日本文学演習
映画と小説の中の少女・少年たち―
033-A-115

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
中山 昭彦 教授 4 2~4 通年 5

授業概要

小説の読解を、その映画化作品との関係において捉え直すことがこの演習の主な目的である。ただし言語によって表現される小説と、言語がセリフなどとして含まれるとはいえ、映像と音響が表現の基本となる映画を同じ方法で分析することはできない。したがって小説と映画のそれぞれの表現にふさわしい分析方法を提示して、小説と映画を比較検討し、映画の分析を経ることで見えてくる小説の読解や、小説の読解によって明らかになる映画の一面を明らかにしていきたい。また、そうした表現の分析と歴史的社会的なコンテクストとの関係についても考察してゆくものとする。今年度の演習では、特に映画と小説に登場する少女・少年を主要なテーマとし、坪田譲治『風の中の子供』、獅子文六『信子』、三島由紀夫『午後の曳航』、湯本香樹実『夏の庭』といった小説とその映画化作品(清水宏や相米慎二などの監督作品)を取り上げる予定だが、場合によっては一部を変更することがある。

到達目標

映画と小説の表現の違いに応じた的確な分析方法を身につけ、歴史的社会的なコンテクストと関連させた考察を行う能力を養うことをめざす。

授業計画

1 ガイダンス(扱う作品の決定)
2 受講者の確定と担当作品の決定
3 小説と映画の分析法;ショット
4 小説と映画の分析法;人称と焦点化
5 小説と映画の分析法;少女少年史
6 発表と質疑応答(1)父と少年
7 発表と質疑応答(2)父の不在
8 発表と質疑応答(3)少年の時間
9 発表と質疑応答(4)父の帰還
10 発表と質疑応答(5)学園と少女
11 発表と質疑応答(6)同性愛性
12 発表と質疑応答(7)少女の事件
13 発表と質疑応答(8)事件の解決
14 第1学期の授業のまとめ
15 自主研究
16 小説と映画の分析法;一人称性
17 小説と映画の分析法;戦後の親子
18 発表と質疑応答(9)少年グループ
19 発表と質疑応答(10)憧れと反抗
20 発表と質疑応答(11)親への依存
21 発表と質疑応答(12)英雄の転落
22 発表と質疑応答(13)過激な解決
23 発表と質疑応答(14)少年と老人
24 発表と質疑応答(15)夏休みの時間
25 発表と質疑応答(16)長廻しの意味
26 発表と質疑応答(17)顔の失認
27 発表と質疑応答(18)老人の観察
28 発表と質疑応答(19)死と少年たち
29 第2学期の授業のまとめ
30 理解度の確認

授業方法

受講者にとって初めての試みであるといった場合もあるため、映画の分析法と小説との比較の仕方に関しては、最初の数時間を使って講義する。それ以降の演習形式の授業は発表とそれに対する質疑・応答からなる。受講者は最低1回の発表者と代表質問者をつとめなければならない。発表者は定められた条件に従ってレジュメを作成し、受講者全員に配布した上で、発表を行うこと。また代表質問者は作品内容と先行研究を前もって十分に把握し、積極的に意見や質問を出すこと。その他の受講者も質疑応答に積極的に参加すること。

準備学習

発表担当者となった場合は発表の準備をしておくこと。また各回で扱う文献については、全員が事前に読み込んでおくこと。

成績評価の方法

レポート:40%(第1学期末と第2学期末に課す計2回のレポート)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%
演習発表および代表質問:40%
平常点は出席状況、代表質問者以外の回の質疑応答への参加度、受講態度からなる。1、出席が一定数を越えること、2、レポートを2回とも提出すること、3、発表者と代表質問者を1回ずつつとめることが最低条件であり、1~3のいずれか一つが欠けた場合は評価が確実に「不可」となるので注意すること。

教科書

教科書については、1回目の授業で取り上げる作品を最終的に確定した上で指示する。

参考文献

田中眞澄ほか『映画読本 清水宏』、フィルムアート社2000
中山昭彦『ヴィジュアル・クリティシズム』、玉川大出版部2008
山田宏一『エジソン的回帰』、青土社1997
木村建哉・中村秀之・藤井仁子『蘇る相米慎二』、インスクリプト2011
その他の参考文献については授業中に指示する。

履修上の注意

履修者数制限あり。(36名)
第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

日本文学講義Ⅱ(中山担当のもの)を併せて履修した方がより理解が深まる。