● 日本史演習
―『吾妻鏡』講読―
032-A-211
担 当 者
単 位 数
配当年次
学 期
曜 日
時 限
中込 律子 講師
4
2~4
通年
月
4
『吾妻鏡』を読むことを通じて、中世史料の読解力を身につける。『吾妻鏡』は、鎌倉幕府の歴史を編年体で叙述した歴史書で、鎌倉後期に編纂された。漢文で書かれているが、日本語表現に適した形に変化した漢文体で、貴族の日記や文書などの当時の他の史料を読むための基礎力を養うのに適した史料である。また、『吾妻鏡』と『玉葉』などの第一次史料との比較・検討を通して、史料的性格の相違を踏まえた解釈など、史料操作の基本も学べる。授業は、文法を踏まえた漢文の正確な読み下し、関連史料の綿密な調査に主眼を置き、次いで、講読箇所を関連論文等によりさらに深く理解する。今年度は、建久三年正月から読み進めるが、この年は、後白河法皇が没し、源頼朝が征夷大将軍になる重要な年である。調べれば調べるほど史料読みの面白さがわかってくるはずである。
①中世史料に独特な文体や表現方法に慣れ、史料を正確に読み、解釈する力を養うこと。②人名・地名など史料の基礎的要素について、調査する技術を身につける。③関連史料を広く調査し、相互に記述を比較することで、記事の意味や信憑性などについて考える力を養う。④『吾妻鏡』の他の写本(刊行された吉川本など)も参照し、史料のあり方を理解する。⑤講読箇所を扱った論文を手掛かりとして、現代の研究者が史料から何を考え、論じて来たかを理解する。
1
参加者の自己紹介、発表分担の決定。
授業の進め方や史料の調べ方の説明。
2
『吾妻鏡』概観と今年度の講読箇所(建久三年)の注目点の説明
3
第3回以下、順次『吾妻鏡』当日箇所の読み下しと担当学生による報告。討論。
あらかじめ学生をグループに分ける。
当日は、担当グループ以外の学生が講読箇所を読み、全員で大まかな解釈をする(試読)。
担当グループが、関連文献を踏まえた解釈や下問題点について報告する。
全員で報告について質疑・討論を行う。
あらかじめグループと担当箇所を定め、次回の担当グループは、報告に先立ち担当箇所の読み下しと解釈を確認する。解釈に必要な参考文献の調査を行い、さらに担当箇所から問題点を探して調査・検討する。講読に必要な調査には充分な時間をかける(数時間×数日)。
担当グループ以外の全ての学生は、読み下しを担当する可能性があるので、一通り次回箇所を口に出して読めるようにしておく。疑問点があれば整理し、授業の報告で疑問が解消しなければ討論で解決する(30分~1時間)。
レポート:30%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):70%(内訳:担当箇所の報告:40%、試読(担当グループ外による):15%、討論への参加:15%)
出席は必須。担当箇所の報告の評価は、精度(問題点を探し調査する積極性ともいえる)、および、誤りを正し習得するす姿勢(最初は読めなくても当然。いかに過去の誤りを記憶して読解力をつけていくか、という変化)を評価する。
黒板勝美・国史大系編修会編『 『吾妻鏡』前編(普及版は第二)』(新訂増補 国史大系)、吉川弘文館、1935年
五味文彦『『増補版『吾妻鏡』の方法』』、吉川弘文館、2000年、ISBN=4642077715
講読箇所に関する個別の参考文献、『吾妻鏡』についての参考文献の詳細は、授業時に示す。
第1回目の授業に必ず出席のこと。