日本文学講義Ⅱ
光源氏晩年の物語構造―
033-A-107

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
神田 龍身 教授 4 2~4 通年 1

授業概要

『源氏物語』三部構成説というものがある。第一部は、「桐壺」から「藤裏葉」の三十三帖で、主人公源氏の誕生と准大上天皇にいたるまでの栄耀栄華の物語である。第二部は、「若菜 上」「若菜 下」「柏木」「横笛」「鈴虫」「夕霧」「御法」「幻」までの八帖で、源氏の晩年を語る。第三部は、「匂宮」から「夢の浮橋」までの十三帖であり、源氏没後の世界を語っている。本年は、『源氏物語』第二部論を試みるが、それは単に源氏の晩年を扱っているというのみならず、物語の言葉がそこで大きく変質し、物語論として興味ある問題がそこに孕まれているからである。平成二十六年度「日本文学講義」で、「若菜」二巻を冒頭から読んでいくという講読形式の授業をしたが、今年はいきなり、第二部世界とは何かというように「論」の構築を目指す。

到達目標

日本の文化遺産として評価の高い『源氏物語』だが、そもそも『源氏物語』はどのような物語なのか。世間に出回っている入門書等を読んでも、有意義なものはなく、かえって物語に対しての変な先入観を抱くことになってしまう。原典を読むことで、『源氏物語』とはいったい何かということを是非つかんでいただきたい。

授業計画

1 『源氏物語』第一部(「桐壷」~「藤の裏葉」までの三十三帖)についての概説と、第二部世界への見通し。
2 「若菜」上・下巻の編年体――数量化された時間とは(1)
3 「若菜」上・下巻の編年体――数量化された時間とは(2)
4 女三の宮降嫁決定の物語――抑圧したものは回帰する(1)
5 女三の宮降嫁決定の物語――抑圧したものは回帰する(2)
6 源氏の四十の賀について――その記録文体について
7 明石一族の歴史――栄耀栄華の物語(1)
8 明石一族の歴史――栄耀栄華の物語(2)
9 冷泉帝の退位
10 女楽――源氏世界最後の光芒(1)
11 女楽――源氏世界最後の光芒(2)
12 紫の上論――手習の言葉と物の怪の言葉(1)
13 紫の上論――手習の言葉と物の怪の言葉(2)
14 柏木論(1)――蹴鞠の脚技
15 到達度確認
16 柏木論(2)――『伊勢物語』と柏木
17 柏木論(3)――『伊勢物語』と柏木
18 柏木論(4)――柏木と源氏
19 柏木論(5)――柏木と女三の宮
20 女三の宮論(1)――源氏にとっての女三の宮
21 女三の宮論(2)――柏木にとっての女三の宮
22 女三の宮論(3)――女三の宮の実態・実体
23 夕霧論(1)――柏木と夕霧
24 夕霧論(2)――夕霧と落葉の宮
25 「幻」巻論(1)――時間構造
26 「幻」巻論(2)――記憶の忘却
27 源氏世界の終焉と続篇世界への展望(1)
28 源氏世界の終焉と続篇世界への展望(2)
29 本年度授業のまとめ
30 到達度確認
『源氏物語』第二部世界は難解である。したがって、計画どおり授業がすすまないこともあるかもしれない。

授業方法

講義形式。各授業の終りの方で、その日の授業内容について、学生との意見交換ができればと思っている。

準備学習

各自、できるだけはやく五月末頃までに、『源氏物語』第二部(若菜 上」~「幻」巻)を通読していただきたい。皆さんが、既に読んであるという前提のもとに講義する。

成績評価の方法

レポート:80%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%
レポートを書くには、まずは『源氏物語』の研究史を検証することから始めるのが通常である。しかし、源氏研究史はあまりに分厚く、それを理解する時間的余裕はないし、また自身の見解をまとめるどころか、研究史にのみこまれてしまうという恐れもある。よって、私は、皆さんが『源氏物語』を読んでみて、どのような感想をもったのか、その印象こそを大事にしてレポートを作成することを望む。約4000字のレポート。出席は最低でも、三分の二以上出席すること。

教科書

『源氏物語』本文は、プリントを配布する。

参考文献

参考文献は多量にあり、授業中、適宜紹介する。

その他

出席カードの裏に意見を書いていただくのが至便。