民法入門1
民法総則・物権総論―

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
岡 孝 教授 2 1 第1学期 2

授業概要

民法総則・物権総論の基礎知識の確認を目的とする。

到達目標

民法総則・物権総論の基本的な構造と制度を理解してもらいたい。例えば、未成年者が商品を買う場合、親の同意はいらないのか、どういう場合に親の同意が必要か(それはなぜそうなのか)を条文から理解できるようになることを目標とする。

授業計画

1 開講の辞/民法典の仕組み/権利能力-父親が交通事故で死亡した場合、胎児は損害賠償請求はできるか。可能だとすると、どういう方法が考えられるか
2 制限行為能力/未成年-高校生がキャッチセールで高額な商品を買ってしまったらどうする/成年後見-被後見人を老人ホームに入居させるために後見人はその者の居住建物を処分したい。どうすればいいか
3 物/法律行為とは/強行規定/公序良俗-営業許可のない食肉販売と有毒あられ混入事件の結論の差異をどう理解する
4 心裡留保/虚偽表示/錯誤/詐欺・強迫-手袋をなくしたと思って購入した後、誤解を理由に返品は可能か)
5 期間/期限/代理の仕組み/表見代理-融資を受けるために所有土地を抵当に入れる代理権を授与しただけなのに、代理人がその土地を代理人として売却してしまった場合、それは有効か
6 無権代理-無権代理人が親の土地を売約する契約をした直後に親が死亡した場合、買主は契約の履行を求めることができるか
7 時効通則/消滅時効-保証人は主債務者の消滅時効を援用できるか
8 法人-労働金庫は非組合員に貸し付けた貸金返還請求ができるか
9 物権と債権の違い(地上権と賃借権の相違)/物権的請求権と費用負担-台風で隣地の樹木が倒れてきた場合、どうする
10 物権法定主義/不動産物権変動-公示の原則と公信の原則を説明せよ
11 登記を要する物権変動/時効と登記(占有もここで扱う)-強迫取消し後に第三者が登場した場合の処理はどうなる
12 177条の第三者/動産物権変動-背信的悪意者とはどういう者か
13 即時取得/明認方法-未分離のミカンの購入者と地盤の買主との優劣関係はどうなる
14 所有権:相隣関係/添付/永小作権・地役権・入会権-袋地所有者が公道にでるためにはどういう法的手段があるか
15 まとめ:民法総論(権利濫用:宇奈月温泉事件で、土地所有者が木管の撤去請求はできないとしても、なにか請求できるものはなかったのか)/21世紀の民法のあるべき姿(「民法総則」概念の見直しの可能性)
時間の制約上、上記のテーマ以外には解説などはできないので、授業で扱わないことでも疑問があれば質問してもらいたい。授業中でもいいし、メールによる質問も受けつける。

授業方法

できるだけ一問一答形式で授業を進める。原則として教科書に書かれていることや条文の意味を中心に質問するので、予習をしておけば答えられるはずである。予習してこない学生は平常点はゼロとなることを覚悟せよ。

準備学習

教科書は小型で頁数も少ないので、第1回の授業までに全体をできれば2回通読しておくこと。そして、今後繰り返し読む必要がない箇所をはっきしさせておくこと。各回の授業前には、通読してわからない箇所を(簡単でいいから他の参考書で調べ、なおわからない箇所を)特定して、授業の際に質問するように準備すること。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):80%
小テスト:10%(5回行う予定。1回10分程度の論述式の問題を考えている。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):10%(質問に答えるなどの積極的な姿勢が見られなければ、平常点の評価はできない。)
とくに小テストは、5回の平均点を出して評価する。

教科書

角紀代恵『コンパクト民法I-民法総則・物権法総論』、新世社2011年、ISBN=9784883841776
教科書は簡単すぎるので、それ以外に別の参考書等を読むことを勧める。

参考文献

川井健『民法概論1総則』(民法概論)第4版、有斐閣2008年、ISBN=9784641135154
佐久間毅『民法の基礎1総則』第3版、有斐閣2008年、ISBN=9784641135185
四宮和夫=能見善久『民法総則』(法律学講座双書)第8版、弘文堂2010年、ISBN=9784335304477
生熊長幸『物権法』、三省堂2013年、ISBN=9784385320809
佐久間毅『民法の基礎2物権』、有斐閣2006年、ISBN=4-641134510
遠藤浩=川井健『民法基本判例集』第3版補訂版、勁草書房2014年、ISBN=9784326451036
ここに掲げた参考書をつねに参照せよというわけではない。教科書でわからない箇所があれば、これらの参考書でまずは検討してみよということである。これ以外の参考書もあるので、どのテーマについてはどの参考書がわかりやすいかということを早く自分で見つけることを期待したい。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

すでに述べたように、開講前に教科書は2回通読し、①もはや読む必要がない箇所を特定すること、②一読してわからない箇所は、時間を決めて理解に努め、それでもわからないならば、印をつけて先に読み進めること、③第2回目にはそのわからない箇所を参考書等で調べてみること、このような作業を期待したい。そして、どうしてもわからないならば、しかも授業でもその点を教師が説明しなければ、是非質問してもらいたい。授業中の質問がベストである。自分の質問で授業の進行を妨げはしないかという考えは無用に願いたい。諸君は何がわからないかを知ることが教師にとっては重要なことなのである。どうしても授業中の質問に抵抗感があるならば、いつでもメールで質問してもらいたい。また、扱うべきテーマの分量が多い割に授業回数が少ない。毎回特定のテーマだけを扱うことになるので、この点は了解してもらいたい。