哲学演習Ⅱ
E.フッサール『現象学の理念』講読―
031-A-141

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
中山 純一 講師 4 2~4 通年 4

授業概要

 本演習では、エドムント・フッサール(Edmund Husserl,1859-1938)が1907年夏学期に行なった、『現象学の理念』講義を講読する。同講義は、現象学的還元の思想が初めて語られたものであり、現代の現象学研究者たちの論文や著作において繰り返し言及されているほど、重要なテキストである。本演習では、訳文を参照しつつ、まずは全体の内容と構成を明確にし、同テキストの講義2と4を、ドイツ語原文を訳しながら、『現象学の理念』全体を精読する。
 導入として現象学の一般的な話をする。まずは、現象学の次のような基本ターム、志向性、ノエシス-ノエマ、時間-空間、構成-構築、解体、原意識、原自我、原子ども、生ける現在、超越論的傍観者などを、できるだけ具体例や図式を用いて、参加者が理解しやすいように解説する。また、フッサール以降の現象学の展開として、M.ハイデガー、E.フィンク、M.メルロ=ポンティ、E.レヴィナス、M.アンリ、J.デリダ、J.L.マリオンの現象学を端的に説明する。以上に挙げたような現象学者に関心のある学生の参加を歓迎する。
 演習の進め方は、一文ごとに文法や語法を確認し、一段落ごとに内容を確認する。その後、内容について質疑応答を繰り返し、共通理解を作りながら、次のステップに進む。多くの分量を読みこなすことを目標にはせず、少ない分量であっても厳密に読むことを目標にしたい。また、参加者の積極性と関心に応じて、グループワーク(グループワークでのレポート課題や、宿題作成)やプレゼン発表(レジュメ配布や、パワーポイントを使用しての発表)の機会を設けたいと考えている。

到達目標

1.文法・語法などを意識しながらドイツ語で哲学のテキストが読めるようになる。
2.文脈に即して内容を解釈できるようになる。
3.テキストの内容について、自分意見を言葉で表現できるようになる。

授業計画

1 オリエンテーション―本演習の内容紹介、指導・成績評価の仕方について―
2 現象学についての一般的な導入―フッサールについて、現象学とは何か、現象学の方法概念について―
3 現象学の問題の射程―E.フィンク、M.ハイデガーによる現象学の批判的解体、現代フランス現象学における様々な転回について―
4 『現象学の理念』導入―五講義の内容と全体の見取り図―
5 『現象学の理念』講義の思索過程―現象学的考察の三段階―
6 『現象学の理念』講義1(1)―自然的態度と哲学的反省の態度の違いについて―
7 『現象学の理念』講義1(2)―認識批判学の課題について―
8 『現象学の理念』講義1(3)―認識批判学としての現象学について―
9 『現象学の理念』講義2(1)―原書講読、認識批判の出発点―
10 『現象学の理念』講義2(2)―原書講読、絶対的に確実な地盤の獲得―
11 『現象学の理念』講義2(3)―原書講読、絶対的所与性の領域―
12 『現象学の理念』講義2(4)―原書講読、内在と超越―
13 『現象学の理念』講義2(5)―原書講読、超越論的認識の可能性―
14 『現象学の理念』講義2(6)―原書講読、認識論的還元の原理―
15 予備日
16 『現象学の理念』講義3(1)―認識論的還元の遂行、純粋現象―
17 『現象学の理念』講義3(2)―絶対的現象の客観的妥当性の問題―
18 『現象学の理念』講義3(3)―本質認識とアプリオリ概念の両義性―
19 『現象学の理念』講義4(1)―原書講読、志向性による研究領域の拡張―
20 『現象学の理念』講義4(2)―原書講読、普遍者の自己所与性―
21 『現象学の理念』講義4(3)―原書講読、本質分析の哲学的方法―
22 『現象学の理念』講義4(4)―原書講読、明証の感情説批判―
23 『現象学の理念』講義4(5)―原書講読、自己所与生としての明証―
24 『現象学の理念』講義4(6)―原書講読、実的内在の領域―
25 『現象学の理念』講義4(7)―原書講読、自己所与性の主題化―
26 『現象学の理念』講義5(1)―時間意識の構成―
27 『現象学の理念』講義5(2)―普遍性意識の構成―
28 『現象学の理念』講義5(3)―範疇的所与性―
29 『現象学の理念』講義5(4)―認識と認識対象性の相関関係―
30 予備日

授業方法

授業は基本的に、テキスト(教科書)の輪読形式で行う。
ある程度のまとまりのある文章読んだあと、内容を振り返り、参加者で議論を行う。
板書された内容をノートするために、この授業用にノートを一冊用意すること。
ノートはA4サイズの方眼ノートが好ましい。
また、ドイツ語辞書を必ず持参すること。

準備学習

テキストを輪読形式で演習を行うので、参加者は以下のように必ず予習をしてくること。
1.次回に読むテキストの範囲をあらかじめ読み、内容のとれない箇所、意味の分からない概念をチャックし、ノートに抜き出しておくこと(2時間程度)。
2.原書購読の回は、あらかじめドイツ語テキストを読み、意味の分からない単語を辞書で調べそれをノートにまとめ、文章を日本語に訳してくること(3時間程度)

成績評価の方法

レポート:50%(1.漢字・語句の適切さ、2.議論の道筋の明確さ、3.主張の説得力、4.視点の独創性)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):50%(出席率、ドイツ語読解力、議論への貢献度。グループワーク、プレゼンを行うこともある。)
成績評価は、
1.平常点(出席率、授業中の発言、ドイツ語の翻訳、議論への貢献度)
2.レポート
で評価する。
成績評価の基準は、学習院大学の成績評価基準に準拠する。
レポートは、夏休み中に作成し、第2学期を通じてそれを修正し、学年末に提出する。したがって、レポートは通年で一本作成する。

教科書

E. Husserl / hrsg.von W.Biemel, Die Idee der Phaenomenologie, Fuenf Vorlesungen, (Husserliana Bd.2) Springer 1973th Edition, Springer, 1964, ISBN:9401757739
テキストは教場で配布する。

参考文献

新田義弘『現象学』第1版、講談社(講談社学術文庫)2013年、ISBN=4062921537
谷 徹『これが現象学だ』第1版、講談社(講談社現代新書)2002年、ISBN=4061496352
ダン・ザハヴィ / 中村拓也 訳『初学者のための現象学』第1版、晃洋書房2015年、ISBN=4771026106
『現象学』
硬質な文体だが、読むことが同時に思惟することに等しくなる書物。現象学の歴史的な姿を追いながら、「現象学する」とは何かを問うた本。本格的に現象学を知りたい人向け。
 
『これが現象学だ』
より一般的な現象学の入門書。現象学の入門書で一番わかりやすい本。
 
『初学者のための現象学』
現代の視点からみられた現象学の入門書。少し難しいが、分量が少なく内容がコンパクトで読みやすい。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。