現代地域事情 講義(3)
音楽の都ヴィーンの歴史と現在―
035-A-531

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
関根 裕子 講師 2 1~4 第1学期 4

授業概要

「オーストリアってどんな国?」と尋ねられたらはっきりと答えられますか?首都ヴィーンが「音楽の都」として明確な顔を持っているのに対して、オーストリアという国のイメージは何か漠然としていませんか?ドイツとオーストリアの違いは何ですか?本講義では、過去の栄光の歴史に比べて、ヨーロッパにおける存現在の存在感が小さくなってしまったオーストリアについて、歴史・社会の影響を受けた芸術・文化を幅広い側面から紹介します。そして人種の「るつぼ」といわれたハプスブルク帝国という多民族国家から継承した小国オーストリアの文化アイデンティティを考察します。第1学期では、ハプスブルク帝国の19世紀中頃までの歴史をたどりながら、各時代の文化・芸術を多くの視聴覚資料を用いて紹介します。

到達目標

オーストリアの過去の歴史と現代の諸事情、日本との文化交流史を学び、理解することで、オーストリアのヨーロッパでの位置づけを考え、さらに日本の文化の在り方についてもオーストリアと比較しながら客観的な考察ができるようになる。

授業計画

1 オリエンテーション「オーストリアとはどんな国?」各州の紹介、食文化にみる多民族性、「音楽の都」ヴィーンと呼ばれる所以「オペラ座舞踏会」「ヴィーンフィルのニューイヤーコンサート」など
2 オーストリアの歴史(1)ハプスブルク宮廷の芸術保護と音楽文化の発展(16世紀まで)~マキシミリアン1世の結婚政策と芸術保護促進
3 オーストリアの歴史(2)オーストリアのバロック精神~カール5世、レオポルト一世、カール6世の時代とバロック建築
4 オーストリアの歴史(3)女帝として、母として、妻としてのマリア・テレジア
5 オーストリアの歴史(4)ヨーゼフ主義~ヨーゼフ2世とモーツァルトのSingspiel
6 オーストリアの歴史(5)「会議はなぜ踊ったのか?」~ナポレオンとヴィーン会議、メッテルニヒ、オーストリア国歌の変遷、ベート―ヴェンの人類愛 第九交響曲
7 Alles Walzerアレス・ヴァルツァー(1)3月前期のヴィーン~メッテルニヒ体制、ビーダーマイヤーの芸術家、グリルパルツァ、シューベルト『未完の人生』
8 Alles Walzerアレス・ヴァルツァー(2)ワルツとレントラー~舞踏会文化、ヨハン・シュトラウスとランナー
9 1848年の乱痴気騒ぎとフランツ・ヨーゼフ皇帝の即位、自由主義(リベラリズム)
10 Ringstrasse文化、教養市民階級の時代~ブラームスとヴィーン楽友協会、ビルロート、歴史主義の建築
11 陽気な世紀末のはじまり~ヴィーン万国博覧会と金融恐慌、ヨハン・シュトラウスの時事ワルツとオペレッタ『こうもり』
12 オーストリア=ハンガリー二重帝国~オペレッタ、ミュージカルに見るハンガリー像『ジプシー男爵』『ジプシーの恋』
13 ハプスブルク家の神話化(1)~エリーザベト皇妃の虚像と実像の間、映画『シシイ』とミュージカル『エリーザベト』
14 ハプスブルク家の神話化(2)ルドルフ皇太子心中事件の真相をめぐって、映画『うたかたの恋』とバレエ『マイヤーリンク』
15 第1学期のまとめ
毎回の授業内容への質問、意見、感想あるいは個別の課題をリアクションペーパーに記入し、提出していただき、平常点に反映させます。

授業方法

音楽や美術、建築などの芸術作品については、多くの視聴覚資料を提示します。

準備学習

事前に教科書の該当箇所を読んでおくこと。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):60%(授業内容を理解し、覚えているかどうか?知識をもとにして、自分の考えをまとめることができるかどうか?)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):40%(毎授業時に提出するリアクションペーパーの内容で判断します。)

教科書

加藤雅彦『図説 ハプスブルク帝国』、河出書房新社1995年、ISBN=4309724957

参考文献

菊池良生『ハプスブルク家』(図解雑学)、ナツメ社2008年、ISBN=9784816344749
大西建夫 他『オーストリア』、早稲田大学出版部1996
東海大学平和戦略国際研究所『オーストリア 統合その夢と現実』、東海大学出版会2001
W.M.ジョンストン『ウィーン精神』、みすず書房1986
カール・ショースキー『世紀末ウィーン』、岩波書店1983
加藤雅彦『ハプスブルク帝国』(図説シリーズ)、河出書房新社1995年、ISBN=4309724957
ロビン・オーキー『ハプスブルク君主国1765-1918 マリアテレジアから第一次世界大戦まで』、NTT出版2010
クラウディオ・マグリス 鈴木隆雄他訳『オーストリア文学とハプスブルク神話』、水声社1990
鈴木隆雄編『オーストリア文学小百科』、水声社2004
アンドリュー・ウィートクロフツ『ハプスブルク家の皇帝たち』、文理閣2009
江村洋『ハプスブルク家』、講談社1990
その他、洋書、個別テーマに関する参考文献については授業時に指示します。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

オーストリアの歴史や音楽、美術、文学に高い関心を持っている学生を歓迎します。ただしドイツ語や音楽の特別な知識は必要としません。毎回のリアクションペーパーの内容を重視します。