応用倫理学
007-D-008

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
山本 圭一郎 講師 4 通年 2

授業概要

 この授業では応用倫理学と呼ばれる学問領域を広く紹介します。大雑把に言えば、応用倫理学は、現代社会においてわたしたちが直面する倫理的問題を扱う倫理学の1分野です。倫理学は道徳哲学や実践哲学とも呼ばれますが、規範倫理学(一般規範倫理学・応用倫理学)と非規範倫理学(メタ倫理学・記述倫理学)に大別できます。このように、応用倫理学は倫理学の1分野であるため、この授業では最初に倫理学の入門的な講義を行います。具体的には、まず、哲学と倫理学の関係、次に、生命倫理学や環境倫理学でも大きな問題となる事実と価値問題(メタ倫理学的問題)、最後に、功利主義、義務論、徳倫理学などの一般規範倫理学の理論(倫理理論)について概説します。なお、事実と価値問題については、生命倫理学や環境倫理学におけるトピックも視野に入れてスモールグループディスカッション(SGD)を行います。このようにして、倫理学における応用倫理学の位置付けを理解します。
 次に、応用倫理学を掘り下げて紹介します。応用倫理学は医療・環境・情報化社会・ビジネス等のさまざまな領域をカバーしますが、ここでは医学・医療(生命倫理学)およびコンピュータ・情報化社会(情報倫理学)を中心にあつかいます(なお、価値問題をあつかう時に環境倫理学も若干紹介する予定です)。生命倫理学では、ビデオ等も活用しながら医療倫理(研究倫理や臨床倫理等)に関する主な問題を紹介し、SGDも数回行う予定です。情報倫理学では倫理理論だけでなく政治哲学の理論も部分的に紹介しながら、プライバシーや知的所有権等の問題をあつかいます(なお、情報倫理学でもSGDは行います)。本授業は、これらの学習を通じて応用倫理学への理解を深めることを目的とします。

到達目標

(1)一般規範倫理学と応用倫理学の関係を理解できるようになる。
(2)生命倫理学とは何か、それが扱っている倫理的問題とは何かを説明できるようになる。
(3)情報倫理学とは何か、それが扱っている倫理的問題とは何かを説明できるようになる。
(4)環境倫理学における生命中心主義等の議論を理解できるようになる。
(5)現代社会の倫理的問題を考察するために必要な分析能力を身に付けることができる。

授業計画

1 前期イントロダクション:哲学と倫理学の関係
2 倫理学における分類:規範倫理学(一般規範倫理学・応用倫理学)と非規範倫理学(メタ倫理学・記述倫理学)
3 価値論:事実と価値問題
4 倫理学と価値論:福利主義(QOLや生命中心主義等)
5 一般規範倫理学:功利主義
6 一般規範倫理学:義務論
7 一般規範倫理学:徳倫理学
8 一般規範倫理学と応用倫理学の関係について
9 生命倫理学(1):Bioethicsの形成
10 生命倫理学(2):研究倫理
11 生命倫理学(3):医療倫理の四原則
12 生命倫理学(4):終末期医療
13 生命倫理学(5):安楽死問題その1
14 生命倫理学(6):安楽死問題その2
15 前期まとめ
16 後期イントロダクション:一般規範倫理学と応用倫理学の関係の復習
17 生命倫理学(7):臓器移植の倫理的問題
18 生命倫理学(8):生殖補助医療その1
19 生命倫理学(9):生殖補助医療その2
20 生命倫理学(10):エンハンスメントをめぐる問題
21 情報倫理学(1):コンピュータ倫理学と情報通信技術の特異性
22 情報倫理学(2):インターネットに対する法やCodeによる規制の問題
23 情報倫理学(3):プライバシーとハッカー倫理
24 情報倫理学(4):プライバシー理論とリベラリズムの伝統その1
25 情報倫理学(5):プライバシー理論とリベラリズムの伝統その2
26 情報倫理学(6):領域型プライバシー理論と自己情報コントロール理論
27 情報倫理学(7):知の所有をめぐる問題その1
28 情報倫理学(8):知の所有をめぐる問題その2
29 情報倫理学(9):知的所有権とハッカー倫理再考
30 後期まとめ
受講者の関心や理解度に応じて若干内容や進度を変更する可能性があります。

授業方法

基本的には講義形式ですが、スモールグループディスカッション(SGD)を実施する回はむしろ演習に近い形式となります。

準備学習

毎回の講義の終わりに「復習用の問題」を提示します。講義後は、該当する講義で配付した資料や自分で書き留めたノートを見ながらこの復習用の問題を解いてみてください。そうすることでより効率的な復習を行うことができます。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):40%(記述式テストによって評価)
第2学期(学年末試験):40%(記述式テストによって評価)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(クラスならびにスモールグループディスカッションに積極的に参加し発言しているかどうかによって評価します。)
学期末試験および学年末試験の問題は、毎回の講義の終わりに提示する「復習用の問題」から出題します。複数ある問題のうちいくつか選んで解答して頂きますが、その評価は主に(1)講義で扱った概念や理論を理解しているかどうか、(2)講義やスモールグループディスカッションで扱ったトピックや論点をきちんと把握しているかどうか、(3)論理的に記述できているかどうかから行います。

教科書

教科書は特に指定しません。講義資料プリントを配布します。

参考文献

アラステア・V. キャンベル『生命倫理学とは何か: 入門から最先端へ 』第1版、勁草書房2016年、ISBN=978-4326102556
水谷雅彦『情報の倫理学』(現代社会の倫理を考える〈15〉)第1版、丸善2003年、ISBN=978-4621072707
その他の参考書は授業内で紹介します。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。