西洋倫理学史
007-D-004

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
渡邊 裕一 講師 4 通年 5

授業概要

 現代社会において、すべての人が基本的人権を有しその不可侵が約束される…このことは、歴史のひとつの到達点として、積極的に評価することができる。しかし、現実の社会に目を向けると、様々な暴力(不正な力)によって基本的人権を侵害される事態が後を絶たない。理論や学説の到達点が、必ずしも現実の到達点ではないことを思い知らされる。
 この授業では、基本的人権の保障というひとつの歴史的到達点からさかのぼって、とりわけ西洋の近世・近代・現代における権利保全の思想史を概観してみたい。すなわち、いかなる権利がいかにして権利たる地位を獲得したのかを探求しよう、というものである。それを通じて、私たちはいくつかの重要な倫理学説を理解することになるだろう。
 なお、担当者の専門領域との兼ね合いから、特に英語圏の倫理学説を紹介する機会が多くなることを、受講者各位には了解いただきたい。

到達目標

1. 倫理学説やその歴史についての理解を深める。
2. 1.を踏まえて、社会の諸問題を倫理学的観点から把握できるようになる。
3. 1.や2.を踏まえて、倫理学上の諸問題について、自らの見解を述べることができるようになる。

授業計画

1 ガイダンス(授業の進行、成績評価・単位修得について)
2 イントロダクション(問題の所在)(1)
3 イントロダクション(問題の所在)(2)
4 権利と義務というものの考え方(1)
5 権利と義務というものの考え方(2)
6 自然法・自然権の思想(1)
7 自然法・自然権の思想(2)
8 自然法・自然権の思想(3)
9 自然法・自然権の思想(4)
10 自然法・自然権の思想(5)
11 自然法・自然権の思想(6)
12 情念を基礎とする道徳論(1)
13 情念を基礎とする道徳論(2)
14 情念を基礎とする道徳論(3)
15 情念を基礎とする道徳論(4)
16 情念を基礎とする道徳論(5)
17 情念を基礎とする道徳論(6)
18 功利主義の思想(1)
19 功利主義の思想(2)
20 功利主義の思想(3)
21 功利主義の思想(4)
22 功利主義の思想(5)
23 功利主義の思想(6)
24 現代の倫理学(1)
25 現代の倫理学(2)
26 現代の倫理学(3)
27 まとめ
28 最終講義日試験
29 予備日(1)
30 予備日(2)
あくまでも目安。
受講者や担当者の問題関心などにより、変更する可能性が大いにある。

授業方法

講義形式を基本とする。
ただし、受講者の人数によっては、講読、ディスカッション、発表等の機会も設けたい。

準備学習

 特に予習や復習を必須とはしないが、授業で紹介する著作(特に原典)のうち興味を持ったものは、ぜひ手に取って読んでみていただきたい。また、文献に書かれていることや担当者が授業で話したことを、単にそのまま記憶するのではなく、受講者自身でじっくりと考えてみていただきたい。

成績評価の方法

レポート:50%(倫理学説とその歴史を踏まえた自分の見解の展開)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):10%(授業への参加と貢献)
最終講義日試験:40%(倫理学説とその歴史の理解)
講義中や講義終了後に、受講者の感想や考えを求める機会を設ける予定(毎回ではない)。
興味深い発言や記述については、加点要素として考慮する場合がある。

教科書

教科書は指定しない。

参考文献

Maurice Cranston, What are human rights?, London: Bodley Head, 1973, ISBN:0370103793
マイケル・イグナティエフ(添谷育志、金田耕一訳)『ニーズ・オブ・ストレンジャーズ』、風行社1999年、ISBN=4938662361
その他、参考文献は講義中に随時紹介する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

 この授業では、「倫理学」という学問領域を最終的な着地点としているが、必ずしも受講生の問題関心が倫理学固有のトピックである必要はない。ある問題を把握する観点や視角として、あるいはまた、自分の主張を説得的に論じる方法として、倫理学というものを扱えるようになっていただければ幸いである。
 また、この授業は「倫理学史」を題しているが、必ずしも通史を知ることを重視するものではない。むしろ、通史を描くという試み自体が、特定のものの見方によってしかあり得ないということに、注意を払っていただければ幸いである。