※哲学演習
死と歴史性―
131-F-100

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
酒井 潔 教授 4 D/M 通年 3

授業概要

 ハイデッガー(Martin Heidegger, 1889-1976)の第一の根本著である『存在と時間(有と時)』(Sein und Zeit, 1927)を読む。はじめに、「現存在」(Dasein)の「現」(Da)ということ、つまり私たちが世界のなかでそのつど自己を見出しているという、そのこと(現存在の存在理解)を構成している契機としての「理解と解釈」の問題(第31、32節)について確認する。
 そのうえでこの授業の今年度のテーマとして、「現存在」がその「日常性への退落」から、「不安の気分」のなかでに「死への存在」(Sein zum Tode)である自己に出会い、分散した平均的な有り方から「時間性」(Zeitlichkeit)の全体を己の有り方とする「本来性」(Eigentlichkeit)へ至るというハイデッガーの議論について検討する(第1部第2編第1章)。
 そして、そのような現存在の時間性にはさらに現存在の実存論的根本体制としての「歴史性」(Geschichtlichkeit)という現象が基づけられるのであって(同第5章)、このハイデッガーの「歴史性」分析も是非取り上げたいと考えている。
 まず、ハイデッガーのドイツ語原文をなし得るかぎり精確に読む。そして内容について逐文逐語的解釈を遂行し、なし得る限り正確かつ具体的な理解を目指す。そのうえで、「死」および「歴史性」という私たちの実存にとって切実な問題について、「自由に思索する者」としても、共に考え深めて行きたい。

到達目標

ハイデッガーの主著『存在と時間』をドイツ語原典により精読し、解釈を試みることによって、「死」あるいは「歴史性」という概念について、自らの意見を持ち、自分の言葉で説明できるようになる。あわせて、現象学や解釈学の方法やアプローチにもしたしむ。

授業計画

1 1年間の授業計画、テクストについて。『存在と時間』におけるハイデッガーの立場と基本的諸概念について。その他。
2 Heidegger, Sein und Zeit ,Paragraph 31:"Das Da-sein als Verstehen",Paragraph32:"Verstehen und Auslegung"
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9 Erster Teil, II. Abschnitt, Erstes Kapitel "Das moegliche Ganzsein des Daseins und das Sein zum Tode"
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15 第1学期に読んだ部分の確認
16 Erster Teil,II. Abschnitt, Erstes Kapitel "Das moegliche Ganzsein des Daseins und das Sein zum Tode"
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23 Erster Teil,II. Abschnitt, Fuenftes Kapitel "Zeitlichkeit und Geschichtlichkeit".
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30 1年間のまとめ、そして展望
演習であるからには、毎回の積極的な取り組みと、十分な予復習とが要求される。

授業方法

全員による訳読。必要な語学的注意と内容的解説。そのつどの内容について、全員による討論。当番制による毎回の記録(プロトコル)の作成と発表。

準備学習

事前にテクストの該当箇所を十分に予習しておくこと(少なくとも1~2日)

成績評価の方法

平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):100%(訳読、プロトコル、質疑応答、出席状況その他)
訳読、プロトコル、質疑応答、ディスカッション、出席状況などを材料にしながら総合的に判断する。なお、平常の取り組みが不十分であると考えられる場合には、さらにレポートを課す。
※学部生が履修した場合は学部相当の基準で成績を評価し、大学院生が履修した場合には博士前期課程と博士後期課程、それぞれの基準で成績評価を行う。

教科書

Martin Heidegger, Sein und Zeit, Max Niemeyer Verlag, Tuebingen
使用テクスト(Heidegger, Sein und Zeit)については、第1回の授業のときに指示する。

参考文献

渡邊二郎『構造と解釈』(ちくま学芸文庫)、筑摩書房1994
辻村公一『ハイデッガー論攷』、創文社1971
ハイデッガー(渡邊二郎訳)『「ヒューマニズム」について』(ちくま学芸文庫)、筑摩書房1997
秋富・関口・的場編『ハイデッガー『存在と時間』の現在』、南窓社2007年、ISBN=978-4-8165-0363-4
Friedrich Wilhelm von Herrmann, Subjekt und Dasein. Interpretationen zu "Sein und Zeit", 2nd Edition, Vittorio Klostermann, Frankfurt, 1985, ISBN:3-465-01644-0
Friedrich Wilhelm von Herrmann, Hermeneutische Phaenomenologie des Daseins.I,II,III, Vittorio Klostermann, Frankfurt, 1987,2005,2008
その他の参考文献については、そのつど教室で指示する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。