評価―新しい見解
19 ゲインズバラ
20 産業革命と美術
21 アメリカ出身の画家たち
22 シェイクスピアの主題の流行
23 劇壇と絵画
24 ウィリアム・ブレイク
25 サミュエル・パーマーと「古代人たち」
26 ターナー
27 カンスタブル
28 カンスタブルの風景画論
29 ロンドン・ナショナル・ギャラリーの成立(1824年)とその意味
30 予備日

授業方法

パワーポイントを用いた講義形式。教科書はないが、毎回講義資料を配布。

準備学習

上記の授業計画で名前を挙げた美術家たちの作品や伝記を、事前にインターネット検索などで調べておく(ただしネット情報には信頼できないものもあるので、注意が必要)。

成績評価の方法

レポート:80%(学部生は、まず講義内容を正確に理解し、その上で、独自の観点からレポートを書いてください。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(出席点。コメントペーパーの記述内容も加味する。)
※学部生が履修した場合は学部相当の基準で成績を評価し、大学院生が履修した場合には博士前期課程と博士後期課程、それぞれの基準で成績評価を行う。

参考文献

開講時、および授業の進行に従って紹介します。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

イギリスの歴史や美術に関する予備知識は求めませんが、予習をしたい人には『イギリス美術』(高橋裕子著、岩波新書、1998年)を薦めておきます。ただし絶版なので、図書館を利用してください。その他の参考文献は英語によるものが多くなりますが、積極的に取り組んでください。