日本文学講義Ⅱ
近代文学におけるメディアと市場の関係―
033-A-107

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
山本 芳明 教授 4 2~4 通年 2

授業概要

 本講義では日本近代文学をメディア史や経済史の観点から再検討していくつもりです。第一学期は夏目漱石、第二学期は菊池寛を取りあげます。考察対象を変えることで、近代文学ばかりでなく、広い視野から近代社会・文化・文学の様相を明らかにしていきます。第一学期は、漱石の商品としての小説の分析を緒にして、漱石の経済活動の実態を考察していき、第二学期は、新進作家だった菊池寛が文壇の中心的な存在になっていくプロセスを追いかけていく予定です。

到達目標

1明治末から昭和戦前期にかけての近代文学・文化・社会の動きを再検討する新しい視点を学習できます。
2上記に関連する知識を充実することができます。
3レポートを書くことで、自分の考察を論理的に組み立てる練習をすることができます。

授業計画

1 ガイダンス
2 商品としての小説――漱石の分析
3 漱石の「金持」嫌悪
4 「金持」の「趣味」
5 近代文学と「金持」の遠い関係
6 漱石の「貧乏生活」
7 漱石の家計簿
8 夏目家の資産形成
9 印税の使い方
10 夏目家の財政危機
11 岩波書店の献身
12 岩波書店の反発
13 漱石の評価
14 まとめ
15 予備日
16 大正8、9年の菊池寛について
17 歴史を描く(1) 「ある恋の話」
18 同上   (2) 「形」
19 自己を描く(1) 「小説『灰色の檻』」
20 同上   (2) 「盗人を飼ふ」
21 友を描く (1) 「友と友の間」
22 同上   (2) 「神の如く弱し」
23 連載長編小説作家への転身
24 『真珠夫人』諭(1) そのプロット
25 同上     (2) そのリアリティ
26 同上     (3) その社会的反響
27 『火華』諭(1) そのプロット
28 同上   (2) そのリアリティ
29 まとめ
30 予備日
計画は流動的で、変更する可能性が大いにあります。

授業方法

講義なので、私がしゃべる時間が多くなりますが、授業中に質問したり、課題を出すことがあります。

準備学習

1取りあげる作品を事前に読むことが大切です。
2授業でふれた文献を自主的に読むことで、授業の理解が深まり、自分の問題意識が養えます。
3余裕をもって、予習・復習に取り組むことが必要です。

成績評価の方法

レポート:80%(夏休みと冬休みにそれぞれ課題を出します。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(出席状況、授業中の質問に対する応答・小レポートによって評価します。)
レポートは論理性と実証力がポイントになります。平常点は授業にいかに集中しているのかがポイントになると思います。なお、三分の一以上、欠席した場合、単位の修得はできません。

教科書

菊池寛『藤十郎の恋・恩讐の彼方に』(新潮文庫
菊池寛『真珠夫人』(文春文庫
第一学期はプリントを配付する予定です。

参考文献

山本芳明『カネと文学 日本近代文学の経済史』(新潮選書)、新潮社、2013年3月ISBN=9784106037245
夏目鏡子『漱石の思い出』(文春文庫
この他の参考文献は授業中に適宜指示します。