哲学C
理性と非理性―身体.知覚.時間.他者.言語―
007-D-001

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
伊藤 泰雄 講師 4 通年 2

授業概要

前期授業前半は、この授業の基礎編として、 主として身体と知覚についての現代哲学を紹介する。理性の立場(デカルト)と非理性の立場(ニーチェ)とが交錯する現代の哲学を、生ける身体の立場(メルロ=ポンティ)から考察する。「大いなる理性としての身体」(ニーチェ)を、メルロ=ポンティの言う「生ける身体」として新たにとらえなおし、現代における「主体」の可能性の輪郭を描く。
 前期授業の後半から後期授業の前半にかけて、理性と非理性の交錯という視点から、時間・他者・言語をとりあげる。まず時間についての考察を通じて、非理性の経験を掘り起こす。次に理性と非理性とが他者経験においてどのような仕方で経験されるかを考察する。最後に、ソシュールの言語論を導入し、言語における差異と表情についての考察を通じて、理性と非理性とを架橋する。
 後期授業の後半は、理性と非理性との交錯というテーマの応用編として、芸術と科学における創造性の問題系をとりあげる。

到達目標

理性と非理性という哲学的テーマをめぐって、学生が、授業で提供される哲学の知恵にもとづき、自らの日常経験にそって思索を深め、その思索を哲学的な仕方で言語表現できるようになることが目標である。

授業計画

1 ガイダンス:理性と非理性(デカルトとニーチェ)
2 哲学の知恵と方法(ソクラテスとデカルト)
3 「私」と「私」の近さと隔たり(デカルトの「我思う」をめぐって)
4 身体としての自分①:「世界内存在」としての身体(身体の両義性)
5 身体としての自分②:身体の恒存性と二重感覚
6 身体としての自分③:身体の感情性と運動感覚、身体図式
7 知覚世界①:知覚の諸構造(図地構造、奥行構造、地平構造)
8 知覚世界②:事物の表情的意味と道具的意味
9 知覚世界③:空間の方向性と生活空間
10 時間と生①:時間と動くもの(アリストテレス、アウグスチヌス)
11 時間と生②:〈持続〉と〈厚み〉(ベルクソン、フッサール)
12 時間と生③:時間と空間との一体性(メルロ=ポンティ)
13 時間と生④:自分の死と〈時熟〉(ハイデッガー)
14 まとめ
15 予備日
16 他者との近さと隔たり①:「共存」と「間身体性」(メルロ=ポンティ)
17 他者との近さと隔たり②:「相剋」(サルトル)
18 他者との近さと隔たり③:「顔」(レヴィナス)
19 言語と知覚①:「言語の本質は差異である」(ソシュール)について
20 言語と知覚②:言語能記の恣意性とその帰結(不易性と間主観性、可易性、一般性)
21 言語と知覚③:言語的意味の理念性とコギトの成立
22 言語と知覚④:言葉の諸機能(指示・述定・表出と喚起)
23 言語と知覚⑤:言語的意味の創造(擬態語と直喩・隠喩との結合)
24 創造性①創造力について
25 創造性②芸術的創造(言語)
26 創造性③芸術的創造(美術と音楽)
27 創造性④科学的創造(発想法)
28 創造性⑤科学的創造(ゲシュタルトチェンジ)
29 まとめ
30 予備日

授業方法

出席する学生は、授業の終わりに授業内容に関するコメントを書いて提出する。そのコメントを次回授業の冒頭でとりあげながら授業は展開される。学生は毎回のコメントを積み重ねてゆくことにより、前期末と後期末のレポートを少しづつ準備することができる。

準備学習

事前学習として、教科書、授業中に指示された参考文献または配布プリントの該当箇所を読み、準備する。
事後学習として、自分が書いたコメントの内容について、反省を加え、次回の授業に向けて準備する。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):40%(授業内容の理解に基づく発展性)
第2学期(学年末試験):40%(授業内容の理解に基づく発展性)
出席:20%(三分の二以上の出席)

教科書

伊藤泰雄『哲学入門 第二版 身体・表現・世界』、学研メディカル秀潤社2013年、ISBN=9784780910926

その他

授業はかなり早いテンポで進行します。授業に即して、みずから教科書を読む努力が必須です。