文学・文化 講義(3)
「音楽の国ドイツ」イメージの成立―
035-A-521

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
玉川 裕子 講師 2 1~4 第1学期 2

授業概要

「ドイツはクラシック音楽の本場」――これは、現代日本に生きる多くの人が抱いている共通イメージのひとつだろう。実際、今日いわゆるクラシック音楽の世界でもっともしばしば耳にするのは、18世紀から19世紀にかけての時代にドイツで生み出された作品である。この時代のドイツの作曲家の名前は、バッハからベートーヴェン、ブラームスにいたるまで、クラシック音楽に特別の関心を抱いていない人でもおなじみだろう。
それにしても、なぜドイツは「音楽の国」とみなされているのだろうか。そこで多くの素晴らしい音楽作品が生みだされてきたからだろうか。それはその通りだとしても、本当にそれだけだろうか。実はドイツは18世紀までは音楽の後進国とさえ見られていた。ドイツ自身がみずからを「音楽の国」と考え、それを他の文化圏に属する人びとも受け入れるようになったのは、19世紀に入ってからのことである。そのことは何を意味しているのだろう? この時代はまさにドイツ市民社会が急速な発展を遂げた時代であったことを考えると、「音楽の国ドイツ」イメージの成立はどうやら「音楽作品」だけの問題ではなさそうである。
本講義では、「音楽の国ドイツ」イメージの成立を、さまざまな具体例によってみていきたい。 授業は講義が中心である。また、内容に関連する音楽を毎回聴いてもらう予定である。ときには聴いた音楽や講義の内容について、コメントを書いてもらう。

到達目標

音楽に関する知識を得るばかりでなく、それ以上に音楽が、さらには文化というものがわれわれにとってどういう意味を持ちうるものであるかについて、考えをめぐらすことができるようになる。

授業計画

1 ドイツは「音楽の国」?
2 市民階級と音楽
3 ドイツ・ロマン派の音楽観――文学者たちの場合
4 ドイツ・ロマン派の音楽観――シューマン夫妻の場合
5 ローベルト・シューマンの評論活動
6 ピアニスト、クララ・ヴィーク=シューマン
7 クララ・ヴィーク=シューマンのレパートリー
8 メンデルスゾーン姉弟の場合
9 メンデルスゾーン家とバッハ一族
10 ライプツィヒのフェリックス・メンデルスゾーン
11 メンデルスゾーン家の自邸における音楽実践
12 ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルの日曜音楽会
13 ベートーヴェンという軛
14 まとめ
15 振り返り
受講者からの質問やコメント等によっては、扱うトピックを変更する場合がある

授業方法

講義形式

準備学習

授業で指示した参考文献を読むこと

成績評価の方法

レポート:65%(レポートとしての形式が整っていること。内容について理解していること。内容理解に基づいて、自らの見解を表明していること。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):15%(出席)
授業中、もしくは宿題として課すコメント:20%(講義やテキストの内容をしっかり理解していること。)

参考文献

吉田寛『〈音楽の国ドイツ〉の神話とその起源』(<音楽の国ドイツ>の系譜学 第1巻)、青弓社2013
吉田寛『民謡の発見と<ドイツ>の変貌』(<音楽の国ドイツ>の系譜学 第2巻)、青弓社2013
吉田寛『絶対音楽の美学と分裂する<ドイツ>』(<音楽の国>ドイツの系譜学)、青弓社2015
吉成順『<クラシック>と<ポピュラー>――公開演奏会と近代音楽文化の成立』、アルテスパブリッシング2014
玉川裕子『クラシック音楽と女性たち』、青弓社2015

その他

5回以上欠席した者には、原則としてレポートの提出を認めない。