日本文学講義ⅠC
中世歌謡の世界『梁塵秘抄』―
033-A-002

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
小島 裕子 講師 4 1 通年 4

授業概要

平安時代の末、時の法皇であった後白河院は「今様」という歌謡の集『梁塵秘抄』を編纂した。そして、「声わざの悲しきことはわが身隠れぬる後、留まることのなきなり」と、消えゆく音声の宿命を嘆き、『梁塵秘抄口伝集』を執筆、これに添えた。今、わずかにその十分の一が現存するにすぎない『梁塵秘抄』であるが、平安時代後期の文化や思想を鮮やかに映し出す歌々で満ち満ちている。後白河院が後世に伝えんとした今様の魅力とは如何なるものであったか。撰述された「今様」のことばを具体的に味わいながら考えてゆきたい。前期は「神歌(かみうた)」、後期は「法文歌(ほうもんか)」を中心に講義する。
後白河院撰『梁塵秘抄』に編纂された歌々を紹介し、「今様」という平安後期に成った歌謡の世界の魅力に迫る。私に心に響く歌を選び紹介。
受講者は、講義に並行して、自ら私選の今様一首を選び、当該の歌の「先行研究」を整理し(WORK)、最終レポートに備える。最終レポートで行き成り評価を問うのではなく、レポートを書くに至るまでの過程として必要な作業の方法を促し、指導してゆく。

到達目標

歌謡のことばにこめられた豊穣な文化を深く味わう楽しさを知ることをもって、本講義の最大の目標とする。先行研究を踏まえた上で、各々が独自の読みを展開するための〈研究の方法〉の基本を学ぶ。具体的には、講義に並行し、課題(最終レポート)「私の今様一首選」の読みを仕上げるために必要な資料の調べ方を丁寧に指導してゆくので、受講者は年間を通してレポート化に至るまでの研究課程を体験し、読解の方法を習得することができる。
 

授業計画

1 前期 神歌を中心に 
講義プログラム解説 プロローグ『梁塵秘抄』・『梁塵秘抄口伝集』概論 
2 芸能史における今様、遊女・傀儡子
3 後白河院の編纂意図
4 神歌とは
5 概観「神歌いろいろ」
6 「塵の今様」
7  〃 ――『梁塵秘抄』巻頭歌考
8 「すぐれて高き山」
9 〃 ――ものは尽くしの今様、聖なる山編
10 受講者「私の今様一首選〈神歌〉」
11 「神も昔は人ぞかし」
12  〃 ――神仏習合思想・御霊信仰
13 「南無や帰依仏、南無や帰依法」
14  〃 ――祈りの声を取り込む今様
15 小結
16 後期 法文歌を中心に
17 法文歌とは
18 概観「法文歌いろいろ」
19 「釈迦の御法は天竺に」
20 〃 流沙をわたる玄奘三蔵
21 「沙羅林に立つ煙」
22  〃 ――道草法華今様、永遠のブッダ
23 受講者WORK「私の今様一首選〈法文歌〉」
24 「釈迦の住所はどこどこぞ」
25 〃 ――経典のことばと今様
26 「霜を払ひて薪採り」
27 〃 法華讃歎、薪の行道
28 「沓はあれども主もなし」
29  〃 ――ブッダの前生、捨身飼虎の物語
30 年度内総括

授業方法

講義形式

準備学習

課題(最終レポート)「私の今様一首選」の遂行に向けて、各自注釈研究を進めつつ、毎回の講義を聴講すること。実行して臨めば、講義内容が受講生個々の自己テーマの考究に必ず響きます。調べ物などについても、何をどう質問したらよいかが見えてくるでしょう。
・予習 講義で取り上げる歌について、自ら語釈・通釈を試みてみた上で受講すること(1時間)
・復習 配布された資料を今一度読み込み、歌の解釈を深めること(1時間)

成績評価の方法

レポート:50%(独自の視座で歌を読みを深めることができているかどうか)
小テスト:30%(基礎的な調べ物ができるかどうか )
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%
レポート:50%…「私の今様一首選 最終レポート」
小テスト:30%…「私の今様一首選 先行研究」前期・後期/平常点(出席、クラス参加、グループ作業の成果等):20%

教科書

佐佐木信綱『梁塵秘抄』(岩波文庫)、岩波書店ISBN=4-00-300221-0
上記テキストに加え、毎講義時に配布するプリント。

参考文献

上記教科書として指定する以外の基本参考文献については、初期の講義時に紹介する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

他学科生の履修不可