哲学A
哲学の初歩―
007-D-001

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
中川 明博 講師 4 通年 1

授業概要

 哲学は、私たちがともすれば当然のこととして問わずに済ましている事柄の根拠を、あらためて問い直す営みと言ってよいでしょう。たとえば、勇気ある行動は賞賛に値するでしょうが、そもそも「勇気」とは何なのでしょう。あるいは、私たちは「主観」をもっていますが、どうすれば主観が「客観的な」知識に到達できるのでしょう。他人が「痛い」と言うとき、私はこの言葉で何を理解したことになるのでしょう。この授業は、こうした問いを扱っていきます。 
 授業では、古代から現代に至る西洋哲学を大きく3つのタイプに分け、それぞれの問いの立て方と考え方をたどっていきます。第1学期は「真に存在するものは何か」を問う存在論的哲学(プラトン哲学がその典型)、「私は何を知り得るか」を問う意識論的哲学(デカルト哲学がその典型)を中心に検討していきます。第2学期は「言語によって私は何を理解していることになるのか」を探究する言語論的哲学(ウィトゲンシュタインがその典型)を中心に、現代の諸哲学の展開を追跡していきます。
 以上を通じて、哲学の問いがどのようなものであり、哲学者たちがどのように思索を進めたかについて理解を深めていきます。同時に、過去の哲学者たちの思考を共有することを通じて、ものごとを根本的に考えることをめざします。みずから考えることなにし哲学はありえませんが、そのためには基本的な用語や論理展開についての理解も不可欠です。過去の哲学を手本としながら受講者が根本的に問い、考える一助となれば幸いです。

到達目標

この授業の目標は、1)各哲学者の基本的な概念・用語等を理解すること、2)哲学的な問いの立て方と思考方法を学ぶこと、3)自分の考えを論理的に表現できること。4)以上を通じて、ものごとを自ら根源的に考える力を養うことにあります。

授業計画

1 ガイダンス(授業内容の概要、授業の進め方等についての説明)
2 存在論的哲学(1)初期の自然学者たちの存在への問い
3 存在論的哲学(2)ソフィストの登場
4 存在論的哲学(3)ソクラテスの愛知とは
5 存在論的哲学(3)ソクラテスの主知主義
6 存在論的哲学(4)プラトン哲学のねらい
7 存在論的哲学(5)プラトンのイデア
8 存在論的哲学(6)アリストテレスのプラトン批判
9 存在論的哲学(7)アリストテレスの哲学
10 意識論的哲学(1)意識論的哲学の概観:大陸合理論とイギリス経験論
11 意識論的哲学(2)デカルトの方法的懐疑
12 意識論的哲学(3)デカルトの二元論と心身問題
13 意識論的哲学(4)ロックの経験論〜その問題意識〜
14 意識論的哲学(4)ロックの経験論〜観念とは〜
15 第1学期のまとめと学期末試験についての説明
16 ガイダンス:第1学期の試験結果について。第2学期の授業内容の概要、授業の進め方等の説明。
17 意識論的哲学(5)バークリーによる経験論の展開
18 意識論的哲学(6)ヒュームによる経験論の徹底
19 意識論的哲学(7)カント哲学の問い
20 意識論的哲学(8)カントとアンチノミー
21 意識論的哲学(9)カントの超越論的哲学
22 言語論的哲学(1)ウィトゲンシュタインの問いと言語論的転回
23 言語論的哲学(2)ウィトゲンシュタインの哲学(語りえぬもの)
24 言語論的哲学(3)ウィトゲンシュタインの哲学(言語ゲーム)
25 言語論的哲学(4)言語分析哲学の展開(論理実証主義)
26 言語論的哲学(5)言語分析哲学の展開(言語行為論)
27 現代哲学の展開(1)現代の哲学〜ニーチェの哲学〜
28 現代哲学の展開(2)実存思想(ハイデガー、サルトル、メルロ=ポンティ)
29 現代哲学の展開(3)構造という概念(ソシュール、レヴィ=ストロース)
30 第2学期のまとめと学期末試験についての説明
受講者の関心に応じて先回り、遠回り、道草などをすることもあるのでご了承ください。

授業方法

講義形式の授業。ときどき問いを投げかけますが、臆せずに返答してください。

準備学習

授業前に予め教科書の該当箇所を読み、不明な点をチェックしておくこと。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):40%(基本用語を理解し、事柄について説明でき、自分の考えを論理的に述べることができる。)
第2学期(学年末試験):40%(基本用語を理解し、事柄について説明でき、自分の考えを論理的に述べることができる。)
小テスト:20%(数回提出してもらうコメントペーパーの内容によって授業の理解度、授業への取り組み等を評価します。)
第1学期試験の答案は、希望者があれば閲覧可とします。

教科書

貫成人『図説・標準 哲学史』、新書館2008年、ISBN=9784403250934

参考文献

参考文献については授業内で適宜紹介します。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

初回の授業時に、授業の進め方、試験方法などについて説明します。