現代思想
出来事から考える現代思想―
007-D-006

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
太西 雅一郎 講師 4 通年 4

授業概要

この授業では、おもに19世紀から20世紀のヨーロッパを襲った前代未聞の出来事が、現代思想にどのような試練を課したのか?また同時にどのような新たな思考の可能性のチャンスを与えたことになるのか?について、映像資料なども利用しながら考えてみます。ナショナリズムを構成する様々な暴力、ホロコーストと証言の問題、記憶・記録の限界、アイデンティティのアポリアとしてのユダヤ性、文学の可能性と不可能性、戦争や暴力の傷をめぐる和解・赦しなどについて考えます。

到達目標

社会を構成する共同性や国民性とされるものが、どのように歴史的に形成されてきたのかについて思想的に理解を深めることによって、現代の社会の在り方について主体的かつ批判的に論じる能力を身につけられる。

授業計画

1 ホロコーストの生き残りの証言映画『ショアー』の抜粋
2 映画『ショアー』のランズマン監督の対談
3 アウシュヴィッツからの帰還者プリーモ・レーヴィはなぜ自殺したのか(1)証言者の孤独
4 アウシュヴィッツからの帰還者プリーモ・レーヴィはなぜ自殺したのか(2)ユダヤ人とイスラエル
5 証言者に証言者はいない、パウル・ツェランの詩から考える
6 戦争をどう裁くのか? フランスとドイツの場合
7 赦しを巡る思想、キリスト教の場合
8 旧約聖書から他者との共存を考える
9 ギリシア悲劇(ソフォクレス)とヘルダーリンの解釈
10 エマニュエル・レヴィナスとユダヤ的倫理
11 ハイデガーとカール・シュミット、ナチズムとの関係
12 フロイトと精神分析(1)東欧のユダヤ人社会
13 フロイトの問題提起(2)理論とその深淵
14 ユダヤ性・マラーノ性をめぐる思考  
15 まとめ
16 ヨーロッパとイスラーム
17 難民、ネオリベラリズム、プレカリアート
18 移民の実態、フランスの場合
19 統治の様態をめぐる思考、ミシェル・フーコー
20 ロマン主義とナショナリズム、グリム兄弟の場合
21 国民化のポリティクス、ヨーロッパの様々なケース
22 戦争が築き上げた国アメリカ
23 アラブの文学
24 シェイクスピアから様々な可能性を探る
25 フランツ・カフカの問題提起
26 リヒャルト・ヴァーグナーとドイツ性
27 プルーストの問題提起
28 ジェイムズ・ジョイスの問題提起
29 ジャン・ジュネの問題提起
30 まとめ
適宜、映像資料を使用します。

授業方法

適宜コピーを配布し、解説を加えるとともに、映像資料など使用して授業を進めます。

準備学習

授業で扱う思想家や問題系についてあらかじめ基本的な理解を得ておくこと、および授業終了後に不明箇所に関する補助的な理解を得ておくこと、および基本的な論理を自分で説明できるようにすること(約90分)。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):60%(年間の講義内容についての理解度を確認する。)
レポート:40%(各学期につき3回、授業で扱ったテーマについて自分の考えをレポート(1本は1000字程度)として提出する。)
各学期3回の小レポートと年度末試験での全体の講義内容の理解、以上の2点にもとづいて成績評価をおこないます。

教科書

特になし

参考文献

鵜飼哲、高橋哲哉編『ショアーの衝撃』第1版、未来社1997年、ISBN=9784624011317
徐京植『プリーモ・レーヴィへの旅』第1版、朝日新聞社1999年、ISBN=9784022574100
適宜指示します。