※哲学演習
死と歴史性―
031-A-140

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
酒井 潔 教授 4 2~4 通年 3

授業概要

ハイデッガーの『存在と時間』 (Sein und Zeit, 1927)を読む。はじめに、「現存在」(Dasein)の「現」(Da)ということ、つまり私たちが世界のなかでそのつどすでに自らの有るということを何らかのしかたで理解し、
そのことにおいて同時にあれやこれやのものの存在を理解しているというそのこと(現存在の存在了解)を構成している契機としての「理解と解釈」の問題(第31,32節)を確認する。そのうえで、この今年度のテーマとして、「現存在」がその「日常性への退落」から、「不安の気分」のなかで「死への存在」(Sein zum Tode)である自己に出会い、分散した平均的な有り方から「時間性」の全体を己の有り方とする「本来性」へ至るというハイデッガーの議論について検討する(第Ⅰ部第2編第1章)。そして、そのような現存在の時間性にはさらに現存在の実存論的体制としての「歴史性」(Geschichtlichkeit)という現象が基づけられるが(同第5章)、このハイデッガーの「歴史性」分析も是非取り上げたいと考えている。
まず、ハイデッガーのドイツ語原文をなし得るかぎり精確に読む。そして内容について逐文逐語的解釈を遂行し、なし得るかぎり正確かつ具体的な理解を目指す。そのうえで、「死」、あるいは「歴史性」という私たちの実存にとって切実な問題について、《自由に思索する者》として共に考え深めて行きたい。

到達目標

ハイデッガーの主著『存在と時間』を原文で精読し、解釈を試みることによって、「死」あるいは「歴史」という概念について、自らの意見を持ち、自分の言葉で説明できるようになる。

授業計画

1 1年間の授業計画。テクストについて。『存在と時間』におけるハイデッガーの立場と基本的諸概念について。
2 Heidegger, Sein und Zeit, Paragraph 31:"Das Da-sein als Verstehen",Paragraph32:"Verstehen und Auslegung"
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9 Erster Teil, 2.Abschnitt, Erstes Kapitel:"Das moegliche Ganzsein des Daseins und das Sein zum Tode"
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15 第一学期のまとめ
16 Erster Teil, 2.Abschnitt, Erstes Kapitel:"Das moegliche Ganzsein des Daseins und das Sein zum Tode"
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23 Erster Teil, 2.Abschnitt, Fuenftes Kapitel:"Zeitlichkeit und Geschichtlichkeit"
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30 1年間のまとめ、そして展望
受講者と相談の結果、授業計画を適宜変更する可能性がある。

授業方法

全員による訳読。必要な語学的注意。内容についての解説。そのつどの内容について質疑応答。当番制による毎回の授業記録(プロトコル)の作成と発表。

準備学習

事前にテクストの該当箇所を十分に予習しておくこと(少なくとも1~2日)

成績評価の方法

平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):100%(訳読、プロトコル、質疑応答、出席状況その他を材料に、総合的に判断する。なお、平常の取り組みが不十分と考えられる場合には、レポートを追加する可能性がある。)
平常点が不足していると判断される受講生には、特別レポートを課す場合がある。
※学部生が履修した場合は学部相当の基準で成績を評価し、大学院生が履修した場合には博士前期課程と博士後期課程、それぞれの基準で成績評価を行う。

教科書

Martin Heidegger, Sein und Zeit, Max Niemeyer, Tuebingen
第一回の授業時に、教室で指示する。

参考文献

渡邊二郎『構造と解釈』(ちくま学芸文庫)、1994
川原栄峰『ニヒリズム』(講談社現代新書)、1977
大橋良介編『ハイデッガーを学ぶ人のために』、世界思想社1994
宮原勇編『ハイデガー『存在と時間』を学ぶ人のために』、世界思想社2012
秋富・安部・古荘・森編『ハイデガー読本』、法政大学出版局2014
その他にも、そのつど教室で指示する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。