哲学講義
「美と芸術と感性」の哲学―
031-A-133

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
樋笠 勝士 講師 4 2~4 通年 2

授業概要

哲学の三分野(真善美、または、形而上学・倫理学・美学)にまたがる「美の哲学」の構想の下に、昨年は「光」概念と「言語」概念との連関について、史的に、また事象的に探究した。
「美の哲学」とは「美とは何か」を問うものであるが、その深度と範囲は広大であり、形而上学を基礎としつつ倫理学と芸術学的美学をも覆う「存在と価値の学」である。「美」は、史的には、古代ギリシャでは「善美」として倫理的価値を伴いつつ、新プラトン主義や中世キリスト教では形而上学的な超越概念として存在論的価値を現し、さらに近世の主観性の哲学では感性的価値として、観念論哲学では芸術的価値として意義を示した。感覚的次元から存在を超越する次元までを覆う価値概念として「美」は各々の思想に有効な概念装置となってきたが、これは「光」も同様である。これらの各思想に通じる概念装置は、同時に、美や光の「言説」のあり方の問題や、そもそも言語の限界と可能性の問題をも含み、それ故、事象自体とメタ次元とを区別しなければならず、分析・解釈・言語化のためには、言語(修辞、表現)の本質的な問題相にまで深く入り込まねばならないのである。これらを、文献実証的な立場から史的に且つ事象的に考えていきたい。
 昨年度は、現代の「感性学」の端緒までを扱った。今年度は「美」に関しては現代を中心にしつつつ、テーマとしては「美」を「芸術」との関連でも論じることにし、とくに後者については、古典思想や近現代思想も俯瞰しておきたい。

到達目標

西洋哲学において、「美」の概念や、その価値の深度についての理解を深める。同時に、西洋哲学史に通底する「美」と「芸術」との相即についても学び、そこにおいて言語の可能性と限界という視点をも知得する。

授業計画

1 導入:「美の哲学」とは何か?
2 「芸術の哲学」とは何か?
3 「美」と「芸術美」の関連を問う。
4 倫理学的善と美の接点
5 「美の哲学」の史的展開①古代において
6 「美の哲学」の史的展開②中世において
7 「美の哲学」の史的展開③近代において
8 「美の哲学」の史的展開④ロマン主義において
9 「美の哲学」の史的展開⑤近代末期において
10 「美の哲学」と「感性学」の緊密な関係①バウムガルテン再考
11 「美の哲学」と「感性学」の緊密な関係②カント再考
12 「美の哲学」と「感性学」の緊密な関係③現代ドイツ哲学
13 「芸術の哲学」と「感性学」の連関①古典的淵源
14 「芸術の哲学」と「感性学」の連関②現代的課題
15 現代における「美の哲学」の可能性①生の哲学
16 現代における「美の哲学」の可能性②生の哲学からポストモダンの哲学へ
17 現代における「美の哲学」の可能性③ポストモダンの哲学
18 現代における「芸術の哲学」の学的可能性①シェリング再考
19 現代における「芸術の哲学」の学的可能性②現代芸術の課題
20 現代における「芸術の哲学」の学的可能性③分析美学の挑戦
21 現代における「芸術の哲学」の学的可能性④自然美学や感覚学の可能性
22 現代における「芸術の哲学」の学的可能性⑤現象学の方法的可能性
23 現代における「芸術の哲学」の学的可能性⑥解釈学の将来性
24 現代における「芸術の哲学」の学的可能性⑦身体論の意義
25 美と芸術に関わる多様な現代思想①耽美主義
26 美と芸術に関わる多様な現代思想②物語論
27 美と芸術に関わる多様な現代思想③反ロゴス主義
28 「美の哲学」再考
29 「美の哲学」の構想
30 「美」とは何か?
履修者数が少ない場合は、演習形態にします。その場合は、シラバスの内容にも変更が出ます。

授業方法

履修者数に応じて授業形態を変えます。少ない場合は演習にします。

準備学習

特にありませんが、積極的な授業参加をお願いします。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):40%(事前出題の記述式問題を含む。)
第2学期(学年末試験):40%(事前出題の記述式問題を含む。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(リアクションペーパ−)
試験の形式、出席点の有無、リアクションペーパーの評価の仕方などは、事前に初回の授業にて履修者と相談します。

参考文献

授業中に紹介します。